普段は、「朝渋」の運営としてモデレーター側にいることの多い西村創一朗さん。
著書「複業の教科書」をこのたび出版したことで、はじめて著者側の席に座ることに。ご本人も「新鮮だ」と仰っていました。
記念すべき著者イベント50回目ということもあって、ファシリテーターを努める朝渋代表・井上と共に、感慨深い気持ちを分かち合っている様子が見受けられます。
複業研究家として活動する西村さんが今回上梓された「複業の教科書」は、複業したいけれども何をやったらいいか分からない人のための、道標のような1冊です。
本業だけでは得られないキャリアが得られる「複業」。
その魅力について伺いました。
著者紹介
西村創一朗さん(にしむら・そういちろう)@souta6954
元・株式会社HARES代表取締役社長。
現在は独立して約1年。
複業研究家として働き方改革を掲げてコンサルティング業務などに従事。
著書「複業の教科書」を上梓。
「複業」の意義を問い直す
はじめに、皆さんに訊きたいことがあります。
88%という数字、副業に関係のある数字なんですが、一体何の数字だと思いますか?
これは、エンジャパンの副業実態調査で分かった、「副業に興味がある人の割合」です。いかに副業ブームが凄いかを表している数字ですね。
そして、「副収入を得るために副業をはじめたい」と思っている人の割合が、83%。
本業とは別の収入を得て、ちょっと楽して稼ぎたいなと思っている人も多いのかもしれません。
でも、それでいいんでしょうか?
副業ブームの今だからこそ、「複業」の意義を問い直したい。
そう思ったのが、この本を書いたきっかけです。
「副業」と「複業」の違い
複業と複業には、明確な違いがあります。
どちらも本業とは別に仕事をして、お金を得るという営みですが、「副業」はあくまでサブ的な扱い。時間の切り売りをして、副収入を得ることが目的です。
それに対して「複業」は、自己成長と価値貢献に重きを置いています。
本業以外の仕事をすることで、経験やスキルを積み、繋がりをつくることで自身の市場価値を上げる。その対価としてお金を得るという考え方です。
ぜひ皆さんには、「時間の消費」という考え方から、「時間の投資運用」という考え方へシフトしていってほしいと思っています。
時間という資源を投資する、というイメージですね。
複業のメリットは?
複業をするメリットは、全部で5つあります。
まずは、スキルアップ。
本業ではできない仕事をして、新しいことを学び、自分の価値を上げられます。
そして、会社ではできないようなやりたいことに挑戦できる。
本業に対するモチベーションにも繋がっていきます。
3つめは、自分の市場価値が高まる(結果的に収入源が増える)。
スキルや経験を積むことで、本業以外で活かせる自分の価値が高まっていきます。
4つめは、かけがえのない仲間との繋がり。
こういった「朝渋」のような場もそうですが、志や価値観が似通った人と繋がれるというのも強みです。
最後に、会社に依存せずに主張できるようになる。
複業をしている人ほど、そこで培ったスキルや経験を本業でも活かして、社内で成長していきます。本業でのキャリアシフトにも繋がっていく可能性が充分にありえる。
会社の外でも意見が通用するようになりますし、会社自体に縋り付くことがなくなるんですね。
複業のデメリットは?
基本的にはメリットしかない複業ですが、強いて言うなら少しだけデメリットもあります。
以下の3つです。
まず、ダラダラ過ごす時間がなくなる。
本業以外の、本来は自由であるはずの時間がなくなります。
可処分時間とも呼びますが、余った時間をつかって複業を進めていくことになるので、余暇時間がなくなるというのがありますね。
そして、プライベートと仕事の境目が曖昧になる。
上記にも通じますが、自分の時間がすべて仕事に注ぎ込まれることになるので、必然的にプライベートと仕事の境目があやふやになります。
ただこれは、現代で言う「ワークアズライフ」という働き方に通じますね。自分自身のキャリアを高めるという意味では、非常に重要な考え方です。
最後に、セルフマネジメント力が必要になる。
複業のための自己管理はとても重要です。時間の捻出をするために、僕はまず「デッドタイム(死んでしまっている時間)」の活用からはじめました。
たとえば、移動時間。往復数時間の通勤時間があるとするなら、その中でできることをする。最初は小さなことからでもいいんです。
あとは、夜、本業が終わってから複業にまつわる作業に手を付けるのではなく、朝にシフトすること。
夜3時間かかることが、朝は1時間で終わったりします。朝の時間を有効活用する意識が大切です。
そもそも、どんな複業があるのか?
いざ複業をはじめようと思っても、「まず何からはじめたらいいのか?」がわからなくて戸惑う方も多いと思います。
主に、複業には以下の3つの型があります。
①趣味型
②プロ型
③企業型
趣味型は、日々自分が好きでやっていることや、習慣化している趣味を複業にする。「好きを仕事に」という考え方ですね。
今で言うなら「YouTuber」などがそれにあたります。
プロ型は、本業を中心に培ってきたスキルを上手く活用する。
専門性を利用していくという方向です。
企業型は、やりたい事業をまずは複業としてはじめて、軌道に乗ってきたら徐々にシフトしていくというパターン。まさにスティーブ・ジョブズの例がそれですね。
自分のやりたいことが明確であるなら趣味型、活かせる専門的なスキルがあるならプロ型がいいと思います。
どうやって複業ををはじめたらいいのか?
まずは、複業に取り組む目的を明確にすることですね。
何のために自分は複業をやるのか。自分自身でも納得できるように言語化するというのは、本当に大切です。
「できること・生かすことを増やす」という目的にするのか?
プロ型のように、本業で培ってきたスキルをまるまる違う職種で活かすのか?
複業を通じてどうなりたいのかという目的は、まさに100人いれば100通りあります。そこをはっきりさせることが重要です。
複業成功の五箇条
本業と同時並行で複業を進めていくにあたって、「複業成功の五箇条」ということで常に気をつけてきたことがあります。
・先義後利(せんぎこうり)
目先の儲けに走らず、きちんと信用を貯めること。
・本業専念
まずは本業でしっかり結果を出すことにこだわること。
複業をやっているからこそ、本業でも100パーセントの結果を出せるように。
・公明正大
人に言えない複業をするのはやめる。
・自己管理
複業のために睡眠時間を削るなど、無理をしてはいけない。
・他者配慮
複業ができているのは、職場や家族の支えがあってこそ。
常に感謝の気持ちを忘れずに、本業に還元できることはないかと考えることも大切。
5年前の複業と、今の複業
井上さん:西村さんが副業を始めた5年前と今と比べて、「複業」に対する世間のイメージや考え方は、どのように変わったと思いますか?
西村さん:僕が元々いたリクルートという会社は、複業そのものにとても寛容な社風だったんですよね。
ブログを開設して、そこにアドセンスのリンクを貼って、「ここをクリックしたら僕にお金が入るのでクリックしてくださいよ」なんて上司に冗談を言える雰囲気だった。
それを友人に話したりすると、「うちの会社では絶対にありえない」なんて言われたりして。
そこから考えてみても、5年前と今とでは大分「複業」に対する考え方が変わったと思います。
複業に興味がある人の割合が88%、複業解禁の企業も3割まで上がってきました。来年2019年は、さらにその勢いが加速するでしょうね。
「最強の複業」朝渋の魅力は?
井上さん:複業のアドバイスをしている中で、「朝渋」の光っている部分や魅力はどこにあると思いますか?
西村さん:「著者と語る朝渋」というイベントが1つの転換点だと思っています。
複業は決して1人でやらないといけないものではありません。
自分の持っている強みと、自分が持っていない強みを持った人を掛け合わせることで、1人ではできない複業ができるんだという、その象徴的な例ですよね。
「朝渋×著者イベント×読書会」という形で、場・コミュニティを作って仲間を作り、強みを掛け算して価値を生む。
それが、これからの複業のスタイルになっていくと思います。
井上さん:最初は複業として「朝渋」をはじめて、紆余曲折ありつつ今は本業として力を入れていますが、西村さんから見てどんな部分が要因で良くなっていったと思いますか?
西村さん:最初からお金・利益を目的にしていなかったことですよね、やっぱり。
複業を進めていく中で、人との繋がりはとても重要です。
最初は「提供できる価値なんて持っていない」と思い込んでしまいますが、全ては繋がりからはじまっていきます。
自分からこういったコミュニティに飛び込んで、「何か役に立てることはないか?」と自身で模索することによって、価値が生まれてくると思います。
井上さん:ありがとうございます。それでは、最後にメッセージをお願いします!
西村さん:複業は、あくまで「人生とキャリアの選択肢」です。
複業をすることが目的になってしまっては本末転倒。「もし今の自分が、会社の看板を外したら?」という思考実験の元、本当にやりたいことをするために、どんな複業ができるか? を考えてみることが大事だと思っています。
年末年始、ぜひこの本で新しい年へのスタートを切るきっかけをつくってください!
複業=人生とキャリアの選択肢。
お金を得ることだけを目的にしてしまうのではなく、自己成長や価値貢献を意識しながら複業をすることで、心も豊かになっていくと感じました。
西村さん、ありがとうございました!
Text by 北村有(@yuu_uu_)
Photo by (@)
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