厚生労働省が「働き方改革」法案を提唱した2018年。
時間だけが長く取られ、何も決まらない会議。
一向に電子化が進まない行政の手続き。
礼儀正しく時間を奪う日本企業の在り方。
本質を突いた「働き方改革」が日本に浸透するのは、一体いつのことになるのでしょうか?
2017年に「マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1プレゼン術」を出版した澤円さんが、最新作となる「あたりまえを疑え。 自己実現できる働き方のヒント」を上梓されました。
効率的に、かつ自分らしく働くために必要なのは、「やりたくないことはやらないこと」「アウトプット=言語化」すること?
朝渋運営・西村をファシリテーターに、これからの日本の「働き方改革」に必要な思考について、徹底的にお話を伺いました。
著者紹介
Photo by 矢野拓実(https://takumiyano.com)
澤 円さん(さわ・まどか)@madoka510
マイクロソフトのテクノロジーセンター・サイバークライムセンター責任者を兼任する傍ら、プレゼンテーション・コミュニケーションにまつわる講演や研修を精力的に行う。
株式会社「圓窓」を2017年に設立。
2作目の著書となる「あたりまえを疑え。 自己実現できる働き方のヒント」を2018年11月に上梓。
効率的≠人の心を失うこと
「効率的」、という言葉。これが結構くせ者なキーワードなんですよね。
効率的に働くことと、人の心を失うことはイコールではありません。効率化すると楽しくなくなってしまう、そもそも仕事がなくなって失業者になってしまうのでは? と心配する方もいますが、そんなことはありません。
ハッピーな時間を増やすために、くだらない仕事はやらない、ということです。
この価値観を伝えることも、日々の生業としています。
「あたりまえを疑う」マインドセット
平成元年(約30年前)の世界時価総額ランキングでは、上位10位以内中7つを日本企業が占めていました。平成30年現在は顔ぶれが一新されています。
注目してほしいのは、「やっている産業」。
30年前はほとんどが金融、一部が通信インフラ・エネルギー産業でした。どの産業も、30年前の時点で100年以上の歴史を誇るものばかり。
どういうことか?
「0を1にするビジネスをやっていた会社はなかった」ということなんです。
イノベーティブを起こす会社ではなく、1を100にする、既存の産業を工夫して大きくする会社が評価されていた。それが日本の実情だったんですね。
現在は、0を1にする会社が評価されている。
「働き方改革」をするよりも、まずは過去の栄光を忘れること。そして、それに対して疑いの目を持たないと、これからの時代は戦っていけないということを示しています。
本物の会議の在り方
ビジネスインターンに来ていた交通系日本企業勤務の28歳が、「会議で何かが決まるのをはじめて見ました」と言って驚いていました。
会議に出席して何かが決まる瞬間というものを、これまでに見たことがなかったんですね。
僕の会社では、会議で何かを決めないということはありえない。
わざわざ会ってるのであれば、誰がいつまでに何をするかを決めるべきです。それが会議というものの在り方。
日本教育において、黙って座って先生の話を聞きましょう、と指導されていた時代から進歩していない。この価値観がずっと続いてしまっているんですね。
報告・連絡・相談の本質
「報告・連絡・相談」。
すべて大切なのは確かですが、これには時間の流れがあるということがポイントです。
「報告」=「過去」
「連絡」=「現在」
「相談」=「未来」
同じ時間軸で進めなければならない、という価値観を疑わなければいけません。
最も時間を割くべきなのは、「相談(未来)」の部分です。
相談=人間性、とも言い換えられますね。ここぞという時に、本当に会いたい人と同じ空間を共有して、人間性をぶつけ合う。ここに多くの時間を割いてほしい。
報告・連絡のために時間を使いすぎていませんか?
「より一層、自分のパフォーマンスを上げるためにはどうすればいいか?」という部分に時間を使えるようになる仕組みづくりが大切です。
嫌われる日本人
日本企業に転職した、元外資系勤務者に共通の悩みがあります。
それは、「考える時間が取れない」ということ。
メールで済むはずの売上報告に、わざわざチーム全員で直接やって来る。「メール1本なんて失礼なことはできない」という理由で、まさに礼儀正しく相手の時間を奪っているわけです。
過剰な礼儀は、相手の貴重な時間を奪う「ただのコスト」になってしまいます。
礼儀のために時間を使うのはやめましょう。
シリコンバレーの視察ツアーというのが流行っています。
日本企業の役員が現地を訪問して、CEOのプレゼンを聞く。「ビジネスチャンスが広がるはずだ」と向こうがわくわくしているにも関わらず、話を聞いただけで帰っていく日本人。
「前向きに検討したいと思います」
「持ち帰らせていただきます」
時間の使い方、意識、流れそのものが違うんですね。「時間の使い方を知らない国だ」と思われた結果、日本は働きたくない国ナンバーワンに輝いています。
時間がかかるだけの作業は「麻薬」
たとえばレポート作成は、「仕事をしている気分にさせる」だけの麻薬のようなものです。ただの過去の焼き直しですから、仕事は1ミリも進んでいません。
仕事でも何でもない、ただの作業。真っ先にAIに取って代わられます。
人がパソコンに向かって作業しなくても、自動的にデータ化させるツールは既にあるわけです。それを使うか使わないかだけの問題。
「紙・書類」を重要視するのも、もうやめましょう。
・印刷に時間がかかる
・陳腐化したデータ
・場所の制約を受ける
紙中心で進めている仕事を疑うだけでも、業務効率化になります。
「未来に繋がるもの」のためだけに紙を使った方がいい。最も大切なのは、皆さんの時間です。
「いつでもどこでも働ける」は常識になる
これからの時代、時間や場所に制限されることなく、自由に働くことは常識になっていきます。勤める会社でそれが許されないのであれば、皆さん自身がイノベーターになって先にやってしまえばいい。
日本は、社員を子ども扱いする国です。子ども扱いされた社員は、やがて子どものように振る舞うようになります。
「まるで子どものように、仕事の指示を待っていないかな」と自分で疑うこと。
怒られることを避ける思考になってしまうのも危険です。
距離と時間は変えられない
ライフスタイル・ワークスタイルを変える上でもの凄く重要なのが、「距離と時間は変えられない」という事実。
出勤そのものは仕事ではありません。
「満員電車に乗るのが好きだ」という人はいますか?
嫌なのに、何故同じ時間に電車に乗るのか。電車というものは、同じ時間に乗りさえしなければ混みません。乗る時間をずらせばいいだけの話です。
これまで「当然だ」と思っていた事実を、今一度疑ってみてください。
自分に合ったアウトプット法を考える
西村さん:今回出版された「あたりまえを疑え。 自己実現できる働き方のヒント」を書こうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
澤さん:Webインタビューに答えた時にいらっしゃっていた方が、たまたまブックプロデューサーも兼ねている方だったんです。僕の話に興味を持ってもらって、企画を提案いただいたのが大きなきっかけでした。
加えて、「Voicy」配信のための台本(1000~2000文字)の膨大なストックがあったので、それを材料にテーマをピックアップしていきましたね。
アウトプットをしていると、こういった機会に恵まれるサークルが生まれます。
僕自身も、材料が既にある状態だったので、スピード感をもって出版することができました。
アウトプットが苦手という方は、自分に合った得意な方法を考えるのが第一です。
生きにくさが根本にあった
西村さん:澤さんにとって、「あたりまえを疑う」という点が強みだったのでしょうか?
澤さん:僕にとって、「あたりまえを疑う」の根本にあるのは、生きにくさでした。
疑っていると様々なところで衝突しますが、アウトプット過多になると、それが市民権を持つようになります。支持者が増えると、興味を持つ人が増えるんです。
何故か日本人は、「正解が一つしかない」と勘違いをしがちです。
そこから解脱させたい、というのが強いモチベーションになっています。
違和感を言語化する
西村さん:「あたりまえを疑う」という力をどのように身に付けたらいいでしょう?
澤さん:嫌なことはやらない。これだけですね。
嫌なことはやらないと決めるだけで、「NO」が言えるようになります。
嫌ならば「なぜ嫌なのか」をきちんと言語化すること。
その上で、代替価値となる強みを認識することまでが責任になってくると思います。
西村さん:そもそも目の前の「あたりまえな作業」の目的を見極め、達成プランを複数考えることが大切なんですね。
澤さん:そうですね。思考をちゃんと巡らせることが大事です。
日本人はこれまでの教育において、考えるのではなく「正解を覚える」トレーニングを徹底的に積まされてきました。
中間層が厚くなり、全体のレベルが上がるメリットもありますが、その代わりトップが上に飛び抜けない。イノベーティブに突出した人が出てこないというのが日本の特徴ですね。
日本企業でイノベーティブを起こすためには?
西村さん:若手で、なかなか意見を聞き入れてもらえない立場で「あたりまえを疑う」アクションを起こしていくには、どうしたらいいでしょうか?
澤さん:「Think」と「Action」の間には「言語化」があります。
まずは言語化してそれを再現できる状態にすること。そのためにはアウトプットが重要です。
アウトプットするということは、言語化ができているということ。
繰り返していくうちにフォロワー(支持者)は増えていきます。
若い世代は、可愛がられることが大切です。「面白いことを考えたから一緒にやりましょう!」と持ちかけたりして、可愛がられ力を磨きましょう。
西村さん:ありがとうございます。最後に、みなさんへメッセージをお願いします!
澤さん:参加してくださった方、本を読んでくださった方に改めて御礼申し上げます。
みなさん、面白いことだけをやりましょう。自分が「面白い」と思うことに時間を使う、これを徹底してほしい。
そのために、今日からすぐにできることを提案します。今まで、「声を出して挨拶をしたことがない人」に対して、気前のいい挨拶をしてみてください。
会社の守衛さんや、コンビニの店員さんなどですね。
自分のために何かをしてくれている人に、わざわざお礼を言う機会ってそうそうないんですよね。
メールの送受信が難なくできるのは、裏でサーバー管理をしてくれる人がいるから。経費を申請して給料がもらえるのは、経理の人が仕事をしてくれているからです。
あたりまえに流れていることに対して感謝の気持ちを伝えるのがポイント。「あたりまえを疑え」のための、大事なマインドセットのひとつです。
「面白いことないかな」という目で世の中を眺め、一日を過ごしてもらえたらと思います。
今日、そして明日からの働き方を抜本的に見直すきっかけとなる朝でした。
これまでの「常識」「あたりまえ」を疑う目を持ち、自分の心が拾う「面白い!」のアンテナを磨くことが大切ですね。
澤さん、貴重なお話をありがとうございました!
Text by 北村有(@yuu_uu_)
Photo by 矢野拓実(https://takumiyano.com)
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