毎週金曜日の朝、渋谷で開催している朝活型読書コミュニティ「朝渋」。

4月14日は、累計100万部を超えるベストセラーとなった『99%の人がしていない たった1%の仕事のコツ』『99%の人がしていない たった1%のリーダーのコツ』の著者であり、大手外資系企業に勤める河野英太郎さんをゲストにお招きして、イベントセミナー型の朝読書会を開催しました。

なぜ今、「学問のすすめ」の教えを学ぶべきなのかについてたっぷりと語っていただきました。

河野英太郎(こうの・えいたろう)さん
1973年岐阜県生まれ。日本アイ・ビー・エム株式会社。東京大学文学部卒業。同大学水泳部主将。グロービス経営大学院修了(MBA)。 大手広告会社、外資系コンサルティングファーム等を経験。2002年以降日本アイ・ビー・エム株式会社にて、コンサルティングサービス、人事部門、専務補 佐、若手育成部門リーダー、サービス営業などを歴任し、現在コグニティブ技術を活用した人材系ソリューションKenexa(ケネクサ)の日本展開担当。著書に累計110万部を突破した、『99%の人がしていない たった1%の仕事のコツ』『99%の人がしていない たった1%のリーダーのコツ』(以上ディスカヴァー)、監修書に『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(翔泳社)がある。

「学問のすすめ」はもっと多くの現代人に読まれるべき


ーご出版おめでとうございます。今回「学問のすすめ」を現代語訳で出すことを決めたきっかけは何でしたか?

最近の日本において、社会の当事者として行動する人の少なさに問題意識を感じ、考え方を根本から変えていなくてはならないと思ったのがきっかけです。
そんな中で出会ったのが福澤諭吉の「学問のすすめ」でした。

もともとは、ウェブ進化論で有名な梅田望夫先生が勧めていたことがきっかけで「学問のすすめ」を手に取ったのですが、読んでみるとまさに今のビジネスパーソンに必要な内容だったのです。

この内容を世の中のもっと多くの人に知ってもらいたいと思ったのですが、堅い文章で現代人が読むには難しいため、わかりやすい表現やシチュエーションにこだわって訳しました。

「学問のすすめ」は日本で一番売れたビジネス書

明治初期の日本の人口が三千万人くらいの中で「学問のすすめ」は三百万部売れたとされているので、単純計算で十人に一人が手にしました。
今の日本の人口に置き換えたら、千二百万部くらい売れている大ベストセラーになるわけです。

それだけの人が手に取ったということは、身分の高かった士族だけでなく、町民階級の人々も読んでいるはずです。
ということは「学問のすすめ」に書かれている内容が当時の市民の日常生活においても必要なことだと世間が判断していたことになります。

当時の市民でも読める平易な文章で原書が書かれていたことを現代語訳でも再現したかったので、本の中で似顔絵を用いるなどして、中学生でも読めるレベルのわかりやすさになることを意識しました。

人間の差とは、学問をしたかどうかによるものである


百四十年前に書かれたとは思えない、現代でも必要なことが「学問のすすめ」には書かれています。
特に福澤諭吉が言いたかったことは次の三点です。

「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」

人は生まれながらにして差があるわけではない。
その人が学問を学んだかどうかで、身分や結果に違いが出るだけである。
だからこそ、学び続けなくてはならない。
学問の中でも特に生活に役立つ「実学」にこだわって学ぶべきなのだ。

「当事者意識を持つ」

集団として強くなるためには、互いに依存しないことが重要である。
政府がおかしい場合には、それを選んだ国民自体にも責任がある。
他責にするのではなく、自分ごと化して考えましょう。

「衣食住で満足しない」

生活のことだけで満足していたら、蟻と同じレベルである。
人間として生まれたからには、文明を発展させるための努力をしなければならない。

最初はアドバイスから

ー会社勤めをしながら本を出版する機会ってなかなかないと思うのですが、最初に本を出版されたきっかけは何だったのですか。

二千名くらいのメンバーを抱えるプロジェクトを担当していた時に、プロジェクトメンバーに対して仕事のコツをアドバイスしていたのがきっかけです。

毎週のようにtips(仕事のコツ)にまとめて教えていたら成果が出て大変好評になり、そこからメルマガでも配信するようになって、気づけば1万アクセスくらいいくようになりました。

これをもっと多くの人に向けて伝えることができれば、より社会的な意義があると思ったので、出版社に企画を持ち込んだのです。

本を出版したことで、自分の世界がかなり広がりました。

学んだことはきちんと発信する

サラリーマンとして会社で働いている仕事以外に、複業として本を出版したり、グロービスの講師を勤めたりすることができるようになってからメリットが二つありました。

まず一つが、自分が正しいと思うことだけを行えるようになったことです。
働いていて、おかしいと思うことに従わなければいけないシーンがほとんどなくなりました。

なぜなら、たとえ明日会社をクビになっても生きていくことができて会社に依存しなくなることで、ポジションを気にせずにフラットな目線で意見が言えるからです。
また、結果としてそういった態度で仕事に臨んだ方が、会社にとってもプラスになると思います。

二つ目が、今日のイベントのような新たな繋がりを持つことができることです。
今回のこういったご縁があったのも外に発信してアクションを起こしてきたからです。

もちろん批判されたりして、辛いリアクションをされることもありますが、何か新しいことを始めて一歩踏み出してみると、後悔することはないです。

福澤諭吉も「学んだことはきちんと演説(発信)をしてアウトプットすることで、行動に落とし込むべきだ」ということを説いています。

独立することで自分の価値観に従って生きることができるようになり、結果として成果を残せるようになる。それを支えているのが学びであるからこそ、学び続けることが大切なんだということを身を持って感じました。

ファイティングポーズだけは崩さない


ー河野さんは日々どのように学ばれていらっしゃるのですか。

自分の強みをあげるとしたら、自分自身を普通の人間だと捉えていることだと思っています。
必ずこうでなくてはいけないという考えを持っていないので、自分がやりたくないことはやりませんし、そういう自分に対して否定もしません。

「今日絶対何ページ本を読まなきゃ」のように変にプレッシャーを与えなくて済むので、なんでも気負いせずにできる気がします。

しかし、自分の中で「こうなりたい」という理想だけは変えず、ファイティングポーズだけは崩さないという姿勢をとり続けることを大切にしています。
自分の理想以外に関しては追い詰めすぎない。そうすることで、無理なく肩肘張らずに物事を新鮮に見られるようになる。

こうあるべきだという考えにとらわれず、シンプルに自分のありたい姿を忠実に求め続けています。

学問のすすめを読んで、何を実行するか

ー最後に私たち読者に向けてメッセージをいただけますか。

「学問のすすめ」は実用を唱えている本ですので、読後に何かしら実行してもらうことを福澤諭吉も望んでいると思います。

本の良いところは、時代を超えてもメッセージを受け取れるところです。

残念ながらメッセージを返すことはできませんが、百四十年後のメッセージの受け手として、皆さん自身にも「何を実行するか」ということに関して考えていただき、議論していただければと思います。

河野英太郎さん、ありがとうございました。

会場提供: BOOK LAB TOKYO