渋谷・道玄坂で開催している会員制朝活コミュニティ「朝渋」。
3月28日(水)は『現場の広報担当2500人からナマで聞いた 広報のお悩み相談室』の著者である栗田朋一さんをゲストにお招きし、『著者と語る朝渋』を開催しました。

栗田朋一(くりたともかず) さん
1971年、埼玉県浦和市(現・さいたま市)生まれ。明治学院大学社会学部社会学科卒。歴史テーマパーク「日光江戸村」を運営する大新東株式会社で広報を担当し、江戸村及びグループ会社全体のコーポレートPRを手がける。2003年に株式会社電通パブリックリレーションズに入社。大阪支社と東京本社で大手企業を中心としたクライアントの広報活動をサポート。その後、07年に株式会社ぐるなびに転職し、広報グループ長を務める。08年に「訳ありグルメ」、翌年には「トマト鍋」など、次々と世の中のトレンドやブームを仕掛け、“創る広報”“攻めの広報”の実践で多くのメディア露出を獲得。14年にぐるなびを退社し、現在は、自身で立ち上げた株式会社外食広報会と株式会社PRacademyの代表取締役を務める。外食広報会は飲食店に特化したPRサポート事業を行い、PRacademyは東京、名古屋、大阪、福岡で、企業の広報担当者を教育・育成する「PRアカデミー」を展開して、数多くの広報担当者たちにPRノウハウの提供とマスコミ人脈の紹介を行っている。

広報の常識は、ベンチャー企業にとっては全くの非常識


このたび、『広報のお悩み相談室』という本を出版させていただいた栗田朋一と申します。
現在私は、主にITベンチャー企業の広報担当者を育成することを目的としたスクール「PRアカデミー」と外食企業のPRに特化した「外食広報会」の2つの会社を運営しています。

広報について書かれた本はたくさんありますが、ほとんどが大手企業向けに書かれた内容であり、中小・ベンチャー企業が実践するには適しません。
私が運営している「PRアカデミー」で中小・ベンチャー企業の広報担当者の方の話を聞くと、多くの方が「何を参考に、どのような方法を実践すればよいのか」がわからずに困惑されていました。

そのことがきっかけで、「これまで私が培ってきたノウハウを一冊の本にまとめて、少しでも多くの方に共有したい」と思い、執筆したのが『広報のお悩み相談室』です。

今回の講演では、著書の中から自分の中で特に重要だと思うポイントを説明します。

熱い思いがなければ、記者の心は動かない


私はいつも、「熱い思い」を発信することの大切さを広報担当者に伝えています。
記者の方に情報を届ける場合、プレスリリースという方法を用いることが多いと思います。
リリースに関して、これまで常識と考えられてきた書き方では、記者に読んでもらえないことがあります。

もちろん、誰もが知っている有名な大手企業がリリースを出せば記者の目に留まりますが、記者が知らない会社からリリースが送られてきた場合にはほとんど読まれません。
なぜなら、記者は少なくとも1日100通以上のリリースを受け取っているからです。
その中から記者の興味を引き、きちんと読んでもらえるものはごく僅かでしょう。
丁寧に文章を書いても、読んでもらえなければ、何の役にも立ちません。

それでは、どんなリリースであれば記者に読んでもらえるのでしょうか。
『広報のお悩み相談室』の中で、一本のリリースを掲載しています。
埼玉県のとある醤油メーカーの当主の方が書いたリリースですが、その文章は決してお手本と言えるものではありませんでした。
内容も事実だけ見れば、「醤油メーカーが醸造するための樽を新調する」という内容だけの何でもないものです。

しかし、埼玉新聞の一面に取り上げられたりするなど、このリリースにはかなりの反響がありました。
そのリリースの何が良かったのかといえば、文章中に当主の醤油づくりに対するこだわりや熱い思いが盛り込まれていたことです。

実は、このような書き方はタブーとされていました。
リリースには会社の都合や開発者の思いは不要。
第三者視点で事実だけを淡々と説明しなければいけない。
それが業界内での常識でした。

けれども、やはりこのリリースからもわかるように、「何故この会社はこの商品を作っているのか」といった背景や思いを伝えることが、一番相手の心を動かします。

これはリリースだけに限ることでなく、実際に記者と面会して話しながら言葉を伝える場合にも当てはまります。
淡々と話すだけでなく、熱い思いを包み隠さずストレートに伝えていくことが、相手に興味関心を持ってもらい、取り上げてもらうことにつながっていくのです。

商品PRからストーリーPRへ


時代の経過と共に広報の方法も変化してきています。
従来までであれば、「新しい商品を出します」「画期的な機能を追加します」といった商品PRの内容だけで、ニュースとして取り上げられていたかもしれません。
しかし、現在では、たとえそれが画期的な商品であったとしても、取り上げてもらうのが難しい状況になっています。

大手自動車メーカーの例を挙げると、最近では広報担当者はPR時に自社の商品の説明のみの売り込みをしないそうです。
まずは自動車業界全体の話、その次は今の若い世代の意識の話、そして他社の話などを経た上で、最後に自社の商品の説明をするそうです。
大手自動車メーカーでさえも、そのブランドだけではニュースとして取り上げられないということを実感しているからです。
そんな時代に誰も知らない中小・ベンチャー企業が商品の凄さだけを説明したリリースを出しても取り上げてはもらえません。

そうした状況では、相手の興味関心を引くストーリーを交えて紹介することが重要です。
「記者の関心を引くストーリーの作り方」を紹介します。

①いま(それぞれの業界の)、現場でこんなことがおきています!
②その背景には(この時期ならではの)、こんな理由があります!
③だから我々はその課題を解決すべく、このサービス(取り組み)を始めたのです!
④同業他社とはここが違います(そもそも業界初です)!
⑤異業種では同じような切り口でこんなことをやっている会社もあります!
⑥これによって、利用者の価値観、消費行動がこう変わります!

広報担当者がこの6つの要素をストーリーとして一貫性を持って語ることができれば、記者に興味関心を持ってもらえる可能性は高くなります。

“自分で攻めない”攻める広報


現在の大手企業の広報は、「知名度をさらに上げていくか」というよりも、いかに報道を抑えて「会社のブランドを守るか」といったことにフォーカスする、いわゆる「守りの広報」の姿勢が主流です。

しかし、中小・ベンチャー企業は知名度を上げなければ、何も始まらないため、「攻めの広報」の姿勢が大事です。
「攻めの広報」に関して、3年前に出版した『新しい広報の教科書』では、「攻める広報」に加えて「創る広報」が大事と説明していたのですが、最近ではそれにも変化が見えます。

現在、私が大事だと思っているのが「”自分で攻めない”攻める広報」です。
これはつまり、「自社をよく知る他社の広報担当者に自社をPRしてもらう」という意味です。
広報がPRで自社のことをよく言うのは当たり前であるため、記者はあまり内容を参考にしていません。
記者は自社のPRではなく、雑談などで出た他社の話などを参考にしています。
なぜなら利害関係のない第三者との話で出た情報こそが、今後のトレンドや価値を表しているからです。

そのため、中小・ベンチャー企業の広報担当者にとって最大の武器となるのは、「他社広報との横のつながり」です。
他社の広報担当者が、自社の会社のことを利害関係のない第三者視点でPRしてくれることで、自分の知らないところで取材に繋がっていく。
実際に最近のベンチャー界隈の事例として、自分の知らない記者から「〇〇さんから聞いたのですが、御社でこんなこと取り組まれていますよね」といった問い合わせが来ることが増えています。
自分で言うよりも他人に言ってもらう方が信頼性があるという新しい形の「”自分で攻めない”攻める広報」。
これもまた一つの新しいPRの手法なのではないかという気がしています。

炎上よりも怖いリスク、それは誰にも知られていないこと


昨今では、企業のPR動画の炎上などが問題となっており、広報担当者は炎上を回避することに細心の注意を払っています。
しかし、中小・ベンチャー企業には、炎上よりも怖いリスクがあります。
それは誰にも知られていないことです。

どんなに素晴らしいことを行っていたとしても、世の中の誰も知らなければ、何もしていないのと同じになってしまいます。
そのため、中小・ベンチャー企業は「誰にも知られていないことが一番のリスク」という意識を持って、「攻めの広報」を行っていかなければなりません。

「広報のミスは会社を潰す可能性があるから、絶対に失敗できない」と思っている人がいます。
しかし、ベンチャー企業は失敗を恐れていては何もできません。

また、「広報に正解はない」と考えている人も多いです。
たしかに万人に共通する正解は広報の世界にはありません。
しかし、自分だけの正解は、自分自身の失敗体験の中にあるのです。
失敗の中にある隠れた正解を見つけるためにも、もっと積極的に失敗していきましょう。

横のつながりが武器になる


中小・ベンチャー企業で自分一人だけで広報を担当していて、不安に感じる方も多いと思います。
しかし、安心してください。決して皆さんは一人ではありません。
一度外に目を向けたら、同じことで悩んでいる同じような立場の方がたくさんいます。
「横とのつながりが武器になる」とお伝えしましたが、外に出て行き、いろんな方と交流して自分の仲間を作っていくことによって、一人ではないということを実感していただければと思います。

また、私がこれまで1000人以上の広報担当者の方々と会ってきた中で見えてきた、広報として活躍する方の共通点は「自分に自信がない」ということです。
自信がないからこその謙虚さ、真面目さ、調整力を持つ人が、記者から重宝されます。
口下手でも、コミュニケーションに長けていなくても大丈夫です。
調整力を活かして、広報の仕事をこれからも頑張っていただければと思います。

栗田朋一さん、ありがとうございました!

会場提供: BOOK LAB TOKYO
Text by 児玉悠太朗(@kodama_yutaro
Photo by 矢野拓実(https://takumiyano.com

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★参考記事:
「スタートアップのCEOこそ、朝5時に起きるべき。」渋谷発の朝活コミュニティ「朝渋」プロデューサー、井上皓史さん (HARES.jp)

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