世の中で「好きなことを仕事にしよう!」というキャリアアドバイスはよく聞きます。そうアドバイスをもらうと「自分の好きってなんだろう?」「好きを仕事にしてうまくいくんだろうか?」と悩みますよね。

それに対し、サイエンスライターで『科学的な適職〜4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方〜』を執筆した鈴木祐さんは「無理やり好きなことを仕事にしようと焦らなくても大丈夫」 と、過去に読んだ10万本の科学論文のデータをもとに励まします。

自分の「好きなこと」にとらわれずに仕事と向き合うには、どう行動すれば良いのでしょうか。朝渋では、鈴木さん自身の歩んできたキャリアを振り返りつつ、教えていただきました。

〈文=村上 未萌、写真=井手 桂司〉

 

鈴木祐(すずき・ゆう)科学ジャーナリスト。1976年生まれ。慶應義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立。現在はヘルスケアや生産性向上をテーマとした書籍や雑誌の執筆、セミナー講演を手がけ、メンタリストDaiGoへのリサーチ協力もしている。自身のブログ「パレオな男」も更新中。

 

仕事は努力を続けるうちに楽しくなって、好きになるもの

なんとなく「好きなことを仕事にすればうまくいくだろう」と思っている人は多いのではないでしょうか。 実は好きなことを仕事にしても、幸せは長続きしません。 

というのも、 自分の好きなことを求める気持ちが強いと、そのぶんだけ現実の仕事に対するギャップを感じやすくなるんです。 たとえば、仕事で対人トラブルなどが発生したときに「もしかしたらこの仕事は向いていないかも…」と不安になって、モチベーションが大きく上下するとか。

僕にとって 適職とは「自分の幸福が最大化される仕事 だと考えています。仕事の悩みの根っこには「幸せに暮らしたい」という欲望があるのに、好きなことをした結果、不幸になってしまったらどうしようもないですよね。

いっそのこと 「仕事は仕事」と割り切って、日々努力を続けていくうちに好きになれると考えてみる のはどうでしょう。仕事で時間をかけて努力を積み重ねていくと、注いだリソースの分だけ、情熱が後からついてくるものです。

だから「何となくやってたら楽しくなってきた」という感覚で仕事をすれば、小さなトラブルが起きたときも「仕事とはこんなものだ」と気持ちの整理がつきそうですよね。

「仕事は仕事」と割り切って、たまにある楽しさを味わう

2019年12月に出版した 科学的な適職〜4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方〜は、編集の方が「鈴木さんの適職をテーマにした原稿を読みたい」と熱心に持ちかけてきてくださったことがきっかけで始まりました。「データはいっぱいあるし、書けそうなテーマかな」と思ってやってみたら、情熱が後からついてきました(笑)。

僕はこの本を書くまで、キャリアプランを立てたこともなければ、適職がどういうものかすら考えたことがありませんでした。 今の仕事を適職だと感じる瞬間はなくて、文章を書くのは嫌いだし、論文を読んでいるのもすごくつらいけど、たまにとても楽しい瞬間があるのは、つらい瞬間があるからこそだと感じています。

これまでの自分を振り返ると、今回の本の経緯と同じように「仕事は仕事」と割り切ってキャリアを選択してきましたね。僕は本当に流されて生きてきて、自分の選択に思い入れが無いんです。

大学4年の秋に就職活動を始めて、たまたま出版社の求人を見かけ、応募したら受かりました。何の目標も持っていなかったのでその1社しか受けず、直感で決めました。そのうち出版不況で暇ができて、興味のなかったブログを始めてみたら、メンタリストのDaiGoさんと出会い、いろいろと環境が変わりました。

仕事として割り切って考えながらも、自分のリソースを投下して、できる範囲を増やす努力をしたことが、現在の仕事に繋がっていますね。

 

小さなリスクを意図的に取って「好き」以外の選択肢を見つける

仕事を「好きなこと」で選ばずに「仕事は仕事」と割り切るには、好きなことと現実の仕事に対するギャップを埋めることが必要です。そういうときは 普段の自分ならば、好きなことだと思わないものをあえてやってみると良いかもしれません。

たとえば、自分自身にこんな問いかけをしてみてください。

・肉体や健康に、日常的にどれだけ負荷をかけているか。
・ちょっと嫌なことを、日常的にどれくらいできているか。
・人間関係に幅を持たせるために、負荷をかけているか。
・自分のスキルを伸ばすために、投資をしているか。
・新しいことを学ぶために、どれだけ負荷をかけているか。

 

これらの答えを頭に浮かべると、今の自分に足りていない行動が見えてきますよね。 まずはそのなかから、週1回のペースでできそうな行動を、ひとつだけ考えてみましょう。 

ポイントは、気持ちが萎えて続けにくくならないように、自分に「ちょっとだけ」負荷のかかる行動を選ぶこと。僕の場合は、生まれつきの人見知りでずっと自宅にこもって作業をしているから、週に1度は外に出て人と会うようにするとか。

こうして 小さなリスクを意識的に取り続け、「好きなこと」以外に選択肢の幅を広げていけば、だんだん現実の仕事に対するギャップが埋まり、自分の幸福度が高まるのではないでしょうか。

 

「好きなこと」にとらわれずに、自分だけの適職を選びたい方へ

イベントの質疑応答で「仕事選びの場面で『好きなことを仕事にすればうまくいく』と思いこむのは、誰もがハマりがちな定番のミス。 自身の価値観やライフスタイルを組み込んだ『自分だけの適職の選び方』を見つけて、幸福度を上げていくことが大切です 」と語ってくださった鈴木さん。

著書『科学的な適職〜4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方〜』では、もう迷わない!後悔しない!選択肢が多い時代の人生設計術について、科学的根拠・エビデンスに基づいた鈴木さんの判断軸がたっぷり書かれています。

将来のキャリアを不安に思いつつ、なかなか日常の行動を変えていく一歩を踏み出せない方にとっても、自分だけの適職を選ぶための背中を押してくれる一冊です。

〈文=村上 未萌、写真=井手 桂司〉

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