おはようございます。朝渋の北村(@yuu_uu_)です。
『通りすがりのあなた』から約1年ぶりとなる、はあちゅうさんの新刊小説『婚活っていうこの無理ゲーよ』が10月9日に発売となりました。
28歳アラサー女性3人組が、クリスマスまでに彼氏を作る婚活レースを通して、仕事や恋愛はたまた人生そのものとの向き合い方を探っていくという物語。
朝渋運営・株式会社MorningLabo代表の中村がモデレーターを務めた、はあちゅうさんを迎えての『著者と語る朝渋読書会』、その模様をダイジェストでお伝えします!
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著者・はあちゅうさんのご紹介
(photo by 矢野拓実)
はあちゅうさん(ブロガー・作家)
1986年生まれ。慶應義塾大学在学中に開設したブログが大ヒット。企業スポンサーを募ってタダで世界一周旅行を実現した。その後、電通にてコピーライターとして活躍。フリーランス転向後は“ネット時代の新しい作家の形をつくる”をテーマに、日々ブログやSNSで発信を続ける姿がファンを呼び、現在Twitterフォロワーは20万人超え。
著作に『半径5メートルの野望』『言葉を使いこなして人生を変える』『自分を仕事にする生き方』『通りすがりのあなた』などがある。
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今回の小説は『婚活』がテーマ
中村:はあちゅうさん、今日はよろしくお願いします!
今回の小説『婚活っていうこの無理ゲーよ』の主人公たちは、28歳のアラサー世代。私自身も27歳になるので、登場人物たちと同年代ということもあって、感情移入しながら読ませていただきました。
そのあたりも含めてお話を伺いたいのですが……、まず、はあちゅうさんは朝型ですか?
はあちゅうさん:きっと朝型だと思います。でも私、20代の方が朝型だったんですよね。
6時とか7時には起きて、朝からメールを返していた生活でした。
今は旦那が夜型なので、引っぱられちゃってますね。フリーランスなので、早く起きなくても生活がまわっちゃうし。2時~3時まで一緒に映画を見たりして、翌朝クロネコさんのピンポンで起きる!みたいなこともよくあります。
私、朝型の時期と夜型の時期っていうのが交互にあって。
朝型の日の方が、1日が長くなるから好きですね。
中村:もうみなさんご存知だとは思うんですが、改めてはあちゅうさんの自己紹介や最近の活動など、近況も含めてお話いただけますか?
はあちゅうさん:ネット上の活動をつづけながら、今年は小説に力を入れています。
小説って書くのが楽しいし、挑戦していくっていう気持ちがあるんですよね。私はまだまだ、文章の技術やお話を構成する力が足りない。だからこそ、書き上げた時に「成長できたな」と感じます。
今年の4月からオンラインサロンを立ち上げたんですが、サロンオーナー自らが何かに挑戦して、昔の自分を超えていく姿を見せることで、メンバーにとっても刺激にしてもらえると思ってるんですよね。
執筆活動以外も頑張りつつ、“出版社を通さずに”読者さんと繋がる道も模索していきたい。才能を見つけて育てるっていうことにも注力していきたいな、と。
オンラインサロンは新しい経済圏を生む
中村:そのサロン活動の中では、プロデュース活動もされてますよね?
はあちゅうさん:してますね。
キンコンの西野さんだったり、あとは箕輪さんがやってる箕輪編集室だったり、彼らが出す本やプロジェクトのお手伝いをメンバーがしていたりしますよね。
私自身も、出版する本のプロモーションなどでメンバーの力を借りたいなという気持ちが確かにあります。
ただ、今の私の姿を見ながら自分でやっていける人もいるんじゃないかなと思っていて。
うちのサロンは才能を開花させるための塾のようになっています。
日ごろ仕事をしている中で、あんまり表に出て話したりっていう機会はないかもしれませんが、まずは裏方に入って出来ることを探す。
そうしていく中で、それぞれの才能を見つけてほしいなと思っています。
フリーランスになってから、活躍している同世代のインフルエンサーさんの姿から学んだり、ディスカッションして互いに刺激を受けたりしてきたので、“孤独な時間で自分を磨く”というのはとても大切だと思いますね。
そして自分を磨く孤独な時間と同じくらい、横に横に輪を広げていく、繋げていくチームワークが必要なんだと思います。
中村:サロンで開催されたInstagramの勉強会、私も参加しました。
ああやって外部の方を迎えた企画もとても素敵ですよね。
はあちゅうさん:サロンではメンバーみんなが先生だと思っています。プログラミングだったり、あとはお金のこととか。税金の難しい知識なんかを教えてくれたりするんですよ。私、その辺が疎いので……。
お金を通さずにスキルの交換をしている、才能と才能の交換をしているんですよね。
普通だったらお金を通して交換するんですけど、サロンメンバー間では、「じゃあ代わりにツイートしてください」「記事を書いてください」っていう対価だったりする。それが実績に繋がってますね。
中村:新しい経済圏が出来上がっているんですね。
はあちゅうさん:そうですね。オンラインサロン経済圏という感じ。4月の設立から半年経ちましたけど、私自身もサロンによって人生が変わりました。
これからもダイナミックに存在感を増していきたいと思っています。
最初に書き上げた小説は、“全没”!?
中村:このあたりで、そろそろ小説の内容に入っていきたいんですが……。私、いち早く手に入れて読ませてもらったんですけど、めちゃくちゃ面白いんですよ!『最初に彼氏を作った人が、クリスマスイブに高級ホテルのスイートルームに泊まれる!』っていうストーリーで。
28歳の女子3人組の姿をリアルに描いた長編恋愛小説。
その書き方が面白いんですよね。3人の視点から進んでいく感じが。
はあちゅうさん:視点が3つあって、2週するんですよね。
中村:ラウンド1ラウンド2があって、ひとりひとりの名前が章立てになっている。
執筆はどんな風に進められたんですか?
はあちゅうさん:もう、行き当たりばったりでしたね。去年と同じ話になりますが、小説にはいろんな書き方があると思うんです。
大きくわけると、
- 全体の構成を決めてゴールに向かう書き方
- 書きながら物語が変化していく書き方
- 書きたいシーンがあって、それを書いてから間を埋める書き方
この3つ。
私は最初に全体の構成を決めずに、まずは冒頭からがさっと書いていく。そして、できたところから穴埋めしていくタイプです。今回の編集者さんと出会ってから、まずはじめに“20代の恋愛の嫌な部分をまとめた小説”を書いたんです。これは『通りすがりのあなた』よりも前に書いたもの。
冒頭は良かったんですけど、途中から物語が失速してしまって。
私としては綺麗に最後まで閉じたつもりだったんだけど、編集者さん的にはだめだったみたいで、全没になったんですよね。
中村:全没!? それって、修正でどうにかならないものなんでしょうか……?
はあちゅうさん:どうにかなる場合もある、とは思うんですけどね。小説って、書いているときに“旬”があって。熱が続いてないと書けない部分があるんですよ。
イベントのレポとかも、時間が経ってしまったら「別にいいか?」ってなっちゃいますよね。あれと同じで。熱がこもってないから上手く書けないっていう。
この最初の小説も、書いてから時間が経ってしまったので、もう私の中で“旬”ではなくなってしまったというか。
これを一から直すよりも新しいものを書こうと思って、そこから出てきたのがこの『婚活っていうこの無理ゲーよ』でした。小説を出すのって、運命的なものもある気がします。
『婚活っていうこの無理ゲーよ』は、書きあげてから1年以上経ってるんですけど、今のこのタイミングで本になったっていうことは、そういう流れだったんだろうなと思いますね。
写真に撮るように記憶を残す
中村:私、実在する女友達を思い浮かべながら今回の小説を読んだんですけど。
もう、リアリティがすごい!
「アヒージョに油をたっぷり浸からせながら食べる女子会はきもちいい」っていう表現とか、もう読んでいて「そうそう、わかる!」って共感しました。
以前はあちゅうさんは、物語を「自分の体験から書く」「あまり近しい人のことは書かない」って仰ってましたけど、登場人物のイメージはどうやって広げていったんですか?
はあちゅうさん:メモは常に持ち歩いてますね。よく使っているアプリは、『GoogleKeep』と『captio』。
「これ面白いな」「この光景は覚えておこう」って思ったシーンとかをメモしたり。写真を撮るように覚えているところがあるので、それを思い出しながら書いてます。
私にとって書くことは、“記憶や書きたいことの合間を縫っていく作業”です。
中村:想像力を働かせながら読みました。今日明日の自分に繋がっていく感じ。
はあちゅうさん:もう本当に、ぱらぱらぱらっと読めると思うんですよ。昨日のイベントでも、「男性はどう読んだらいいですか?」って質問してもらったんですけど、あんまり私から「こう読んでほしい!」っていうのはないです。
本っていうパッケージになるまではもちろん責任を持ちますし、“作ること”と“届けること”にも強く心を込めています。だけど、届いてからそのあとは、読者さんのもの。
この物語をどう読むのか、どう思うのかは、私も教えてほしいなって思いますね。
婚活は、自分探しの手段
中村:この小説は、決定的な何かが起きるわけではないんですよね。日常にすっととけていくというか、含みのある終わり方で。
はあちゅうさん:婚活って、『自分探しの手段のひとつ』だなと思っていて。この言葉に対して反感のある人もいると思うんですよね。なんというか、すごく強制されているような感じを受けるというか。あんまり「婚活婚活」って言いたくない気持ちもありますし。
でも同時に、世間のそういう風潮に流されてしまう自分もいると思うんですよね。巻き込まれたくないって自分では思っていても、人の目が気になっちゃったり。
『無理ゲー』っていう言葉を使ったのにも、ある種の皮肉を込めてます。
この物語では、結婚を幸せとして描いてはいません。
幸せに出会うための方法や過程が、たまたま婚活だったというだけ。
婚活というものを通して、自分と対話をしている感じ。それを今回は書き込んでいるなと思いますね。
中村:主人公が、最初の切迫した表情よりも、最後に向けてだんだん柔らかい雰囲気になっていくのも印象的でした。
はあちゅうさん:小説ってどういうものなんだろう?って改めて考えたんですよね。私の中で小説は、『登場人物が心の成長をしているもの』。
小説の中の世界って、あんまり時間が経ってないこともあるじゃないですか。
その時間の流れの中で、心情の変化があり、一歩前に進んでいる。それが小説だと思うんです。決して大きな変化ではないけれど、人生の転機じゃないものの方がリアル。
中村:自分はずっと選ぶ人生だと思っていたけれど、男性側も選んでいるんだということに気づく。
相手に合わせて自分をカスタマイズするというか、本当の自分はちゃんと別にいるけれど、本来は選ぶ権利がお互いに半分ずつあるはずなのが、恋愛なんですよね。
はあちゅうさん:自分が恋愛を通して感じたことも物語には入っています。
常に選ぶ立場で婚活というものを見てしまいがちだけど、同じように相手も選んでいるんだから、そこは相性でしかないんだな、と。
結婚は、ゴールではない
中村:女性は誰しも、“お姫様になりたい!”っていう気持ちから物語に入るなあと思ってるんです。元々綺麗で、それが原因でいじめられちゃって、王子様が助けに来る。そんな物語に憧れるけど、リアルはそうじゃないじゃないですか。
そんな中で、登場人物たちがもがいている描き方がリアルだな、と思いました。
その辺の苦悩は、はあちゅうさん自身の体験が盛り込まれていますか?
はあちゅうさん:私自身の身近な体験も入っていますし、メディアから見知ったものも入ってますね。婚活婚活って言っている女性があんまり得意ではなくって。
男性に選ばれて人生が変わるとか、単純に信じられるような年齢ではないじゃないですか、
その幻想にとらわれてる人って多いんですけど、恋愛や結婚で人生は変わらないのかもしれないなっていう部分に、婚活を通してみんな気づく。その過程を描きたいなと思いました。
結婚がゴールになってしまってる風潮を、ちょっとだけ違う視点でみられる人が増えたらいいな、と。
中村:登場人物の中にもうひとり、既婚の女性がいますよね。物語の中でその人物の挫折を描いたのが、“結婚はゴールではない”というメッセージなんでしょうか?
はあちゅうさん:幸せの形って、人それぞれですよね。
誰にでも、目に見えない苦労や葛藤があるんだよ、不思議なことは起こらないんだよっていう、隣にありそうな話を書いてみました。
よく「登場人物にモデルはいるんですか?」って訊かれるんですが、特にいないんですよね。身近にありそうな話を書くことで、読みながら「こういう人いるいる!」って身近に思ってもらえたら嬉しいです。
この『婚活っていうこの無理ゲーよ』を書いたのは2年前なので、細かいところは必死で思い出しながら喋ってるんですよね。書きあがったら自分の手を離れちゃう感覚があって、もうその世界と同居してないというか。
物語を書いている間は、その小説の世界を頭に半分入れながら過ごしてるんです。
登場人物だったらこう考えるだろうな、とか、実生活と小説の世界がリンクする。
でも時間が経っちゃうとあんまり覚えてなくって……、全体のストーリーの流れは覚えているけれど、ちょっと距離がありますね。
小説は、SNSには出せない違和感を昇華させるデトックスの場
中村:恋愛と仕事のバランスという部分も今回のテーマなのかな、と思うんですが。3人とも、お仕事も恋愛も頑張る素敵な女性ですよね。彼のお母さんに「仕事はいつやめるの?」ときかれて未来が描けなくなるっていう部分も、すごくリアリティがあります。
頑張る女性の永遠のテーマですよね。
はあちゅうさん:私自身もそういうことがあったんですよね。前の彼とお付き合いしていた時ですけど。“仕事か結婚か?”って、表には出さないけど、根っこに持ってそうだなと感じてしまった。
それを少し小説にも出した感じですね。
中村:「悪気はないんだろうけど、引っかかる!」っていう部分が、本にも出てきますよね。
はあちゅうさん:普段生活していて感じる些細な違和感とか、SNSには出せないようなものを物語に昇華させてますね。小説はデトックスの場所。自分の中で引っかかっても、表現できないことの方が多いんですよ。
いちいち小さいことに目くじら立てると思われたら、仕事にも支障が出るかもしれないですしね。
そんな中で、“こういう言葉にはこの気持ちが混じってるんじゃないか?”っていう、SNSでは出せない気持ちも、小説にはフィクションっていう建前で出せる。
そういうシーンを「どこかな?」って思いながら読んでもらえると嬉しいですね。
中村:そうそう、イラッとする男性が登場しますよね!
はあちゅうさん:「ああ、いるいる!」っていうネタを、ネタだけではとどめずに、上手く昇華できたかなと思ってます。出し切るとスッキリしますね。
中村:はあちゅうさんは、この世に結婚がなかったら、苦しまないと思いますか?
はあちゅうさん:なかったらなかったで苦しむと思いますよ!結婚っていうものについて、立ち止まって考えることも大事だと思っていて。私自身も、普通の婚姻ではなく事実婚という形を取った時に、「結婚ってなんだろう?」って考えたんですよね。
世間一般がとる形ではなくてもいいかな、と思ったんです。
「この年齢だから結婚しなきゃ」って考えてしまう人もたくさんいると思うんですけど、そういうことを考えるときに、この本が何かのヒントになればいいなと思います。
結婚したい日とそうでない日、交互にやってくるのがリアル
はあちゅうさん:どこにでもいる女の子だけど、結婚っていうものに流されてしまう部分も持ち合わせている。それがリアルかなあ、と。まったく結婚願望がないっていう子もいるけど、アラサーになってきたし、「結婚しなきゃいけないかな?」って思う人の方が、現実に近い。
実際は、結婚っていうものに大してそこまで切迫感がなかったとしても、人の目が気になってしまったり、他人から見て幸せって思われたい自分もいたりして。
それって、いろんな人がもっている感情じゃない?って思うんですよ。
そういう、移りゆく感情を表現したいな、と。
たとえば、“結婚したい”って思う日とそうでない日、交互にやってくるのが私にとってのリアルなんですよね。
「せっかく仕事が上手くいってるのに、結婚がそのスピードを遅めてしまうんじゃないか」「でも結婚はしたい!」って、別々の考えが日によってくるくる巡る感覚。
でも、編集者が男性の方だったので、「主人公に一貫性がないから、読者が感情移入できないのでは?」という意見が出て。「こういう日が交互にくるのが女性では?」って私は思うんですけど、それでも、読み手への正解はないんだな、と。
小説は、自分の作品ではありつつ、他の人の考え方やフィードバックがあってこそのものなので。自分の手でできたものでありながら、手を離れているものでもあるなと思います。
中村:好きな人ができない、恋愛ができないっていう悩みもあると思うんです。
でも、他人に幸せと思われたいと感じて焦ってしまったり、はたまた、世間的にはモテる人だけど、私には合わないなあと思って引いてしまったりすることもあって。
そういったケースでも、恋愛の場には立つべきなんでしょうか?
はあちゅうさん:どっちでもいいと思いますよ!
小説を読むときって、自分と対話する時間だと思うんです。面白いか面白くないかを感じる、それも楽しみ方のひとつだったりしますし。
またそれとは違って、“悩みを引き出すトリガー”みたいな部分もあるんですよね。
今って、何かと共感が求められるものが善とされる風潮がありますけど、それは必ずしも小説としてのゴールや正解ではないと思っていて。
共感できない世界を描いた方が、芸術的な価値は高い場合もある。
自問自答しながら読んだり、たくさんの感情に触れられるのも小説の魅力のひとつだと思います。
自分にとっての幸せの答えを出せるのは自分だけですから。
強烈な違和感を飲み込むことが、成長に繋がる
中村:この物語には、全ての悩みや機微に答えてくれる絶妙なキャラクターも登場しますね。
はあちゅうさん:自分とは違う恋愛観・価値観をもつ人って、最初は違和感でしかないですよね。例えばSNSでも極端な人は目立ちますし、拒否感を持たれてしまう。でも、その発信を見ているうちに好きになったりする。
強烈な違和感を飲み込むというか、今までの人生になかったものに出会うことが、そのまま自分の成長に繋がるんです。
同じ言葉でもタイミングが違えば浸透していくものもある。
多様なものを受け入れていくことが大事かな、と。婚活をしていると、“人間を否定される”って感じることが多いと思うんですよね。
『恋したい』っていう目標に振り回されてしまって、相手に対しての×が多くなっていく。なんでも否定から入ってしまって、嫌な女になりがちなんです。
読みながら反感を覚える人もいると思うんですよ、この主人公に対して。否定してばっかりだな、自分は動いてないじゃないか、って。ダメ出しをする中で、自分の普段の立ち居振る舞いに立ち返る瞬間があるんですよね。
小説って、正解がないもの。登場人物の誰に共感するかも人それぞれ。
単純なものが受け入れられやすい中で、小説はどんどん売りづらいものになっています。そんな中で、読みやすいと思ってもらえたらいいな、と。
中村:この小説を読み終わったあとで、また皆さんと集まりたいなと思いました!感想とか、「私はこう思う!」っていうのが絶対ありますよね。
はあちゅうさん:それぞれ、全然違う物語を読んでると思うんですよ。
普段から読者の人と話す機会も多いんですけど、「はあちゅうさんは前にこういうことを言ってましたよね!」って、自分で作り上げて話しかけてくる人もいる。
私は全くそんなことは言ってないんだけど、この人はそういう風に読んだんだな、と思いますね。そのために必要な本だったんだなと思います。
小説は、遅効性。じわじわと効いてくるもの
中村:ここで、『浄化』というキーワードに立ち戻りたいな、と思うんですが。
とても没入感がある小説ですよね。
はあちゅうさん:自己啓発みがあるな、と自分でも思いますね。読んでいく中で、“自分を変えるキーワード”に出会える。
中村:朝渋メンバーには、実用書を読む人が多いんです。
私自身も、目先の問題の解決策を知りたくて、実用書を読んでしまう傾向があります。でも、実用書と小説とでは、本の中の旅の仕方が違いますよね。
小説の体験の楽しさというものを、改めて教えてもらった気がします。
はあちゅうさん:小説って、じわじわ効いてくるものなんですよね。
ビジネス書が即効性のものだとしたら、小説は遅効性。
何気ない生活の中で思い出すものってあるじゃないですか。昔読んだ小説のシーンだったりとか。そういったものに、その人の価値観が出てくると思っていて。それって、読んですぐに出てくるものではないんです。自分の中にいつの間にか入ってるものなんですよ。
言ってしまえば、小説って役に立たないもの。
本っていう体裁になってるから、皆「良いこと書いてないかな?」って期待して読んじゃう。でも、例えばドラマを観るときなんかに、何か良いことを得ようとは思ってないですよね。
小説も、もっとラクで楽しいものなんです。
読む時間を単純に楽しむ。自分との対話の時間にする。
人生を変えようっていう読み方はビジネス本でするものだけど、そのメッセージすら作家側が押し付けるものではなくって、読者が自ら探すもの。
その体験をこの本で得てもらえたら嬉しいですね。
中村:物語を書く上で、意識的にやっていることはありますか?
はあちゅうさん:人生全部をネタにできる、悪いことも作品に昇華できるっていう意識で常にいることでしょうか。
例えばイラっとすることや、少し違和感のあることの方が、ネタとしての取れ高は多いわけですよ。つまらなかった飲み会こそコンテンツになり得る。
嫌だったことは、そのまま置いておいたらマイナスでしかないけど、SNSに書いたりシェアしたりすることでプラスにできる。私の仕事で気に入ってるのはそういう部分ですね。
嫌なことを嫌なまま置いておいたら、嫌なことでしかないわけですから。自分の人生は自分の力で明るく楽しくする。もったいない精神ですね。
質疑応答タイム
質問者:はあちゅうさんは日々、コンテンツを作るために情報収集をされてますよね。SNSもたくさん発信されていますが、どういう風に時間の使い方を工夫されてるのかお聞きしたいです。
思いついたことや拾ったネタなんかを、思い出したり振り返ったりするためにしている習慣や心がけはありますか?
はあちゅうさん:手がかりを残しながら生きてますね。
生きながら日々やっていることなんですが、「これがあったら思い出せる!」っていう手がかりをたくさん残してます。
毎日の日記も、書くための時間をたくさん確保できるわけじゃないので、すべてキーワードで残しておく。後からそれが検索ワードになってくれて、記憶が引き出されるんですよ。
あとは、私『自分への取材手帳』っていう手帳を出してるんですけど。ネットでたまたま見かけた、面白いネタに繋がるキーワードを書いていたりしますね。
『自分への取材手帳』と普通のメモ帳と、2冊一緒に持ち歩いてます。
次回作は、10月中旬からcakesで連載開始!
中村:はあちゅうさん、今日は本当にありがとうございました。最後に、一言いただけますか?
はあちゅうさん:次に出す新しい小説は、10月中旬からcakesで連載になります。1月に本になることがもう決まっていて。『仮想人生』っていうタイトルです
この作品も、めちゃくちゃ力を入れて書きました。
Twitterの裏アカウントの話で、決して表で脚光を浴びるような人ではない登場人物が主人公。Twitterによって自分の人生が変わる、っていう物語です。自分で実際に裏アカウントをつくって調査した内容を元にしています。
文章の表現の仕方が特に気に入っているので、ぜひ味わってほしいです。
良かったら、ぜひ拡散お願いします!
今年は小説を2冊書いて、世の中に出せたっていう点で、「一歩前に踏み出せたな」って感じてます。これからもいろんな方法で表現していきたいですね。自分の技術力を上げて、より良いものを届けたいと思ってますので、その過程を楽しんでもらえたらな、と。
自分自身が、「これからどういう物語を生み出せるんだろう?」と思えて、それがちょっとだけ楽しみです。作品をリアルタイムで読めるっていうのは、一緒の時代に生きている作家じゃないとできないんですよね。
先が楽しみだと思ってもらえる作家になりたいと思ってます。
中村:前回はあちゅうさんにお会いした際に、「えぐりだして書いたから、ちょっと休みたい」って仰ってるのを聞いて心配だったんですが、その間に2作品も書いていらっしゃるのがすごいなあ、と改めて。
そして、作品をリアルタイムで読めることを幸せに思います。
はあちゅうさん:もう、それにかけてるんですよね!
楽しく書けたんです。もう、一番楽しかった。ぜひ映像化狙いたいなって思ってます。これはもうご縁とタイミングなので、私は祈ることしかできないんですけど。
ネットで話題になると考えてもらいやすくなるので、ぜひとも、拡散お願いします……!
中村:次の小説『仮想人生』は、10月中旬からcakesで連載開始ですね。
皆さん、ぜひシェアしましょう!
今日は本当にお疲れさまでした、ありがとうございました!
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婚活を通して、恋愛を仕事を引っくるめた、自分の人生そのものを見つめ直す。自分自身と対話して、深堀りしていくきっかけに、この『婚活っていうこの無理ゲーよ』という作品はぴったりではないでしょうか?
はあちゅうさんの約1年ぶりの小説、ぜひともお手に取ってみてください!
Text by 北村有(@yuu_uu_)
Photo by 矢野拓実(https://takumiyano.com)
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