「100cmのもっちりヒップ」を武器にした独自のSNSプロデュースにより、グラビアアイドル業界を盛り上げる倉持由香さん。「#グラドル自画撮り部」「#尻時計」など、少し特異なSNS活用を通じて、日々多くのファンを獲得しています。
そして今回、「熾烈な競争が繰り広げられるグラドル界をサヴァイヴしてきた」と話す彼女は、グラビアアイドル史上初のビジネス書『グラビアアイドルの仕事論 打算と反骨のSNSプロデュース術』を出版。朝渋では、倉持さんご本人をゲストに招き、本書のタイトルにもある「SNSの自己プロデュース術」を軸にした仕事論を、たっぷりとお話いただきました。
〈文=須崎 千春(@chih_suz)、編集=井手 桂司(@kei4ide_)、写真=狐塚 勇介(@koz_fox)〉
【倉持 由香(くらもち ゆか)】1991年生まれ。GPR所属。コンプレックスであったお尻を「100cmのもっちりヒップ」のキャッチコピーの下に推し始め、美尻を強調した自画撮りをTwitterへ投稿する「尻職人」として注目を集める。理論的にセルフプロデュースを行う姿勢と情熱はグラドルファンに止まらず知られ、グラビアアイドルとして活躍する傍らミスiD2018の審査員を務めるなどプロデュース活動にも携わる。写真集に『#東京尻百景』(双葉社)、『台湾驚異的美尻集』(ワニブックス)など。2019年4月には“すべての職業”をアップデートする実践的お仕事理論『グラビアアイドルの仕事論 打算と反骨のSNSプロデュース術』を出版した。
「成功が一番の逆襲」倉持由香の原動力はハングリー精神
倉持さん:
わたしはよく「売れるまで、セミより長く地中にいました」と言っています。というのも、セミは地上に出るまで5〜6年は地中で過ごすのですが、わたしは売れるまでの10年間、ずっと地中にいました。いわゆる「売れない時代」が長かったんです。
この話をすると驚かれる方もいますが、テレビや雑誌などに出始めたのもここ数年。芸能界デビューしたのが13歳で、前の事務所では荷物持ちなどの下積みばかりでした。上京してからは家もなかったので、事務所の台所にドンキホーテで買った薄い寝袋を敷いて寝泊まりを繰り返したり…。ずっとずっと、悔しい思いをしながら生活していたんですよ。
でも、この悔しい経験が「絶対に売れて、こんな状況から抜け出してやる!」と今の力になっていると感じます。わたしの原動力はハングリー精神なので、「世の中のために頑張りたい」というより「わたしをバカにしてきた人たちを絶対に見返してやる!」と負の感情をエネルギーに変えています。
自分をバカにしてきた人たちを見返すことができるのは、自分が成功したとき。今でも成功が一番の逆襲だと思っているので「相手が『ぐぬぬ…』となるくらい成功しよう!」と胸に刻んでいます。
コアファンはフォロワーの1%「知名度のピラミッド理論」
倉持さん:
2013年。日テレのイメージガールになるために、グラドル99人が人気を競うあう深夜番組に出ました。最終的にイメージガールに選ばれるのが6人で、ファンの方からの課金額が少ない子からどんどん脱落していく。脱落が決まったときには生卵をぶつけられるような、すごくハードな番組です。
わたしはこの番組に「女の子のライバルが98人いる」と思いながら挑みました。どうしよう…と悩みながらも、勝ち残るためには「とにかく目立つ必要がある」と考えて、まずは「5分に1回Twitterにお尻の写真を載せること」からスタートしたんですよ。番組の公式ホームページにはグラドル99人全員のツイートが表示されていたので、そこをわたしのお尻でジャックしようと思って(笑)。そしたら「あ、お尻の子だ!」とファンの方が増え、グラドル99人の中でフォロワー数がダントツで多くなりました。
倉持さん:
また、課金額で勝敗が決まるので「推しの子を勝たせるために」と、1度に100万円分のチェキを買ったりするファンの方もいらっしゃいました。いわゆる「太客」と言うんでしょうか。
でも、そのファンの方々を見てわたしは「自分のファンの方に100万円も使わせるのは嫌だ!」と思ったんですよ。1人のファンの方に100万円を使わせるのではなく、100人、1,000人と集めて、1人ずつの負担額が少なくても勝てるようにしよう。ライバルの10倍はファンの方を集めようと、とにかくお尻をTwitterに載せ続けたんですよ。
そのときに意識したのが、本の中でも言っている「知名度のピラミッド理論」です。
倉持さん:
「知名度のピラミッド理論」は図のような三角形が基にあり、下段が「倉持由香を知っている方」、中段は「写真集や雑誌など1,000円単位の買い物をしてくださる方」。そして、トップ層が「撮影会やイベントに足を運んでくれるファンの方」。このように考えています。
となると、撮影会やイベントで100人のファンの方に来ていただくためには、1万人くらいのフォロワーさんが必要ということになるんですよ。
「フォロワー数の多さ」と「コアなファン数」は必ずしも比例するわけではありませんが、フォロワー数が増えれば増えるほど、このピラミッドの三角部分は大きくなります。なので、まずはとにかく「倉持由香を知っている方」を増やすことが、コアなファンの方を増やすことにつながるんです。5分に1回お尻をTwitterに載せるのも、ピラミッドを大きくすることを意識していたからです。
もう1つ、三角形を綺麗な形に保つことも大事なんですよ。もし、炎上商法をしちゃったりすると、わたしを知っている人はすごく増えるんですけど、アンチも増えてしまいますよね。知名度はあってもピラミッドが先細りになってしまうので、イベントなどに来てくれる方が少なくなってしまう。
これだと「炎上ばかりする使いにくいタレント」という印象がついてしまうので、「できるだけアンチを作らない」「周りの方への感謝を忘れない」この2つのポイントを大事にしています。結果的に、イメージガールを決める番組では脱落してしまったのですが、またその悔しさがわたしのエネルギーになりました(笑)。
「富士山の中腹より、砂山の頂上」尻職人になったきっかけ
倉持さん:
グラビアアイドル業界では顔がかわいくて胸が大きいのは当たり前なので、胸のサイズで負けている時点でわたしには勝ち目がありませんでした。
…でも売れたい。
「どうしよう…どうしよう…」と考えていたとき、カメラマンさんに「もっちーはその大きなお尻を武器にしたほうがいい。武器にしないとただの無駄尻だよ!」と言われて。「え!?わたしのお尻って無駄尻なの!?」と思いましたが(笑)。カメラマンさんは被写体を客観的にみている存在だし「自分の考えで売れないなら人の意見を聞こう!」と、その時から倉持由香は尻職人になりました。
自分の考えで結果が出ないんだったら、人の意見を参考にする。人はどうしても、いただいたアドバイスに対して「それってどうなの…?」と疑いの心を持ってしまいがちですが、成功したいのであれば人の意見を素直に取り入れられる「柔軟さ」が大事なんですよね。
「お尻を武器にしたほうがいい」と言われてから、やるんだったら徹底的にやろうと思って、足首に重りを付けてお尻を100cmまで育てたり。この「100cm」という数字も、ライバルがたくさんいる中でどれだけ見ていただくかが勝負なので、キャッチーさにこだわりました。どんな「引き」を作れるかを、1番に考えたんです。
倉持さん:
そして、先ほども言いましたが、グラビアアイドル業界には「顔が童顔でかわいくておっぱいが大きい子」が本当にうじゃうじゃいるんですよ。そこには大きな山「童顔巨乳の山」があって、篠崎愛さんなどグラビアアイドルの王道「おっぱいが大きくてロリ系顔」を、みんなが目指すんです。
なのでその山には、富士山の繁忙期のように登り道に行列ができているわけです。人がたくさんいて全く進めないですし、わたしもこの山の入り口で悩んでいて(笑)。
でもそんなとき、大手事務所の子がヘリコプターでヒューンって頂上まで行っちゃったりとか、後ろから「馬できました」みたいな子もいるわけです。そこで「富士山に登る資格はわたしにはないな」と気づきまして、「富士山の近くに尻職人の山を作ろう」と思いました。山を登るのをやめて、山を作ったんです!(笑)
そこから、砂山でも小さくてもいいから自分の山を作ろうと「尻の山」を築き上げていきました。日テレのイメージガールにはなれなかったし、「ミス○○」などの肩書きもない。でも「尻職人」のキャッチフレーズで生きていこう、自分で代わりの冠を作ろうと決めたんですよ。
それから「#尻時計」や「#グラドル自画撮り部」をスタートして、知名度のピラミッドを大きくすることと、AKB48さんのようなグループアイドルブームの中で、グラドル業界を盛り上げられるような活動を本格化していきました。SNSで100万いいねを集めたら『週刊プレイボーイ』の表紙になれる企画が成功したのも、これまで地道に取り組んできた活動が形になった証です。
3本の柱を意識する!仕事でおかわりをもらう「ニトリズム精神」
倉持さん:
わたしは普段、お仕事をする上で「仕事を切らさないための3本の柱」を意識しています。
・事前告知
・当日のパフォーマンスを全力でやる
・関わりのある全ての方に感謝して、お礼を忘れない
「この3本の柱を欠かさなければ、絶対に仕事は途切れない」というのがわたしの持論です。
わたしのお給料は歩合制で決まるので「仕事がなくなっていく!」と危機を感じる時は、このうちのどれかが欠けていると思うようにしています。逆に、この3本の柱をうまく回していけば、お仕事が途切れることはないんです。
あとは、勉強を怠らないことですね。お仕事で関わったことは全部楽しんで、勉強を突き詰めて趣味にしています。趣味の一つである麻雀も、最初はお仕事だったんですよ。でも、そこからずっと麻雀を続けてきた今、AbemaTVの麻雀大会で優勝して、賞金100万円をいただいたりもしています。あとは、競馬でも万馬券が当たったので、その時は家電を買いました。
例えこんな風に得たお金でも、変な使い方はしません。家電を買った当時は「家が好き」とたくさんアピールしていたので、家電のお仕事が来るようにと思いを込めて家具家電をずっと買っていました。その結果、パナソニックさんからお仕事をいただくことができたんです。どんなところにも「生きたお金の使い方」をすることが大事ですよね。
例えば、間違って私が「ルイ・ヴィトン」を買い続けても、ヴィトンからお仕事は来ないんですよ。なので、自分に仕事をくれる可能性があるところに投資することをずっと意識しています。
色々お話してきましたが、元々はひどい寝袋生活をしていたので「絶対にタワーマンションに住むぞ」という目標で今まで頑張ってきました。昨年、念願のタワーマンションに引っ越ししましたが、自分の理想の家をやっと手に入れたんです。それまでは「タワーマンションに住む」と決めて、逆算をし続ける人生でした。
「将来にタワーマンションに住むためには…?」
「5年後はこうしよう、3年後はこうしよう、じゃあ今年はこうしよう!」
と逆算して目標を立てていたんです。
「雑誌の表紙になりたい。だったらフォロワーがいないとダメだ。じゃあ今月はこれをしよう!」と、どんな目標でも同じです。漠然とした大きな目標だけがあっても努力の方向性が見えなくて苦しいので、達成できそうな小目標を逆算で設定していくことが大事ですよね。
〈文=須崎 千春(@chih_suz)、編集=井手 桂司(@kei4ide_)、写真=狐塚 勇介(@koz_fox)〉
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