「マネージャーやリーダーって、メンバーを管理する人と思われがちですけど、管理って結構ツラくないですか…?」
こう語るのは、「チームワークあふれる社会をつくる」を理念に掲げるサイボウズのオウンドメディア『サイボウズ式』編集長・藤村能光さん。新著『未来のチームの作り方』では、藤村さんが経験から学んだチームづくりや、自分らしいリーダーのあり方について語られています。
朝渋では、藤村さんに加え、『北欧、暮らしの道具店』で編集チームマネージャーの津田 麻利江さん。IKEUCHI ORGANICで『イケウチな人たち。』を立ち上げた広報・営業部長の牟田口 武志さんをゲストに、「これからのチームの在り方」をテーマに話を聞いてみました。
〈文=井手桂司(@kei4ide)、写真=矢野 拓実〉
リーダーシップのあり方は、ひとつじゃない。
ー はじめに、書籍『未来のチームの作り方』に込めた想いを、藤村さんから聞かせてもらえますか?
藤村さん
僕がこの本で伝えたかったのは、チームづくりに悩んでいる人に向けて、
「自分らしいチームづくりをしてみませんか?」ということです。
【藤村 能光(ふじむら・よしみつ)】大学卒業後、ウェブメディアの編集記者などを務め、サイボウズ株式会社に入社。オウンドメディア「サイボウズ式」の立ち上げにかかわり、2015年から編集長を務める。複業としてタオルブランド「IKEUCHI ORGANIC」のオウンドメディア運営支援にも携わる。
藤村さん
チームリーダーやマネージャーというと、壮大なビジョンを掲げて、メンバーをぐいぐい引っ張っていくイメージがあるじゃないですか。僕も「サイボウズ式編集長」に就任した当初は、そうならなければいけないと思い込んでいました。
でも、どうあがいても僕には無理だと悟ったんですよね。リーダーシップに関する本を読めば読むほど、自分には向いてないなと。そんな自分を認めたくなかったですけどね。
ただ、このスタイルに囚われる必要はないんですよ。人それぞれに自分らしいリーダーシップがあります。僕はチームを引っ張るリーダーにはなれない。でも、メンバーみんなが自分らしく行動ができて、良いアウトプットを生む後押しをするリーダーにはなれるかもしれない。
そう考えるようになってから、チームで仕事をするのが面白いと感じるようになりました。みんなで一緒にやるほうが、記憶に残る仕事に繋がると実感するようになったんです。
藤村さん
人生においてチームで何かを成し遂げていくことって、圧倒的に多いですよね。仕事においても、仕事以外でも。「チームづくり」は、どんな人にとっても大切です。
そんな中で、僕のようなタイプの人間が、どんなことを考えて、どんな試行錯誤をしながらチームをつくっていったのかを、この『未来のチームの作り方』には書いたつもりです。
この本を読んでくれた人が、「自分らしいチームを作ってみたい」と思ってもらえたら、嬉しいですね。
それぞれのリーダーシップのあり方。
ー 「自分らしいリーダーシップ」の話がありましたが、津田さんと牟田口さんは、ご自身のリーダーとしてのスタイルをどのように捉えてられますか?
津田さん
私にとって、リーダーはクラシコムの経営者である青木と、「北欧、暮らしの道具店」店長の佐藤のふたりなんですよ。だから、私の役割は、ふたりが言っていることをメンバーのみんなが理解したり、納得できるようにするための「橋渡し」だと思っています。
やっぱり、上の人たちの言っていることが腑に落ちないままでは、メンバーから良いアウトプットは生まれませんよね。
【津田 麻利江(つだ・まりえ)】大学卒業後、アクセンチュア株式会社を経て、2013年に株式会社クラシコムへ入社。編集チームのマネージャーとして「北欧、暮らしの道具店」で日々公開される商品ページや読みものの企画・編成・制作管理を担う。現在スタッフ募集中(詳しくはコチラ)。
津田さん
そして、きちんと橋渡しをするために大切にしているのが、「観る」ことです。
青木と佐藤のこともすごく見ているし、チームメンバーのことも見ているし、自分が所属していないチームの様子も見るように心がけています。
とはいえ、見ているだけでは分からないこともあります。たとえば経営陣の意思決定の背景がよくわからないと思えば、今すぐに確認するべきか、もう少し経過を見てから聞くべきかを判断するようにしています。また、メンバーが経営陣の言葉に対して腑に落ちていないと感じたら、そのモヤモヤを解消するために何ができるかを考えるようにしていますね。
ー なるほど。牟田口さんは、いかがですか?
牟田口さん
僕の場合は、「自分で旗を立てること」を現在は強く意識しています。
【牟田口 武志(むたぐち・たけし)】大学卒業後、映画制作会社、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社、アマゾンジャパンを経て、2015年7月にIKEUCHI ORGANICに入社。WEB担当、広報を経て、2019年2月にオウンドメディア「イケウチな人たち。」を立ち上げる。
牟田口さん
IKEUCHI ORGANIC代表の池内はもう70歳を超えています。これまでは、池内が圧倒的なカリスマ性で会社を引っ張ってきてくれたんですけど、いつまでも池内に頼りきってはいけないんですよね。次のIKEUCHI ORGANICをつくっていくためには、僕ら社員一人ひとりがリーダーシップを持って、行動していくべきだと考えています。
僕は今年の2月に『イケウチな人たち。』というメディアを立ち上げましたが、これも経営陣から指示を受けてやったわけではありません。こういう発信をすべきだと僕自身で考えて、自分がリーダーシップを持ってやっていこうと決めました。
ただ、同時に社内のみんなを巻き込んでいくことも意識していますね。独善的なメディアにはしたくないんですよ。だから、社内のメンバーに意見を聞いたり、メディアに寄せられた声を社内共有したりしています。
自分のこうした行動で、社員のみんなが「自分もリーダーシップを持って、行動を起こしてもいいんだ」と思ってもらえたら嬉しいですね。
「管理」って、結構ツラくないですか…?
ー 3人の話を聞くと、「メンバー各自がリーダーシップを持てる状態をどう築くか」を、すごく意識しているように感じました。
藤村さん
そうですね。メンバーの「自立」を促すことは、すごく意識しています。
藤村さん
マネージャーやリーダーと言うと、メンバーを「管理する人」と思われがちなんですけど、「管理」って結構ツラくないですか?
だったら、メンバーにやりたいことを見つけてもらって、自主的に動いてもらったほうがいい。
特に、オウンドメディアの編集チームの場合、メンバーが会社のビジョンや理念に深く共感し、自分から「こういう企画をやりたい」という意見があがってこないと、絶対に良いメディアに育ちません。
だから、津田さんが言ったように、僕も「観る」をとても大切にしていて、みんながどういう気持ちでいるかを常に気に掛けるようになりましたね。
津田さん
メンバーの自立をサポートするといえば、毎週やっていたチームミーティングを最近やめたんですよ。その代わりに、一人ひとりとの「1on1ミーティング(以下1on1)」を増やすことにしました。
チームメンバーといっても、ベテランのメンバーもいれば、入社して間もないメンバーもいます。全員一堂に同じコミュニケーションではなく、一人ひとりと向き合ったコミュニケーションをとることが大切なのではないかと思ったんですよね。
藤村さん
僕も1on1はすごく大事にしてますね。編集チームには現在6人のメンバーがいますが、週1で全員と30分間の1on1をしています。
そこでは、仕事の話をしないといけないわけではなく、雑談も全然OKです。『アラジン』をみて超楽しかったという話で終わったこともあります(笑)。だから、1on1を社内では『雑談』という名前で呼んでいます。
藤村さん
そして、1on1の時に僕が意識しているのは、「何かある?」といきなり聞かないこと。メンバーは構えちゃいますよね(笑)。僕も1on1をはじめた当初は、「何かある?」って聞いちゃっていたんですよ。でも、それだと打ち解けた関係が築けなかった。
「何かある?」っていう質問は、相手と真剣に向き合っていないんですよね。
普段から相手のことをよく観ていれば、自然と聞きたいことは浮かんでくるはずです。だから、メンバーの社内グループウェアへの書き込みや、SNSのつぶやきを意識的に観るようになりました。そうしてから、相手との関係が変わったと感じています。
やっぱり、こちらから相手に興味を持って心を開いていかないと、相手も心を開いてくれないですよね。
相手の心を開くには、まずは自分から心を開く。
ー 津田さんは、1on1をする時に意識していることはありますか?
津田さん
まずは、藤村さんがおっしゃったように「自分から心を開く」ですね。心を開いて欲しいとメンバーに思うなら、まずは自分から相手を信頼することが大事かなと。
津田さん
あとは、毎回テーマを持って1on1を行っています。現在は、「振り返りの会」と「好きなものを紹介してもらう会」を交互にしています。
振り返りの会では、ソニックガーデン代表で当社の社外取締役をされている倉貫さんがおっしゃっていたことを参考に、「やったこと」「わかったこと」「次にやること」をメンバーから教えてもらいます。また、好きなものを紹介してもらう会では、私がそれを買いたくなるように、メンバーの好きなものを紹介してもらっています。私たちは、商品をお客様にオススメしている会社なので、テーマとして良いかなと思ったんですよね。
ただ、「決めたことだからやってます」とか、「会社として1on1をやらないといけない」という感じになるとダメだと思うんですよ。いい関係を築くためにやっているという意識をお互いに持つことが一番大切ですよね。
だから、このテーマに縛られる必要はないし、1on1の頻度もメンバーによっては変えていいという気持ちでやっています。
ー 牟田口さんも、1on1はされてますか?
牟田口さん
僕も、毎週1回、1on1をやっているんですけど、半日くらい潰れてヘトヘトになってしまいます(笑)。色んな課題も出てくるし、時には厳しい意見をくれたりもするので、大変な面もありますよね。
でも、1on1をやることによって、「この人には何を話しても良いんだ」という安心感をメンバー与えることができると思うので、続けていきたいです。
ただ、同時に社内のみんなを巻き込んでいくことも意識していますね。独善的なメディアにはしたくないんですよ。だから、社内のメンバーに意見を聞いたり、メディアに寄せられた声を社内共有したりしています。
自分のこうした行動で、社員のみんなが「自分もリーダーシップを持って、行動を起こしてもいいんだ」と思ってもらえたら嬉しいですね。
牟田口さん
それと、自分から心を開くことは、僕もすごく意識していますね。そのためにやっていることのひとつが、「SNSでの発信」です。
例えば、Twitterでは普段僕がどんなことを考えているのかを飾らずにツイートするようにしています。一方、noteでは、IKEUCHI ORGANICへの入社理由とか、「どんなことに課題を感じているのか」などを書いています。
リーダーが何かを考えているのかわからないという状態が、メンバーからすると一番不安だと思うんですよ。
発信というと、しっかりと言語化しないといけないイメージがあるかもしれませんが、そんなことはないと思います。理路整然としたことを書く必要はなくて、「こんなことをモヤモヤと考えています」といったレベルでも、発信するようにしていますね。
マネージャーに求められる資質は「真摯さ」。
ー 3人の話を聞くと、「自分から心を開く」ことの大切さを強く感じますね。
藤村さん
そうですね。そこで大切になるのは、やっぱり「自分らしさ」を素直に出すことです。
「リーダーだから、頑張ってやってます」みたいな偽った自分を出してしまうと、メンバーから見透かされてしまいます。
津田さん
本当にそうですね。うわべだけの対応はメンバーに伝わってしまいます。
チームメンバーは、マネージャーやリーダーのことをすごく見ていますよね。急に偉そうなことや、正しそうなことを言っても、バレてしまいます。だから、普段からどういう振る舞いをしているかが大切です。
ドラッカーの『マネジメント』に、「マネジャーには根本的な素質が必要で、それは『真摯さ』である」と書かれています。機嫌が良いことだったり、人から好かれるという能力は大切かもしれません。ですが、一番重要なのは、正しいとは何かを真剣に考える「真摯さ」だと思うんですね。
会社で起こる様々な物事に向かって、真摯に取り組む姿勢をチームのみんなに見せていれば、多少のトラブルがあったとしても、最後はうまくいくんじゃないかという期待が私にはあります。
『未来のチームの作り方』で、藤村さんが真摯にチームづくりに取り組み、一つひとつ課題を乗り越えていく姿に触れて、すごく勇気づけられました。
藤村さん
僕も、チームづくりやリーダーシップについては試行錯誤をこれまで散々してきましたし、今でも悩むことばかりです。
僕なんて、サイボウズという「チームワークあふれる社会をつくる」を理念に掲げた会社で働き、サイボウズ式という「これからのチームワークを考える」メディアの編集長をしているから、チームについてめちゃくちゃ詳しそうじゃないですか。
ところが、チームについては、未だにわからないことだらけなんですよね(笑)。
だから、この『未来のチームの作り方』に正解は書かれていません。でも、僕がやってきたことや、そこに到るまでの考え方は全て書いたつもりです。みなさんが、チームづくりで迷ったりとか、不安に思った時に、参考になるものがきっとあると信じています。
繰り返しになりますが、この本を読んで、「自分らしいチームづくりをしてみよう」と思う人が増えたら嬉しいです。
【追記】「sio」のみなさんによる、サプライズ朝ごはん!
この日の朝渋は、飲食店業界の革命児こと鳥羽周作さんをはじめとした「sio」のみなさんが、サプライズで参加者全員に朝ごはんを振舞ってくれました。
鳥羽さんが朝渋に登壇いただいた際に、牟田口さんをはじめとしたIKEUCHI ORGANICのメンバーがイベントを盛り上げてくれた(タオルハンカチをもれなく参加者全員に配布)ので、そのお返しにとのことです。
▼鳥羽さんのイベントレポートはこちら
鳥羽さんが自身の信条を「愛とリスペクトを持って、『ファミリー』を増やす」とおっしゃっていましたが、まさに愛を体現したような活動!
書籍『未来のチームの作り方』にも、「社外とチームを組む」ことの大切さが書かれていますが、sioとIKEUCHI ORGANICは会社を超えたチームが出来上がっていると感じました。
鳥羽さん、sioのみなさん。朝ごはん、ありがとうございました!
〈文=井手桂司(@kei4ide)、写真=矢野 拓実(https://takumiyano.com)〉
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朝渋DOJOは、これまで1,500人以上を早起きに変えてきた「朝渋メソッド」を使い、同志と共に目標に向かって自分時間を確保していく早起き習慣化ライフスクールです。
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