おはようございます。朝渋の井手 (@kei4ide ) です。

いきなりですが、『理想のリーダー』というと、どういう人を皆さんはイメージしますか?

「グループの先頭を走り、メンバーに安心を与えながら、チームを引っ張ってくれる存在」

こんなイメージを持たれる方が多いのではないでしょうか? 少なくても僕はそうで、こういうリーダー像に憧れながら、学校や会社で、チームリーダーだったり、マネージャーといったポジションに挑戦してきました。

そして、30代の半ばを迎えつつある今、自分は頭脳明晰でも、決断力に長けているわけでもなく、チームをグイグイと引っ張るリーダーにはなれないなぁ…と悟ってしまったんです。周囲からは年齢が上がるにつれ、リーダーとして活躍してほしいと期待される。でも自分の中では、優秀なリーダーを目指すのはしんどい…。

そんな悶々とした想いを抱いているときに出会ったのが、著書『宇宙兄弟 「完璧なリーダー」は、もういらない。』です。

『リーダーたるもの、優秀でなければならない』という呪縛が、未だにどれほど多くの人達を苦しめていることか!こうした固定観念に囚われて自信がない人ほど、『私はリーダーに向いていないのでは?』と悩んだり、リーダーであることに精神的負担を感じたりしてしまうのです。また、『正解』にこだわり、柔軟な思考や大胆な発想ができなくなる人もいます。」(本文から抜粋)

まさに、自分のことだと思いました。そして、本の中で説かれている「愚者風リーダーシップ」という考え方を知り、完璧なリーダーでなくても、漫画『宇宙兄弟』の主人公・六太のように仲間たちと一緒にワクワクするようなプロジェクトを実行するためのリーダーシップを発揮できることを学んだんですね。

この「愚者風リーダーシップ」という考え方を多くの方に届けたいと思い、朝渋では著者の長尾 彰さんをゲストに招き、『著者と語る朝渋読書会』を開催しました。モデレーターはワタクシ、井手です。今回は、そのダイジェストをお届けします!

長尾 彰さんのご紹介

(photo by 小澤彩聖)

長尾 彰さん

組織開発ファシリテーター。企業、団体、教育現場など、15年以上にわたって2000回を超えるチームビルディングをファシリテーションする。文部科学省の熟議政策に、初の民間ファシリテーターとして登用され、復興庁政策調査官としても活動中。 一般社団法人プロジェクト結コンソーシアム理事長、NPO法人エデュケーショナル・フューチャーセンター代表理事、一般社団法人アカデミーキャンプ理事、一般社団法人ARTRATES、一般社団法人バックアップセンタージャパン理事、一般社団法人日本レースラフティング協会常務理事、NPO法人明日のたね理事を兼任。レースラフティング女子日本代表コーチ。

その人が持っている可能性を開くお手伝いをするのが僕の仕事

井手:今日は朝早くから、ありがとうございます!

まずは長尾さんについて少し伺いたいのですが、長尾さんの肩書である「組織開発ファシリテーター」って何なんですか?

長尾さん:簡単に言うと、すごく大きくて大変な目標をもっている人と、それを成し遂げるためには、どういう組織で何をしたら良いかを一緒に考えたりする仕事です。

井手:組織開発コンサルタントではなく、ファシリテーターというのは何か違いがあるんでしょうか?

長尾さん:諸説あると思いますが、コンサルタントは、結果に責任を持つ人だと思っています。正解を持っていて、こういう風にやればいいですよと教えてあげるのがコンサルタント。

それに対して、ファシリテーターは、正解はわからないけど、みんなで目標を達成するための方法を考えるお手伝いをします。そして、その際に「こういう考え方がありますが、試しにやってみませんか?」と幾つかの考え方を提示したりします。なので、ファシリテーターはプロセスに責任を持つ人かなぁと思っています。

具体例で紹介すると、社会人のチアダンスのチームからお仕事の相談がきました。世界一になりたいという目標をもっているんですね。この4月にチームができたばかりで、15名前後のチームなんですが、7月に日本の大会の予選があって、まずはそこで日本一になりたいんだそうです。

井手:できたばかりで世界一を目指すってスゴいですね。どんな方がメンバーにいるんですか?

長尾さん:メンバーのうち4~5人は、学生時代に全米選手権で優勝した経験を持つメンバーです。ただチームには、チアダンスを始めて1年というメンバーもいます。

井手:15名くらいのチームの中にですか!? 経験値の差がすごい…。

長尾さん:そうなんです。サッカー日本代表の中に、僕が入るようなもんです(笑)。練習をみても、全米選手権で優勝したメンバーと、始めて間もないメンバーだと、当たり前かもしれませんが、体つきに差があって、足のあがり方とか全然違いますね。

井手:すさまじく凸凹なチームですね。でも、そのチームで世界一を目指しているんですよね?

長尾さん:そうなんです。専門的な知見から見ると、「この人は下手だからリスクとして排除したほうが良い」と言って、凸凹の凹を排除してしまうのが、もしかするとコンサルタントかもしれません。

それに対して、そんな人も、まずはチームに入って、納得するまでやってもらって、「競技者としては難しいかもしれないけど、もしかしたらチームのマネージャーとしては貢献できるかもしれない」といったようにチームの中での自分の立ち位置を自分自身で見つけられるように支援するのがファシリテーターなのかなと思っています。その人が持っている可能性を開くお手伝いをしているのが僕の仕事です。

正しさや優秀さより、愉しさや快いことを大切にする

井手:では、早速ですが、「愚者風リーダーシップ」について、話をさせてください。

今回の書籍の中に、「リーダーたるもの優秀でなければいけない」というイメージの呪縛が多くの人を苦しめているという記述があります。この苦しめているというのは、どういうことなのでしょうか?

長尾さん:僕自身の話でいうと、ちゃんとしないといけないと思っていたんです。あらゆる面で。人前にも立つし、家族もいて、娘も2人いて、年齢的にも43歳ですよ (笑)

そこで、カーネギーの『人を動かす』を読んだり、『7つの習慣』を読んだりして、優秀なリーダーにならなければと思い、頑張ってきたんだけど、どんどん苦しくなってきたんです。疲れてきたんです。

そこで、自分のこれまでの仕事を振り返ってみると、上手くいった時のパターンって、いつも自分がリラックスしていた時なんですよね。逆に、上手くいかなかった時には、「上手くやってやろう!」とチカラが入っていた時だったんです。

そこから、もしかすると、「正しさ」とか「優秀さ」よりか、「愉しい」とか「快い」とか、そういうことのほうがリーダーにとっては必要なのではないかと思い、『賢者風リーダーシップ』と『愚者風リーダーシップ』という言葉をつくって、考えを整理しているところです。

井手:賢者風と愚者風の違いをまとめていただいているのが、こちらの図ですよね。

長尾さん:まず、前提として共有しておきたいのは、賢者がダメで、愚者が良いとか、良し悪しではないということ。特徴が描いてあるだけだと思ってください。

また、賢者風とか、愚者風とか、”~風”と書いてあるのもポイントです。愚者型・愚者的・愚者風だと全然違うと思っていて、”愚者型”だと誰がが作ったやり方や手順にあわせて動く感じですよね。”愚者的”だと愚者っぽいということで、それそのものではないんですよ。“愚者風”だと、相手にあわせて愚者のように振舞うこともできるし、場合によっては賢者のように振舞うこともできるかもしれない。この「型・的・風」を比べてみたときに、状況に応じて変えることのできる”~風”というのが、一番しっくりきたんです。

井手:なるほど、確かに全然違いますね。

長尾さん:一番上に書いてあるものは、その人に近づいた時に、どう感じるのかというヤツが書いてあります。賢者風賢者のリーダーの場合は「すごい」。オーラがすごくて近づけない(笑)。賢者風愚者のリーダーは、努力がすごくて「えらいなぁ、この人」と思ってしまいます。一方、愚者風賢者のリーダーは、一緒にいると「楽しい」と思える人です。

振り返ると、僕は今まで賢者風愚者でやっていたと思うんです。リーダーだから、自分がリードしなきゃいけないと思って、勝ち負けを重視して、自分が中心になってコトを進めていたんですね。

そして、自分が正しく、相手が間違っていて、いつも相手を論破してやろうと思っていました。そのために、色んなデータを集めていたんですね。3年間くらい、人事制度をつくるコンサルタントをやっていた時期があるんですが、まさにこれで、あらゆる会社のデータを集めてきて、「ここにエビデンスがあります!これがこうだから、こうなるんです!」と一生懸命でした。

井手:僕が、この表を見たときに印象的だったのが、ヒトとの接し方の行で、賢者風賢者は「人は変わると思っている」。賢者風愚者は「人は変えられると思っている」。愚者風賢者は「人は変えられないと思っている」という点なんですよね。

僕も会社などで、上司と面談をすると、明らかに自分を変えようと接してきているのがわかるんですね。「お前は、こういうところがイケてないから、こういう風にすべきだ!」とか、すごく圧力を感じるんです。

でも、愚者風賢者は「人は変えられない」「自分も正しいければ、相手も正しい」という前提に立っているので、全然コミュニケーションの仕方が変わると思うんですね。

長尾さん:僕も、ずっと人は変えられると思っていたんですけど、子育てをして、無理だなと思いました。どんなに強く伝えても、変わらないものは、変わらないんです。

でも、変わってほしいと伝えることはできると思ったんです。お父さんは、こうしてほしいと。そうすると、少し豊かな関わり方ができて、相手も一緒にいることに安心するんです。

「お前、こうしないと絶対ダメだよ。こんなんで社会でやっていけると思ってる?」みたいに、完璧を目指して、相手を無理くり変えようとすると、一緒にいることが不安になってしまうんですね。

井手:そうですね。今の話を聞いて、すごく思ったのが、「こうすべきだ」というShouldの話ばかりしていると、自分も相手も苦しくなってしまうのかもしれないですね。一方的に説かれている感覚です。

それに比べて、「自分はこうしてほしい」というのはWantの話で、こちらだと自分と相手のWantをぶつけてみて、「どうしよっか?」という話ができるので、まさに対話ですね。後者の方が、一緒にいて安心できるリーダーって感じがします。

会社を「潰してやろう」と思っている人なんていない

井手:ここからは、会場の方から、長尾さんへの質問を募りたいと思います。

質問者の方:仕事でチームをマネジメントしているのですが、事業数字の責任を持つものとして、上から数値を詰められると、そのままメンバーに「こうしなきゃいけない!」と伝えてしまっているシーンが多々あるなぁと思っています。売上目標のようなものと向き合った時に、長尾さんだったら、どのように立ち振舞われているんですか?

長尾さん:上からドーンと降りてくる目標ですよね。僕がいつも話をしているのは、なぜその目標なのか?、なぜその戦略なのか?の『なぜ』を教えてくださいということです。

それを教えてくれたら、メンバーの皆さんにきちんと伝えますし、逆にメンバーが目標や戦略に対して不安に思っていることなどを聞き出して、ミッドフィルダーとして繋ぎ役をしっかり果たしますよと。

でも、この『なぜ』がないことの方が圧倒的に多いんです。「理由なんかない。とにかく昨対を超えるんだ~!」。「なぜなら、みんなで生き残るためだ~!」。そんなことがほとんどなんです。みんな、『なぜ』がなくて困っています。『なぜ』っていうのは、動機なので、『なぜ』がないというのは動機がない状態なんですよね。

なので、この『なぜ』について、管理職の人と現場の人が語り合える関係性をつくるのが、僕の仕事かなぁと思っています。

井手:この悩みは、すごく共感できることが多いですね。ほとんどの会社が、昨対比何十パーセントとかで、目標を立ててしまっているような気がしますね。「会社って、そういうものだから」とか言われて。

長尾さん:そうなんですよね。去年と状況は全く違うのにね。過去を基準に目標をつくろうとすると、どうしても歪みが生じてしまうと思います。

逆に未来に対して、こうなりたいという目標に『なぜ』があれば、その目標が、例え、世界一になるというものであったとしても、みんながコミットすることができるんです。ストレスではなくなるはずなんですね。

井手:確かにそうですね。ありがとうございます。他に、ご質問ある方、いらっしゃいますか?

質問者の方:チームビルディングについて質問なんですが、チームをつくっていく時に、クラッシャー的な人がいて、なかなかその人が変わってくれないだとか、その人の発言で空気が悪くなるということが起こるときに、どういう対処法が良いと思いますか?

長尾さん:これはよくある質問の1つかなと思います。まず、その人をクラッシャーという名称で呼ぶのか、舵取り屋と呼ぶか、暴走エンジンと呼ぶのかは、その人と自分との関係性によって決まると思うんです。壊す人なのか、進めてくれる人なのか。

で、壊す人だという認識があるのだとしたら、「壊さないでほしい」と伝えるのが大切だと思います。「なんか、壊された感じになるんだよね」とか。「でも、一緒に良いものを作りたいから、こうしてもらえない?」って伝えることができれば、もしかしたら変わるかもしれない。

もちろん、それでも相手は変わらないかもしれません。でも、会社や組織を「潰してやろう」と思って、そこにいる人なんていないと思うんですよね。

目標を達成したい。誰かの役に立ちたいと思って、来ているはずです。ただ、お互いに見えているモノが違うだけなんです。なので、「僕には今、これがこう見えているよ」っていう事を伝えて、お互いに見えているモノをすり合せすることを続けることが大事かなぁと思っています。対話を続けていただくことをオススメします。

魔法のことば「それは、ちょうどいい」

井手:では、最後に長尾さんから、メッセージをお願いします。

長尾さん:本の中にも書いたんですが、なんか嫌なことがあったり、しんどいことがあった時、僕は「それは、ちょうどいい」という言葉を使うのが好きなんです。

財布を落とした。それはちょうどいい。新しい財布を買い直すチャンスだ。

クラッシャーが現れた。それはちょどいい。一度全部破壊してもらって、新しく作り直すチャンスだ。

会社に遅刻した。それはちょうどいい。次からは遅刻せずに会社にいく方法を考えられる貴重な機会を得られた。

椎間板ヘルニアになった。僕のことです(笑)。それはちょうどいい。杖をついてゆっくり歩いて、周りを見られる貴重なチャンスだ。

そうやってモノを見られるようになると、ちょっとリラックスができるようになると思うんです。

完璧なリーダーはもういらないんだけど、その代わりにどういうリーダーを僕が必要としているかというと、愉快なリーダーが欲しいんです。楽しくて、心地よいの愉快です。そして、愉快な人って、いつもリラックスしていますよね

なので、緊張しそうな時にも「それはちょうどいい」と唱えることができるとリラックスできると思うので、「それはちょうどいい」という言葉を、最後のメッセージにしたいと思います。今日はありがとうございました。

Text by 井手桂司(@kei4ide
Photo by 小澤彩聖(@ayato_ozawa

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★参考記事:
「スタートアップのCEOこそ、朝5時に起きるべき。」渋谷発の朝活コミュニティ「朝渋」プロデューサー、井上皓史さん (HARES.jp)

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