「宗教なんじゃないの?」なんて懐疑的な目で見られていた時代を経て、数え切れないほどのオンラインサロンやコミュニティが日々生まれては消えていく昨今のインターネット界隈。
そんななか、着々と仲間を増やし続けているのがお笑い芸人・キングコング西野亮廣さんが率いる『西野亮廣エンタメ研究所』。
数々のバッシングを受けながらも、わずか3年間で約2万人という規模のコミュニティを築き上げた彼は、どのような戦略を持って同志を集め、夢を叶えていったのか。
今回は西野さんに、発売1カ月にして13.5万部を売り上げた著書『新世界』の主題である「オンラインサロン」をベースに、「人が集まるコミュニティの作り方」についてお話を伺いました。
<文=ゆぴ(17)>
【西野亮廣(にしの・あきひろ)さん】1980年兵庫県生まれ。芸人として活動する傍ら、自身のプロジェクトにおいてクラウドファンディングを活用し1億円以上を調達。現在、国内最大の有料会員制コミュニティ・『西野亮廣エンタメ研究所』を主宰するほか、2018年10月には吉本興業と共に芸能界初となるクラウドファンディングプラットフォーム『シルクハット』をスタート。著書に、『Dr.インクの星空キネマ』『ジップ&キャンディロボットたちのクリスマス』『えんとつ町のプペル』『革命のファンファーレ』『新世界』など。
『新世界』は売るために書いたわけではない!? 重視したのは「読者の落としどころ」
まずは、本は読者の落としどころをどこに持っていくか、という話をします。
本って2種類あるんですよ。1つは純粋に印税で食べている作家さんの本、そしてもうひとつは「ノベルティ作家さん」が書いた本。
「ノベルティ」っていうのは、レッドブルなど、企業が街中で自社のを宣伝するために無料配布するものを指すんですけど、その「ノベルティ作家さん」のお金の落としどころは印税じゃない。たとえば『破天荒フェニックス』の田中修治さんならオンデーズの売り上げが上がることだし、『人生の勝算』の前田裕二さんならSHOWROOMの会員数が増えることなんです。
大抵のビジネス書がそうであるように、僕の本も「ノベルティ本」で、前作の『革命のファンファーレ』は僕が出した絵本・『えんとつ町のプペル』を作り方や売り方をベースに広告の話をすることで『えんとつ町のプペル』にお客さんを落としているわけですね。
『革命のファンファーレ』そのものではなく、絵本を買ってもらったり、来年に出る予定の映画を観に行ってもらったりすることが1番の目的でもある。
それと同様に、今回の『新世界』は自分が運営しているオンラインサロン・『西野亮廣エンタメ研究所』のほうに落としました。
どの職業においてもそうなってくると思うんですけど、本業でマネタイズしているってちょっとやばいかもしれません(笑)。
まず、「ノベルティ作家さん」は印税で生活を回しているわけじゃないから、印税を全部広告に投げて、さらに売り上げを伸ばすことができます。それに、お金を得ることが目的ではないわけから、テレビに出るときも出演ギャラなんていらないですよね。
たとえば、『アメトーーク!』でもギャラのかかる無名の新人と、ギャラのかからないキングコング西野がいたら、絶対に西野を使うじゃないですか。そうすると、テレビに対して交渉ができるようになるんですよ。「その条件じゃなきゃ、僕はやりませんよ」って言える立場になれる。そうなると、どんどん本業の人が不利になってくる。
だから、本業は入り口にしておいて、お金の作りどころを別においておく。そうすると、本業で面白いことができるようになります。
「情報」ではなく「物語」を売るコミュニティが生き残る
次に、オンラインサロンを始めるときに僕が意識したことですが、1つ目は打ち出すものを「情報」から「物語」にしたことです。
現在、インターネットによってすべてのサービスの情報や技術は地球人全員の財産になってしまっているから、今から何を作ろうがそんなに差がないんです。どの電気屋さんに行ってもだいたい同じ値段でモノが売られているし、レストランはどこに行ってもおいしい。
そうすると、売るものは「個人の信用」か「ストーリー」しかない。
ほとんどのオンラインサロンは2018年の6月にピークを迎えて、今は右肩下がりになっています。何故なら、みんな似たような「情報」を売っていたからです。最初は、「お金が稼げるようになるよ!」と言う名目で人を集めますよね。その後、稼げるようになった人が卒業し、稼げない人も卒業していく。
結局、落としどころが「卒業」しかないから、「ハウツー」ってスケールしていかない構造になっているんですよ。
期待値をコントロールすれば、「リピーター」がつく
2つ目は、リピーターを意識的に作るようにしたこと。どのサービスにおいてもそうなんですけど、リピーターがいなければ回っていきませんよね。
これには数式があって、簡単に言うと「満足度−期待値」です。サロンでいうと、「大学に行くくらいならサロンに行け!」というとどうしても答えがマイナスになってしまいます。要するに、最初に期待値を上げすぎるとダメなんですよ。
たとえば、旅館や旅行代理店は、絶対に「奇跡の1枚」を上げてはいけません。何故なら、それがマックスになってしまって、現場に実際に行ったときに満足度が下がるからです。確かに、一見さんは呼べるけど、それだとリピーターは来ませんよね。
だから、2ランク落としたくらいの写真を設定しておくと良いですね。ただ、ランクを下げすぎても誰も来ないので、バランスが難しいんですけど。この期待値コントロールが重要です。
僕のサロンは、正直大学には負けると思うんですよ。大学のほうがイチャイチャできそうだし、コンパとか楽しそうだし(笑)。ただ、僕のほうが「夢は見せられるな」って思ったんです。そうやって、ここは勝てる、ここは負ける、と冷静に分析して、派手に盛った広告は出さずに打ち出しました。
勝ち続けるストーリーはつまらない。「ドン底」を見せて人を魅了する
そして、ストーリーを作るときに大切なのが、「勝ち続けないこと」です。僕のサロンは、勝っているときには人は増えず、何かに挑戦しているときに伸びます。少年漫画で言うと、「来週どうなる!?」というのを見せることがすごく大事なんです。
例えば、ONE PIECEで主人公・ルフィが負けました、じゃあその後ルフィはどうやって這い上がっていくのか? そこを人は見たいんです。何かを運営したい人は、まずは映画や本の構造を勉強してほしいんですけど、ヒット作品の感情曲線は、「N字曲線」を描かなきゃいけないんです。誰だって無敵で勝ち続けるルフィの話なんて見たくないので。
それでいくと、起業家のオンラインサロンは難しいんですよ。そもそも芸人と起業家が打ち出しているものは根本的に違っていて、芸人は実績が出ても隠すんです。何故なら、笑えなくなるし、「負け」を売る仕事だから。一方で、起業家は実績を出し続けなきゃいけないから、ストーリーメイキングにおいて圧倒的に不利なんです。
だから僕は「勝ってるなぁ」と思ったら「負けに行く会議」を開きます(笑)。
僕にとっては「好感度が低い」のがひとつの「負け」だったんですけど、最近「『西野嫌い』とか言っているほうがダサい!」という風潮になってきてしまったので、これはもう使えなくなってしまいました。それで、どうしようかなぁ、と思ったときに「美術館を作っちゃおう」と思ったんですよね。要するに、金銭的に死にかけようとしたんです。
でもそれも、オンラインサロンの成功とともに、「意外と払えちゃいそうだな」という空気が出てきました(笑)。
先日平成ノブシコブシの吉村くんが1億円で無人島を買いましたが、そこで「吉村が払えないんじゃないか?」というところに物語が生まれたじゃないですか。本来なら僕もそうならなきゃいけないのに、「払えそう」な空気になってしまったので、僕にとっては「お金負け」はもう詰むな、と思いましたね!
だから、次は「さすがに無理っしょ!」と思われることにいくために、今は「世界の紛争を終わらせる」という社会的なレベルにまで挑戦を上げています。それなりに問題も発生するし、バッシングもされるけど、旗は遠いところに立てたほうが良いし、そもそも旗を立てないと失敗が可視化されませんからね。
「覚悟を決める」には「圧倒的な努力」をすること
とはいえ「ドン底」に落ちるのはそう簡単なことではないので、まず覚悟を決めなければいけませんよね。そのためには「絶望」することが必要なんですけど、絶望するためには、圧倒的な努力をしなければいけません。
25歳のとき、僕は日本で1番売れているお笑い芸人になりました。
「山を登ったらいい景色が見える」と信じて、みんながコンパしたり旅行に行ったりしているあいだ、ずっと漫才しかやってないんです。でも、関西の漫才コンクールに勝ち続け、冠番組も取り、がむしゃらにやったその先には、まだタモリさんやさんまさんの背中がありました。絶望しました。「これだけやっても、ここなのか!」って。ただ、それは、登ってみなければわからないんですよね。
先日、幻冬舎の箕輪さんがおっしゃっていたんですよ。「落合陽一さんとか、堀江貴文さんを見ていても全然憧れないし、コスパが悪すぎる」と(笑)。要するに、あれだけ努力しないと結果が出ないし、絶望は見えないんですよね。
とはいえ、努力しよう!と言ってもモチベーションを上げるのは難しいじゃないですか。モチベーションというのは自然発生するものではなく、結果が出ないと上がらないんです。だから、最初は自分の得意な、結果の出やすい領域を攻めていってください。「活躍する、喜んでもらえる、じゃあもっと人を喜ばせよう」というふうにモチベーションは上がっていくんです。
苦手なことをやらないのもちゃんとした戦略なんですよ。昔から戦上手は「勝ち戦」しかしませんから。
Text by ゆぴ(17)(@milkprincess17)
Photo by 矢野拓実(https://takumiyano.com)
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