働き方改革が叫ばれる昨今。職場で最も苦しい立場を強いられているのは、マネジャーかもしれません。
「残業を削減しよう」「多様な働き方を認めていこう」「メンバーの会社への満足度を上げよう」。でも、業績目標は変わらないし、自分の目標数字もある…。この板挟みに思い悩むマネージャーは少なくないはず。
どうすればマネージャーに寄せられる過度な責任と業務量を減らせるのか? そのカギはマネジメントスキルの向上ではなく、「情報公開する覚悟」だとサイボウズ副社長の山田理さんは言います。朝渋では、その真意を伺いました。
<書き手=井手桂司、写真=北澤 太地>
【山田 理(やまだ おさむ)】サイボウズ株式会社 取締役副社長兼Kintone Corporation 社長。大阪外国語大学を卒業後、1992年に日本興業銀行入行。2000年にサイボウズ株式会社入社。2014年グローバルへの事業拡大を企図しUS事業本部を新設、本部長に就任。同時にシリコンバレーに赴任。サイボウズ式ブックスより『最軽量のマネジメント』を出版。
情報を公開する「覚悟」から全ては始まる!
山田さん:
現在ほど、マネジャーにとって困難な時代はありません。上からの指示の意図を汲み取り、下に対しては納得させ、コーチングし、ティーチングし、メンタリングする。もちろん、個人の成果も出しながらです。
そんなパーフェクトヒューマン、どこにおんねんって感じですよね(笑)。
山田さん:
僕は、マネージャーがメンバーを全て把握し、管理するなんて無理だと思います。
サイボウズでは、マネージャーに責任を背負わせるのではなく、団体戦で戦うことに決めました。そのためには、メンバーが主体的に動く「自立」が求められます。
いやいや、メンバーの主体性を生み出すのが難しいんだよ…と思われたかもしれません。でも、それはやり方に問題があるんです。大切なのはマネジメントスキルではなく「情報の公開」。もっと言えば、情報を公開する「覚悟」を持つこと。
経営者やマネジャーの立場からすると、情報を渡すって、めちゃくちゃ覚悟が要りますよね。これまで明らかにしていなかった事業戦略や財務状況を公開すれば、ウソやごまかしはできません。
ただ、メンバーの視点から見れば、どうでしょうか。情報を公開してもらえることは「あたなを頼りにしています」と言外に伝えるのと同様です。情報をオープンにしていく。これがマネージャーの仕事を軽量化する第一歩です。
不満や不安が見えると、驚くほど仕事は軽量化される!
山田さん:
情報公開にあたり、サイボウズで大切にしているキーワードが「質問責任」と「説明責任」です。
山田さん:
職場で変な噂や陰口が生まれる原因は、情報の不足です。だから、前提として、情報はすべて公開します。ただ、何が知りたいかは、一人ひとりバラバラです。
だから、もしわからないことがあったら、裏でコソコソ言うんじゃなくて、各メンバーの質問責任としてぶつけてください。で、質問を受けたら、マネジャーは説明責任としてきちんと答える。このほうがお互い楽ですよね。
とはいえ、せっかく質問しても、いい加減な説明をしたり、やり込められたりすると、この風土は根づきません。だから、質問する時は、グループウェアなどオープンな場で実施したほうがいい。そこで、マネジャーがいい加減な受け答えをしたら、その事実をみんなが知ることになります。
これを繰り返して、メンバーの「不満や不安」が見えてくると、驚くほどマネジャーの仕事は軽量化されます。
マネジャーにとって一番怖いのは、メンバーの持つ「不満や不安」が見えないことです。わからないから、いたずらに考えてしまう。見当違いな施策を打ってしまう。会議や打ち合わせを増やしてしまう。これらが失くなるだけで、どれだけの価値があるでしょうか。
マネージャーは自ら発信することを意識しよう!
山田さん:
メンバーの質問責任を活発化させるため、僕からのオススメがあります。
それは、マネージャー自らが自分の考えを社内に「発信」することです。
山田さん:
僕は、社内向けのブログをずっと書いていました。毎朝8時から1時間、スケジュールにブログを書く時間を加えたんです。
記事の内容はさまざまで、「マネージャーの役割」「責任の取り方」といった仕事の本質的なことから、「なぜ社内で挨拶が大切なのか?」といった比較的ゆるいことまで、自分の考えを書き綴りました。
そうすると、メンバーから「ブログに書いてあった、あのことについてなんですけど…」とか、「あれを読んで、僕も考えてみたんですけど…」という声を聞くようになりました。
マネージャーはブログを書くほどヒマじゃない…? もちろん、やらなきゃいけないことが山ほどあるのはわかります。でも、だからといって、課題を自分ひとりで抱え込むと苦しくなります。
課題というのは、オープンにした時点で、もう解決に向けて走り出してます。マネジャーが課題を棚卸しにすることは、メンバーにとっても、チームに所属している実感を得られるキッカケになるんです。
ブログでも、メルマガでもいい。是非、マネジャーは、自ら発信することに取り組んでみてください!
「最軽量のマネジメント」をもっと学びたい人へ
「チームワークあふれる社会を創る」の理念のもと、「100人100通りの働き方」を提唱し、社員のライフスタイルに合わせた「週4勤務」「リモートワーク」など、新しい勤務体系を確立しているサイボウズ。
今でこそ「働きがいのある会社」に選ばれるなど、働き方改革のパイオニア企業として知られるサイボウズですが、今より14年前の離職率は28%。2週間に1度は送別会がおこなわれるような「超ブラック企業」だったそうです。
そんな状態から脱却するまでの道のりと、サイボウズがたどり着いたマネジメント手法をまとめたのが、山田理さんの著書『最軽量のマネジメント』です。
マネージャーに全てを背負わせない。軽やかに、楽しくチームで働くためのヒントがたくさん詰まった一冊になっています。マネジメントに悩む人は、是非、読んでみてください!
<書き手=井手桂司、写真=北澤 太地>
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