「本当にやりたいこと」を仕事にするのは難しいと感じている人は多いのではないでしょうか。

自分には特筆すべき才能もないし、チャンスがないからやりたいことができないと諦めてしまうこともあるかもしれません。

著書『「畳み人」という選択 「本当にやりたいこと」ができるようになる働き方の教科書』で、幻冬舎の設楽悠介さんは「やりたい仕事ができるようになるための最良のルートは、畳み人のスキル(仕事を着実に実行する力)を身につけることだ」と断言しています。

畳み人としてビジネスの基礎を身につけるマインドセットを設楽さんにお話いただきました。

【設楽悠介(しだら・ゆうすけ)】幻冬舎「あたらしい経済」編集長/編集本部コンテンツビジネス局次長1979年生まれ。マイナビを経て、幻冬舎に入社。同社でコンテンツビジネス局を立ち上げ、電子書籍事業・WEBメディア事業・コンテンツマーケティング・新規事業等を担当。仮想通貨・ブロックチェーンに特化たメディア「あたらしい経済」を創刊し編集長に。マンガ出版の幻冬舎コミックス、CAMPFIREとの合弁会社エクソダス、その他関連企業の取締役を複数社兼務。またエン・ジャパンの新規事業「pasture」をはじめ、複数企業の社外アドバイザーも務める。

個人としてNewsPicks 野村高文氏とのビジネスユニット「風呂敷畳み人」を組み、Voicyで「風呂敷畳み人ラジオ」の配信や「風呂敷畳み人サロン」など、数々のビジネスコンテンツを発信。イベント登壇やメディア出演も多数。またサウナ好きがこうじて「サウナサロン」も主宰。2020年2月に初の著書『「畳み人」という選択 「本当にやりたいこと」ができるようになる働き方の教科書』をプレジデント社より発売。

Twitter:@ysksdr

〈文=関戸大

 

「畳み人」としてビジネスの基礎を身につける

みなさんは仕事で「本当にやりたいこと」ができていないと焦ることはありませんか?

世間には成功者のストーリーやノウハウが書かれたビジネス本が溢れています。そこに書かれている刺激的なストーリーやノウハウは確かにためになるものが多いですが、それを読むタイミング次第では特効薬のように効く場合もあれば、逆に毒になってしまうこともあります

 

毒になってしまうのは、成功を焦るあまりビジネスの基礎を身に付けることを怠ってしまうからです。「本当にやりたいこと」を仕事にするためには、目の前にある仕事で少しでも成果が出るように実行しビジネスの基礎を身に付けていくことが、実は一番の近道だと僕は自分の経験から感じています。

上手く行っているプロジェクトには、リーダーとして仕事のアイデアの大風呂敷を広げる「広げ人と、その隣でアイデアを着実に実行し形にする「畳み人がいます。どうしても「広げ人」に脚光があたるから、みんな一足飛びに「広げ人」の派手な成功を目指してしまいますが、実は畳み人」こそが「本当にやりたいこと」につながる働き方の選択です

 

貢献できる目の前の仕事で成果を上げる

僕は2002年にマイナビに就職しました。学生の頃から編集者になりたいとずっと思っていましたが、マイナビでの配属は求人広告の営業部でした。編集がしたくて転職も考えましたが、新卒で就職したばかりの僕にいい条件の仕事はなく、僕は目の前の営業の仕事を頑張ることにしました。

僕は勝手に営業の仕事はダサい、とその当時思っていたのですが、やってみると非常に魅力的な仕事であることが分かったんです。そして次第に営業の仕事にのめり込んで行きました。またネットの広告商材を仕事で扱っていた流れから、プログラムに興味を持ち、独学で勉強してwebデザインなどの副業も始めていました。

その後、幻冬舎に転職することになるのですが、そのきっかけも営業で売上を上げるためでした。マイナビ時代に幻冬舎に営業をかけていたのですが、アポイントも取れませんでした。だから採用試験に受ければ担当者に会えると思って応募したんです。そこで内定をもらって正直悩みましたが、元々編集をしたかったので転職を決断しました。

しかし幻冬舎に転職しても配属されたのは営業部でした。そこで僕は営業部にいながらマイナビ時代に学んだwebデザインやプログラムの知識を生かして、部署のイントラネット(社内サイト)を制作しました。当時の幻冬舎は社内のシステムが非常にアナログだったので、そこで自分のスキルが貢献できると思ったのです。

そうしたら「何やらインターネットに詳しい奴が転職してきた、プログラムもできるらしい」と社内で評判になり、それをきっかけに社内のネット系の仕事がどんどんと舞い込むようになりました。そして気がついたら自分が関わっているネット系の仕事で、書籍を編集するチャンスも得ることができたのです。

今振り返るともし僕が初めから「編集がしたい、本を作りたい」と、それ以外の仕事を拒んでいたら、編集者になっていなかったかもしれません。不思議なもので、目の前にある仕事で少しでも貢献して成果を出そうとがんばった結果、「本当にやりたいこと」が仕事になりました

 

チャンスが来ていないことがチャンス!

 僕はこうしてチャンスを掴みましたが、みなさんにもきっとチャンスは訪れます。どんな人にも何度かは大きなチャンスが来るものです

大切なのは、そのときにコンディションが整えられているか。当たり前ですが「後1週間でチャンスが来ますよ」「3日後ですよ」と事前に知らされることはありません。チャンスはいきなりやって来ます。

そのときに、ベストなコンディションでチャンスを迎えるためには、ビジネスの基礎といかなる仕事でも実行できる力がしっかり身に付いていることが一番大切です。

そして役に立たないと感じていたスキル経験も必ずそういったときに自分を助けてくれるものです。僕もプログラムができたことや、営業でのビジネス経験が現在の編集という仕事に役立っています。


でも焦ってしまいますよね。多くのビジネス書は成功のストーリーで溢れているし、「今これをやるべきだ」というノウハウなどもたくさんある。さらにSNSで知り合いの活躍は日々飛び込んでくるわけです。

でもそれらに踊らされてしまって本質的なビジネスの力が備わってないと、チャンスが来たときにちゃんと打ち返せません。

もしみなさんにまだチャンスが訪れていないなら、それこそがチャンスです。その間に鍛えること、ビジネスの基礎と仕事を実行する力を身につけることができます。

一見自分には無駄に見える仕事でも、まずは実行する、そして誰よりも少しでもいい成果を出すことを頑張ってみてください。そうすればきっとチャンスが不意に自分に訪れた時にも動じない強いビジネスの力がついているのに気付くはずです。

まずは畳み人として「焦らず、目の前のことを真剣に実行する」という選択をしてみてはどうでしょうか。それがきっと、みなさんの「本当にやりたいこと」につながると僕は信じています。

 

あらゆるビジネスの教科書

設楽さんの著書「畳み人」という選択 「本当にやりたいこと」ができるようになる働き方の教科書には、仕事のアイデアを実行に移すためのスキルと考え方が詰め込まれています。「畳み人」のスキルはどんな仕事にも通用する大切なビジネススキルであるとのことです。

現場で仕事を実行に移す「畳み人」はもちろん、将来起業したいと考えている「広げ人」にも読んでいただきたい、あらゆるビジネスの教科書となる一冊です。

情報過多な時代の中で、焦らず目の前のことに篤実に取り組む大切さを、この機会に見直してみてはいかがでしょうか。

〈文=関戸大

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