おはようございます!
渋谷を拠点とした朝活コミュニティ「朝渋」のメディア担当をしている井手 (@kei4ide ) です。

みなさんは、先週読んだWebニュースや、雑誌の記事。または、先週観たYoutubeなどのWeb動画や、TV番組の内容について、キチンと覚えているものって、どれくらいありますか?

正直、僕は、ほとんど覚えていません。SNSやメディアを通じて、次から次へと届く情報やコンテンツの流れの中で、大半は瞬間的に消費され、消えていきます。

そんな情報が飽和している時代において、企業は、どうすれば、生活者に関心を持ってもらい、支持され、長く愛されることができるのか?

「その答えは、 “ファンベース” にある」と、今回のゲストである佐藤尚之さん (以下、さとなおさん) は言います。

朝渋では、2月8日に、これまで、「明日の広告」、「明日のコミュニケーション」、「明日のプランニング」を出版し、この度、新刊『ファンベース』を出版された、さとなおさんをお招きし、『著者と語る朝渋読書会』を開催しました。今回は、そのレポートをお届けします。

佐藤尚之(さとなお)さんのご紹介

(photo by 矢野拓実)

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。

「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。本名での著書に「明日の広告」「明日のコミュニケーション」(ともにアスキー新書)。「明日のプランニング」(講談社現代新書)“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(光文社文庫)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。大阪芸術大学客員教授。花火師。

“ファンベース” とは何か?

「ファンベースとは、ファンを大切にし、ファンをベースにして、中長期的に売上や価値を上げていく考え方です。」

冒頭で、こう説明した、さとなおさん。しかし、「ファンを大切にするのは当たり前だ!」と思われる方も多いのではないでしょうか?

ただ、そうは言いつつも、実際の企業の現場においては、以下のような考えから、新規顧客の獲得にばかり注力される方が多いと、さとなおさんは言います。

  • ファンって、黙っていても買ってくれる人たちだよね。それよりも『今買ってくれていない人』に売らないと、売上が増えないんじゃないの?
  • ファンって言われても、パイが小さいでしょう。そんな小数を大切にしたって対前年比に影響は出ないのでは?
  • そもそも、ファンってお客様センターとかの仕事じゃないの?マーケティングの仕事は新規顧客を増やすことでしょう?

とはいえ、従来通りの新規顧客狙いの施策で、果たして効果がでるのかというと、なかなか難しい時代になってきています。

「売上が伸びない、売上が安定しない、最近売上が落ちてきた…。そんな悩みを持っている方に対して、ファンベースという考え方を知ってもらいたく、この本を書いた。」

そう、さとなおさんは、『ファンベース』を出版した背景について話しました。

また、「ファンを大切にする」というと、「そのブランドや商品の “現在の価値” を支持してくれる方々と一緒に、その価値をキープすること」だと間違えられることがあるそうです。

確かにファンの方々は、”現在の価値” が好きでファンになっていると思いますし、変わらないでほしいと願う部分があることも、もちろん理解できます。

でも、ファンベースで考える大切にすべきファンとは、現在の価値の延長線上にある “もっと良い未来の価値” にも強く期待をしているし、それを企業と一緒に夢みたいと思っている方だと、さとなおさんは言います。

「例えば、ミスチルの本当のファンであれば、今のミスチルが好きなので、このままで留まってほしいなんて思わないですよね。これからも、ミスチルには新しい世界を見せてほしいと期待し、応援している人が、僕は本当のファンだと思います。」

そういうファンの方々とともに変化し、成長し、未来の価値を創出していくことが、ファンベースの考え方になります。

そういう意味で、ファンからお金を稼ごうとするファンビジネスやファンマーケティングと、ファンベースは全く違うわけです。

ファンベースが必要な4つの理由

では、なぜ今、ファンベースが重要なのか?その理由は、この4つだと、さとなおさん。

■【1】ファンは売上の大半を支え、伸ばしてくれるから

「全顧客の上位20%が売上の80%を生み出している」という “パレートの法則” がありますが、少数のファンが売上の大半を支えていることは、様々な事例で確認されています。まさに、ファンは売り上げを支える大黒柱なわけです。

ファンを大切にすることで、売上の安定が図れることはもちろん、ファンの購入量や購入回数が高まることに成功すれば、事業の売上を大きく高めることが期待できます。

■【2】時代的・社会的にファンの重要度が増していくから

現在は、この4つの大きな社会的変化が訪れている時代です。

  • 人口急減
  • ウルトラ高齢社会の到来
  • 超成熟市場 ※USPの陳腐化
  • 情報過多

1年間で約100万人が減っていくペースで、日本の人口急減は進んでいます。さらに、2024年には3人に1人は65歳以上の高齢者になると言われるようにウルトラ高齢社会が訪れます。たいていの高齢者は保守的であり、新しい技術や革新的な商品には懐疑的になり、新規の商品に手を伸ばすことが減っていくと、さとなおさんは自身の経験も踏まえて言います。つまり、国内の人口が減り、高齢者率が高まる社会は、新規顧客が減る社会なのです。

さらに、モノが溢れる超成熟市場が、新規顧客の獲得をより難しくしています。「選択肢が多すぎると、選ぶことに悩み、人は買うのをやめてしまう」という有名な “ジャムの実験” がありますが、豊富すぎる選択肢は、人々の新しい商品を買うことへの意欲を失わせてしまいます。

また、この超成熟市場において、企業は他の商品との違いを出すためにUSP(=Unique Selling Proposition、差別化ポイント)をつくろうとしますが、そのUSPが優れているとみなされると、すぐに他社もマネをし、追随し、あっという間に陳腐化してしまいます。商品のUSPを磨いて新規顧客を獲得し続けるという戦略は、現代において茨の道と言わざるを得ません。

そして、今、世界は、いまだかつて人類が誰も経験したことがないほどの情報に囲まれています。なんと、Youtubeでは世界中から1分間に300時間分の動画がアップされているそうです。世の中に溢れている情報量は、2011年の段階で「世界中の砂浜の砂の数(1ゼタバイト)より多い」状況になり、さとなおさんは、この情報環境を「情報 “砂の一粒” 時代」と呼んでいます。

モバイルコンテンツやテレビコンテンツ、新聞・雑誌・小説・映画、音楽にゲーム…、といった魅力的なコンテンツが次々と届く現代において、新規顧客に情報を届けることが極めて難しく、また、届けられたとしても、関心をキープし続けることは、ほぼ絶望的な状況です。

そんな圧倒的にアゲインストな状況において、企業が届けたい情報を確実に受け取ってくれる人たちがいるとしたら、それは「その商品に、すでに興味関心がある人」、つまりファンです。このため、ファンベースという考え方が、より重要になってくるわけです。

■【3】ファンが新たなファンを作ってくれるから

世の中に情報やエンタメが溢れかえっている今、生活者が新しい商品やサービスに出会うキッカケとなるのは、自分と価値観の近い友人からのクチコミだと、さとなおさんは言います。「類は友を呼ぶ」といいますが、”類友” の体験や意見は、自分にとって役に立つ確率が高いと、僕たちは見なすからです。

つまり、新規顧客の獲得が難しくなった時代において、新規顧客を獲得していくためには、ファンを大切にし、ファンが周りの類友に言いたくなるようなキッカケを作ったり、言いたくなるような状況や環境を作ることが大切になります。

■【4】効きにくくなったキャンペーンの効果をアップさせてくれるから

購買意欲を刺激したり、認知を高めるための単発施策は、今でも重要だし必要です。ただ、情報過多の現代においては、どんなに話題になった施策でも、一瞬で記憶の彼方へ消え去ってしまいます。そして、生活者の関心がなくなった頃に、また単発施策を始めるといった “ブツ切り状態” のアプローチをしている企業が多く、非常にもったいないと、さとなおさんは言います。

「デートに一生懸命誘われて、デートに行って、ちょっと良いなと思ったのに、いきなり連絡が途切れてしまう。記憶から消えた頃に、また、しれっと誘ってくる。それが毎回毎回続く。相手からしてみれば、『この人、一体なんなの…』と思われてしまいますよね?」

これでは、せっかくの予算や努力がもったいない。であれば、そのキャンペーンや単発施策で興味や好意をもってくれた方々を大切にし、ファンに育て、興味や好意を資産化していくことが、重要になります。

全員をファンにする必要はない

ファンを大切にしようという話をすると、多くの企業の方は、自分たちの商品を買ってくれた全員をファンにしようとしますが、全員をファンにする必要はないと、さとなおさんは言います。

ファンにはなるのは、約2割。中学のクラスにおける価値観が近い仲間の割合と同様で、40人クラスであれば、8人程度が、その規模感になります。逆に、40人全員から好かれようとすると、この8人からの支持がなくなり、結果的に誰からも相手にされない状況になってしまいます。

そして、コアファンになるのは、2割の中の2割(4%)。中学のクラスでいえば、親友です。40人のクラスなら、4%の1~2人程度。

この2割の価値観が近い仲間や親友を大切にしていくことが重要で、イメージとしては、バーやカフェの常連さんを思い出してほしいと、さとなおさん。

「ほとんどのバーやカフェは、2割の常連さんが売上の7~8割を作ってくれていると言います。この価値観の近い2割の常連さんを、どうやって常連にし続けていくかを考えてください。

そして、常連さん達が、自分たちのどんな部分を気に入ってくれているのかを把握していくことが大切だと言います。常連さん達が気に入っているポイントをわかっていないオーナーが割と多いと、さとなおさんは指摘しました。

ファンの支持を強くする3ヶ条

では、どうすれば、価値観の近い常連さん(ファン)からの支持を強くすることができるのか? その答えは、この3つ。

■【1】『共感』を強くする (その価値自体を、アップさせること)

企業やブランド、商品が大切にしている価値を高め、よりファンからの共感を強めることが、大切になります。そのためには、この3つを満たすことが重要です。

  • (A) ファンの言葉を傾聴し、フォーカスする
  • (B) ファンであることに自信を持ってもらう
  • (C) ファンを喜ばせる。新規顧客より優先する

まずは、企業が気づいていない「共感ポイント」を把握するために、ファンの言葉を傾聴することが重要で、発見した共感ポイントに焦点を当て、改良・改善していくことで価値は高まります。

また、「この商品が好きな自分ってイケテルのか?」、「この商品のファンって言って笑われないだろうか?」といった不安を抱えるファンのために、例えば「この商品が、実は、今売れています」といったニュースを流すなど、自信を持ってもらうための活動も重要です。

それと、自分たちを支持してくれているファンを最も優先するという姿勢を明確に押し出すことで、ファンの方々に喜んでいただき、支持を強くすることも大切です。

■【2】『愛着』を強くする (その価値を、他に代えがたいものにすること)

愛着が強くなればなるほど、商品やサービスは長く使われ、「他に代えがたい」ものになります。そういう存在になるために、この3つが大切になります。

  • (D) 商品にストーリーやドラマを纏わせる
  • (E) ファンとの接点を大切にし、改善する
  • (F) ファンが参加できる場を増やし、活気づける

単なる「モノ」ではなく、ストーリーやドラマという「コト」を纏った商品に人は愛着を覚えます。創業ストーリーや、商品開発での苦心・苦労など、背景にいる人の “想い” をファンに届けることが大切になります。

また、店頭や営業の現場、SNS、コールセンター、イベント、ネット記事など、企業とファンとのあらゆる接点が、その企業への印象や愛着を左右することになります。これらをファン目線で改善していくことが必要となります。

それと、ファンが気軽に参加できる場をつくり、想いを共有し、企業や商品ブランドの体験を増やしていくことは、確実に愛着を強くしていきます。そのため、ファンミーティングやファンイベント、もしくは、オンラインのファンコミュニティなどの実施を検討することも重要です。ただ、商品によっては、施策の向き不向きもあるので、まずはファンの方々に、「どういう場がほしいのか?」を傾聴することから始めましょう。

■【3】『信頼』を強くする (その価値の提供元の評価・評判を、アップさせること)

最後は、信頼です。ファンの支持を強くするためには、その価値の提供元である企業の評価・評判を高める必要があります。どんなに「その商品が大切にしている価値」が素晴らしくても、企業自体の評価・評判が低くては、支持は生まれません。そのために、企業は、この3つを考える必要があります。

  • (G) それは誠実はやり方が、自分に問いかける
  • (H) 本業を細部まで見せ、丁寧に紹介する
  • (I) 社員の信頼を大切にし「最強のファン」にする

企業が効率を求めるばかりに、意図せずに、信頼を寄せていたファンを裏切ってしまっていることが多々あると、さとなさんは言います。例えば、リタゲ広告で追い回したり、プラン変更の手続きが煩雑だったり。ファン目線や生活者目線で見たときに、「本当に、それは誠実なやり方なのか?」ということを、まず、ゼロから問い直してみることが重要です。

そして、信頼を強くするためには、「この企業の商品は間違いない」と思ってもらうことも大切です。商品力や品質の根拠となる商品開発や製造工程、制作過程などを、ファンの方々に開示し、丁寧に紹介することが必要になります。

最後は、社員を最強のファンにすることです。社員を一人の生活者と捉え、自分が所属している会社に対する共感・愛着・信頼を高めていくことが重要です。そのために、インナー・コミュニケーションを磨いていくことが大切になります。

そして、この共感・愛着・信頼を高めて、ファンから強い支持を集めた先には、「熱狂される存在になる」「無二の存在になる」「応援される存在になる」という、ファンをコアファンにかえるために取り組むべきアプローチがあると、さとなおさんは言います。

共感いただいた方と一緒に広めていきたい

イベントの最後に、改めて、ファンベースについての想いを、さとなおさんに話していただきました。

「江戸時代のころから、『お客さんを大切にしましょう』というのは、言われてきました。特に地域に根差している企業やお店は、悪いうわさが広まったら終わりなので、そもそも、ファンベースでやっていかないといけないわけです。

ただ、マスマーケティング全盛の100年を経た現在では、なかなかファンベースという考え方が理解されないことが多いのが実情です。

そのなかで、今日話を聞いてくれた方だったり、本を読んでくれた方のなかで、ファンベースという考え方に共感いただいた方が2割いたとしたら、その方々と一緒にやっていきたいと思っています。

もともと、日本人はハイコンテキストというか、言葉なしでも分かり合うことができる民族なので、ファンを通じて想いを届けるファンベースというのは向いていると思いますし、効いてくると思いますし、世の中を良くしていくと、僕は信じています。」

 

…ということで、さとなおさんをお招きした『著者と語る朝渋』のレポートをお届けました。

この急激な社会変化の中で、ファンベースという考え方を企業が採りいれていくことの重要性は、さとなおさんの説明を聞いて、明らかだと思います。

そして、ファンベースという考え方は、企業のあり方だけではなく、”個の時代” と言われる現代において、個人のあり方においても、大切な考え方だと思いました。

共感を強くする。愛着を強くする。信頼を強くする。そして、自分の価値観に共感をしてくれる方々を大切にしながら、一緒に変化し、成長し、価値を生み出していく。

企業として成長していくためにも、個人として成長していくためにも、ファンベースについて、深く学ぶ必要があると思いました。さとなおさんの新刊『ファンベース』は、これからの時代を生きる上での必読書だと思いますので、是非、読んでみていただきたいです。

さとなおさん、朝早くから、ありがとうございました!!

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★参考記事:
「スタートアップのCEOこそ、朝5時に起きるべき。」渋谷発の朝活コミュニティ「朝渋」プロデューサー、井上皓史さん (HARES.jp)