「僕は、『絶対に倒産する』と言われたOWNDAYSの社長になった。」
売上20億、負債14億、赤字2億と倒産寸前だったメガネチェーン店OWNDAYS。
そのOWNDAYSを若干30歳で買収し、10年間で売上150億、世界10カ国に進出するまでの成長に導いたのが、代表取締役を務める田中修治さんです。
田中さんがOWNDAYSに社長として就任してから降りかかる様々な試練を、無謀とも思えるアイデアと、苦楽を共にする仲間たちと一緒に乗り越えていく再生物語を小説としてまとめたのが『破天荒フェニックス オンデーズ再生物語』。
この破天荒フェニックスに書かれている内容が、まるでドラマや映画のようなエピソードばかりで、「こ、これ、本当に実話をもとにしてるの…!?」と思わず疑ってしまうほど。
買収当時、誰もが無謀だと口を揃えて言った決断に対して、田中さんはこう答えていました。
『俺みたいに、会社も小さくて資金も信用もない若い経営者が、大きなチャンスを掴む為には、皆んなが嫌がるような案件、ちょうどこのOWNDAYSみたいな、燃え盛る火の中に自ら進んで手を突っ込んでいくようなことでもしないと、なかなかそんなチャンスは掴めないでしょう?』
破天荒なチャレンジを繰り返えす田中さんが、様々なピンチを踏ん張り抜いた背景にあるものは、何なんだろう?
そんなことを聞いてみたく、朝渋では、田中さんをゲストに「著書と語る朝渋」を開催しました。当日は参加者100名を超える超満員!モデレーターは、朝渋メンバーの井手桂司が務めました。今回は、その模様をお届けします。
田中修治(たなか しゅうじ)さんのご紹介
(photo by 矢野拓実)
田中修治さん
OWNDAYS 代表取締役社長
10代の頃から起業家として活動。2008年に巨額の債務超過に陥り破綻していたメガネの製造販売を手がける株式会社OWNDAYSに対して、個人で70%の第三者割当増資引き受け同社の筆頭株主となり、同時に代表取締役社長に就任。2013年にはOWNDAYSシンガポール法人、2014年にはOWNDAYS台湾法人を設立し、同社代表取締役社長に就任。
現在、11か国260店舗(2018年9月現在)展開し、独自の経営手法により、事業拡大と成長を続けている。
「社長、見直しました」とよく言われます(笑)
井手:今日はよろしくお願いします!「破天荒フェニックスが面白い」といったツイートを毎日のように見るのですが、書籍の出版による反響はいかがでしょうか?
田中さん:そうですね。今、だいたい3万部くらいなんですよ。これくらいSNS上で話題になると、ビジネス書のジャンルで出していれば、もっと売れてもおかしくないそうなんですね。小説は読んでもらうまでのハードルが高いなぁと感じています。
ただ、ありがたいことに、読んでくれた方がすごく話題にしてくれていますね。そのおかげもあって、求職者が増えました。これは狙いの一つだったので、良かったです。
井手:社内の反響はどうですか?
田中さん:もしかすると社内からが一番反響が大きいかもしれないですね。「社長、見直しました!」とよく言われます(笑)
井手:OWNDAYSの社員さんからしても、知らないことが多かったんでしょうか?
田中さん:もちろんです。資金ショートで倒産しそうとかって、社員が知ってもどうしようもないことが多いじゃないですか。なので、一部の経営層にしか共有していませんでした。ヤバい時も社員の前では平然とした顔で過ごしてましたね。
ただ、どっかで「実は、あの時、ヤバかったんだよ」と言いたい気持ちもあって(笑)
今のOWNDAYSは会社の状況も健全になってきたし、そろそろ言ってもいいかと思ったんですよね。
井手:なるほど(笑)。破天荒フェニックスには、お金に関して本当に生ま生ましい部分までしっかりと描かれていると思うのですが、こういった物語を書籍化しようと思われた理由は、なんなんでしょうか?
田中さん:今、OWNDAYSは銀行取引も正常に戻って、海外でも店舗数が増えている状態なのですが、まだまだ日本国内のプレゼンスは弱いと思っているんですね。他のメガネ屋さんの方が、圧倒的に強い状態です。
一昨年くらいから、どうやって日本国内で存在感を高めていくかを真剣に考えています。ただ、今さらモデルやアイドルを使ったTVCMを展開しても他社さんと一緒になってしまう。
そこで、僕たちにはすごく面白い物語があるんだから、まずはそれを広く知ってもらおうと思ったんですね。そしてファンになってもらおうと。
正直、メガネ業界って、価格や機能面でそんなに大きな差別化をつくるのが難しい。どこで買っても、そんなに大きくは変わらない。だから、情緒的価値で差別化をつくっていくことが大切なんだと思います。
「どうせ買うなら、絶対OWNDAYSがいい」
そう思ってくれるOWNDYASのファンをまずは増やすということが大事だと思っていて、そのファンづくりの一環として、書籍を書きました。
自分の上司は、自分で決めよう。
井手:僕も破天荒フェニックスを読んで、すっかりOWNDAYSに魅せられてしまった者のひとりなのですが、Twitterで破天荒フェニックスやOWNDAYSについてツイートをすると、田中さんをはじめ色んなOWNDAYS社員さんからファボがもらえるんですよね。
破天荒フェニックスに登場する奥野さんだったり、濱地さんだったり、登場人物からファボられるって、スゴい体験だと思いました。
田中さん:会いに行けるアイドルではなくて、絡んでくる社長を目指しています(笑)
OWNDAYS社員には、「OWNDAYSの〇〇さんから買うではなく、〇〇さんのいるOWNDAYSから買う」といった状況を目指して欲しいと話していて、個人のSNS活用も奨励しているんです。なので、みんな、自発的にやってくれてますね。
井手:この破天荒フェニックスを読んでいても、社員の皆さんの熱量がどんどん高まっていくのがとても印象的なのですが、僕がすごく衝撃を受けたのが、OWNDAYSさんの社員総会である「OWNDAYS SUMMIT」の映像なんですよ。ちょっと、それを見てましょう。
井手:やばくないですか(笑)年々、演出がグレードアップしているそうです。
田中さん:完全にミサですよ、ミサ(笑)
井手:社員の方だけでなく、お客さんも会場にいるというのがスゴいですよね。なんと自腹で駆けつけているそうです。
このSUMMITのダイジェスト映像は全部で17分くらいあって、「長っ!」と思うんですが、見始めるとコンテンツが盛りだくさんでずっと見てしまって、しかもすごく感動するんです!
特に、社内の役職者を決める最終投票がSUMMITで行われるんですが、そこの盛り上がりがスゴい…。
OWNDAYSさんでは、「自分の上司は自分で選ぶ」という社内選挙制度があるので、その制度の説明用のムービーも見てましょう。
井手:この社内選挙制度は、どういう背景で始められたんですか?
田中さん:会社に派閥を作りたくないと思ったんですよね。
自分の父親も会社をやっていて、300人くらいの規模でしたが、それでも派閥がありました。人事移動で違う派閥の部署に行くからゴルフを始めないといけないとか、酷いところだと、ガンダムで会話をしないといけない派閥なんてものもありました。
やりたくてやっているなら良いけど、自分の上司にあわせるために休日にゴルフをやるとかって嫌じゃないですか。
誰かに人事権を与えると、そこに派閥が生まれてしまう。だったら、僕も含め人事権を持たずに選挙で決めよう。それだけ、なんですよ。
井手:選挙制度を導入した時の、社内の反応はいかがでしたか?
田中さん:もう、「はぁ〜??」といった反応がすごかったです。どうせ役職者になる人は決まっていて、茶番のようなものでしょと穿った目で見られていました。
でも、目の前で当選して泣いているメンバーや、落ちて落胆しているメンバーを目の当たりにすることで、これは本気でやっているんだと伝わっていきましたね。
井手:でも、選挙に落ちた方は、相当ツライですよね。
田中さん:もちろんです。自分が育ててきた部下に、公衆の面前で負かされるわけですから。実際、辞めていってしまうメンバーもいます。でも、任期は1年なので、悔しいと思ったら来年またチャレンジすれば良いんです。
ベテランが辞めてしまうリスクもありますが、一方で、若いメンバーでもやる気次第で大きなチャレンジに取り組むことができる。このトレードオフなんです。
僕は、社内の新陳代謝を活性化したいと思ったので、この制度を導入して良かったと思いますね。
意識しているのは、スタッフが納得できているか。
井手:破天荒フェニックスの中にも「倒れる時は前向きに」と言う言葉が繰り返し出てきますが、OWNDAYSの社員の方々は仕事をすごく前向きに取り組んでいる印象があります。
スタッフのモチベーションを高めるための秘訣のようなものがあるのでしょうか?
田中さん:そうですね。特に意識をしているのは、スタッフが納得ができているかどうかということです。
会社や仕事に対する不満というのは誰でも持っている思います。でも、不満を取り除いても意味がない。不満なんて、個々人のさじ加減で、次々と出てくるし。
だけど、不満はあるけど、納得はできているという状態なら作れると思います。
「なんで、あんな人が部長なのか?」、「なぜ、あんな奴が店長なのか?」という質問があったとします。これって不満だし、納得もいっていないんですよ。こういう状態だと、前向きに働くなんて難しいですよね。
でも、選挙で役職を決めれば、当選した人に不満はあるかもしれないけど、決めるプロセスには納得ができている。だとすると、頑張って不満を解消するか、それを受け入れるかの二択しかない。
「なぜ会社はこんなことをやるのか?」
「なんで社長はこんなことを急にやれというのか?」
新しいことを始める時には、社員に納得してもらうための説明はすごく意識してやっています。
井手:社内広報というか、社員とのコミュニケーションは、すごく意識的にやられているんですね。
田中さん:そうです。隔週のペースで社内向けのメルマガを書くし、ほぼ毎日Facebookで自分の日記のようなものをアップし、Twitterで今何をやっているかを報告し、自分の考えについてはブログにまとめて公開。
そこは、かなり力を入れてますね。
井手:一方で、田中さんのブログを読むと、「悩んでそうな人がいても放っておく」ともおっしゃっていました。これは、どういう意図があるんでしょうか?
田中さん:こちらから声をかけてしまうと、声かけ待ちになってしまうんですよね。
なんとかして欲しいなら、「なんとかして欲しい」と言わないと、なんとかならないと気づいて欲しい。もちろん、何も言わずに辞めていってしまう人もいる。でも、それは仕方ないと思ってます。
これを言うと、冷たいとか言われるんですよ。
でも、悩んでることを察して、こっちから助けに行くと、助けられることを期待してしまう雰囲気が生まれてしまいます。ただ、全員に対して、助けを差し伸べるなんて到底できやしない。その中で、救えないメンバーが出てきてしまう方が不幸だと僕は思います。
その代わりに、自分から助けてほしいと動いてきたメンバーはちゃんと救う。だから、助けてほしいんだったら心に秘めずに動こうと言っています。
セクハラでも、パワハラでも、社長への質問でも、窓口は設置しているんです。あとは、社員の行動次第です。
井手:社員一人ひとりの自立を、すごく重視しているんですね。
自分をバカにしてきた人たちに感謝。
井手:破天荒フェニックスの中で、投げ出したくなるようなピンチの連続の中でチャレンジを続けられているわけですが、田中さんを突き動かしているものとは何なんでしょうか?
田中さん:いや、正直、特に大層な理由とか目的なんてないですよ。みんな、チャレンジすることに目的とか意味があると思いたいんでしょうね。
井手:でも、3億円ショートしそうとか、何度もヤバいタイミングがあるわけじゃないですか。そういう時は、どうやって気持ちを奮い立たせるんですか?
田中さん:そういう時は、嫌なヤツの顔を思い浮かべます(笑)
僕は結構根暗なんですよ、根が。だから、バカにしてきた人のことをネチネチ覚えているんですね。18歳の時に振られた女の子とかもいまだに覚えているんです。「今頃、俺のことを振ったのを後悔してるだろうなぁ…」とかニヤニヤしていたりするんですよ。ヤバいでしょ(笑)
僕がOWNDAYSに入った時、すごく批判されたんです。2チャンネルで叩かれたり。「俺は身銭を払って助けにきたのに、なんで叩かれなきゃいけないんだよ」ってイライラしたりもしました。結果、結構な人が辞めていきましたね。
でも、辞めていってしまった人を見返す一番の方法は、「辞めなきゃ良かった」って思わせることだと思うんです。
苦しい時に仲の良い人に相談しちゃうと、「そんなに頑張ったんだから、やめてもいいよ」とかって、逃げることを許容してくれちゃうんで、そうすると、自分も甘えてしまう。
だから、しんどい時は、自分をバカにしてきた人たちの顔を思い浮かべて、「今ここでやめると、こいつらが喜ぶな」と思うと、頑張れるんです。
今思うと、自分をバカにしてきた人たちに感謝ですね(笑)
やっと、打席に立てたという感覚。
井手:会場から、田中さんがどういった10代や20代を過ごして、30歳のタイミングでOWNDAYSで勝負をかける決断について至ったのかを知りたいという質問がきていますので、これを最後にお答えいただけますか。
田中さん:そうですね。自分の父親も経営者で、父が会社を大きくしていく姿を見て、自分も経営者としてやっていきたいという気持ちがありました。
そこで20歳くらいの時から、自分で会社を立ち上げて、お金を稼ぐことを覚えていき、自分もそこそこイケてるなぁと思っていたんです。
そんななか、自分が25歳くらいの時に、堀江さんたちが世の中に出てきて、「こんな人たちがいるんだぁ…」と衝撃を受けたんですよね。テレビ局を買収しようとするなんてスゴい。自分もそういう大きなことを仕掛けてみたいと。
そこで、自分も六本木に引っ越して、いわゆるヒルズ族って感じて、ワーワーやっていたんです。
でも、そう思っているうちに、堀江さんが逮捕されて、そういう変化の機運も静まって…。
ただ、次に世の中が変化する時には、自分も何か仕掛けたいとずっと思っていたんです。
そこで、30歳の時にリーマンショックが来て、OWNDAYSの倒産案件が出てきた時に、「今だ!」と思ったんですね。
井手:なるほど。OWNDAYSの買収の背景には、25歳の時に出会った堀江さん達の影響が大きいんですね。
田中さん:やっぱり僕らはそういう世代なんですよ。僕と同年代で上場しているIT会社の創業者も多いんです。彼らが隣でバリバリやっている姿をみて、劣等感みたいなものも正直ありました。
井手:そうすると、今、やっと打席に立てたという感覚ですか?
田中さん:はい。諦めずにやっていて良かったと思っています。
井手:そういう意味でも、これからのOWNDAYSに注目ですね。
田中さん:そうですね。これからのOWNDAYSに注目してもらいたいですね。
僕たちは、メガネ屋にとどまらず、色々な事をやっていこうと思います。
今年はそのための下地作り。来年は会社として世の中に知っていただくために、色々と仕掛けていきたいと考えています。
そのためにも、まずは皆さんにOWNDAYSのメガネを買ってほしい(笑)そこから始めてほしいと思っています。今日は、ありがとうございました。
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以上、『破天荒フェニックス オンデーズ再生物語』の著者でもあり、OWNDAYS・代表取締役でもある田中修治さんをゲストに迎えた「著書と語る朝渋」のレポートとなります。
破天荒と言われる田中さんですが、その裏には、社員や会社にこうあってほしいという愛が強くあるように感じました。
ファンをつくるには、まずは自社の社員が自社の熱狂的なファンになることが大切とよく言われますが、OWNDAYSはその最先端をいっているように僕は思います。
これからのOWNDAYSに注目していきたいですね。
田中さん、朝早くから、ありがとうございました!
Text by 井手桂司(@kei4ide)
Photo by 矢野拓実(https://takumiyano.com)
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