誰でも簡単に発信できるようになった時代。心に響く文章を書きたいと願う人は多いのではないでしょうか?
朝渋では、SNS時代の伝わる文章の書き方を学ぶために、『メモの魔力』『実験思考』など数々のヒット作のライティングや、話題となるnote記事の編集協力も多数手がけるWORDS代表・編集者の竹村俊助さんにお話を伺いました。
モデレーターは、モメンタム・ホースの長谷川リョーさんです。
〈文=とにー(@tony1021_)、写真=井手桂司(@kei4ide)〉
【竹村俊助(たけむら・しゅんすけ)】株式会社WORDS代表。編集者。ダイヤモンド社を経て独立。『メモの魔力』(前田裕二)、『実験思考』(光本勇介)、『段取りの教科書』(水野学)、『ぼくらの仮説が世界をつくる』(佐渡島庸平)などの編集・ライティング。「週刊文春」「GOETHE」「ハフポスト」でも執筆。SNS時代の「伝わる文章」の探求をしてます。Twitter:@tshun423
【長谷川リョー(はせがわ・りょー)】株式会社モメンタム・ホース代表取締役。『SENSORS』編集長。『FastGrow』CCO。修士(東京大学 学際情報学府)、リクルートホールディングスを経て独立。ビジネス・テクノロジー領域を中心に数多くのベンチャー経営者や最先端で活躍する研究者やクリエイターへ取材・執筆を重ねる。編集協力に『10年後の仕事図鑑』(堀江貴文、落合陽一共著 SBクリエイティブ)、『日本進化論』(落合陽一著 SBクリエイティブ)、『THE TEAM』(麻野耕司著 幻冬舎)、『転職と副業のかけ算』(moto著 扶桑社)など。Twitter: @_ryh
文章を書くたったひとつのコツとは?
ーー『メモの魔力』『実験思考』を手がけるなど、編集の第一線を走っている竹村さんですが、文章を上手く際に意識していることは何でしょうか。
竹村さん:
何と言っても結論を先に書くこと
ですね。文字起こしや録音など、ネタとなる素材を編集するときは、まず伝えたいことを冒頭に述べます。
自己分析1000問のワークまで含んだ『メモの魔力』でも、一行目には「メモは人生を変えます」と書いています。前置きが長くならないように、まず結論を書く。その後にその理由と具体例を書いていくんです。
この結論・理由・具体例の順番は、書籍でもWeb記事でも同じです。
“その人らしく”伝えるのが編集者の仕事
ーー他に編集で気を付けていることはありますか?
竹村さん:
おもしろい部分だけを残すことですね。WORDSでは、文字起こしを日本語としてわかりやすく直していく人を「原稿家」と呼び、何人かに依頼しています。
いつも原稿家の方にお願いしているのは、質問者の話も文章に入れることです。質問者が話し手の話を要約していることもあるからです。話し手の言葉しか残さない人もいますが、僕は文章に組み込むようにしています。
文字起こしのおもしろい箇所を切り取りつつ、質問者の発言も加え、足りないパーツは調べて補いながら、文章を編集していきます。
僕自身、仕事以外で自ら進んで本や文章をあまり読まない人間なので、読者を飽きさせないよう工夫しています。
僕はダイヤモンド社で編集を担当するなかで文章力を身に付けたのですが、雑誌の記事をゼロから書くのがライターで、すでにある取材や文字起こしなどの素材を編集するのが編集者だと思っています。編集の仕事って、すでにある具材を調理していくことなんですよね。
”エモさ”を引き出す取材の秘訣とは?
ーー最近はカクテルメイク株式会社の代表取締役 松尾幸治さんの自叙伝note『まわりの社長がスゴすぎて正直、吐きそう』など、取材協力をした経営者のnoteが話題になっていますよね。
竹村さん:
そうですね。おそらく、文章にエモさがあるからだと思います。noteに限った話ではないですが、感情が乗っている言葉は人の心に響きます。
松尾さんのnoteも、彼の発言をそのままタイトルにしています。取材中、松尾さんが何度も言っていた「吐きそう」「吐きそう」ってワードが印象に残っていました。そういった身体的な表現は強いし、共感を生みやすい。
話し手のエモさを引き出すには、取材の雑談がキモになっています。取材の休憩中や取材終了後のエレベーターまでの道など、話し手の気が抜けたときにこそ、欲しかったエモーショナルな言葉が出やすいです。話し手の魂が乗った言葉を逃さないよう、休憩中や取材後もテープを回しています。
また、事前に相手の著書や動画から、その人の好き嫌いやNGワードなど、人となりを掴んでから行きますね。バーチャルでも事前にその人に触れてから実際に会いに行くと、「コイツわかっているな」という印象を相手に与え、信頼を築きやすいからです。
話し手の嗜好や個性がわかる発言も文章に入れるようにしています。松尾さんのnoteの場合は「凡人社長」という単語なんです。
コンテンツ自体はあくまで話し手のものであり、その人が伝えたいことをまとめるのが編集の仕事です。
どうしても僕っぽい文体になってしまう部分はあるのですが、自分をなるべく消しその人のコンテンツをその人らしく届けたいんです。そのひとつの方法が、著者のエモさを引き出すことですね。
タイトルは一点突破でいい。
竹村さん:
松尾さんのnote『まわりの社長がスゴすぎて正直、吐きそう』のタイトルは、マーケティングの観点からも成功例と言えます。
動画制作会社の社長ボジションはONE MEDIAの明石ガクトさんが既に取っているし、すごい社長は世の中にいっぱいいます。でも、すごくないというか親近感がある社長の座はまだ空いているので、そこを狙いました。誰もいない立ち位置を取りに行くんです。
また、タイトルも重要です。『映像革命』とか『カクテルメイク松尾のこれまで』など総論的なタイトルでは、ここまでの反響はなかったと思います。
総論的なタイトルではなく、その文章で一番おもしろいところをタイトルに付けます。一点突破でいいんです。
言い換えこそ、読者へのおもてなし。
ーー僕は最近、指示語をはっきりさせることも意識しています。「それ」「これ」など曖昧な指示語は使わず、「この文章」など丁寧に一つひとつを言葉にしていきます。
取材相手は自分の話を理解した上で話すし、同席している編集者・ライターも文脈がわかった上で話を聞いています。ですが、その文章を初めて読んだ読者は取材の話のコンテクストがわからないまま読み進めるます。指示語の言い換えって、編集者から読者への「おもてなし」なんですよね。
編集者もライターもひたすら言い換えていく能力が必要なので、曖昧な指示語や話のコンテクストを多くの言葉のバリエーションで説明していくことで、自分の言語化能力を上げることにも繋がりますよね。
竹村さん:
そうですね。言い換えでも、冗長さはメディアに合わせることも大事です。
Web記事では、自明のわかりきったことをずっと述べていると読者は離脱しますが、紙の本では繰り返し伝えたいことを説明する方がいいです。
書籍は映画に似ていて、時間をとって読者がじっくりと対峙するものなので、その分コンセプトをくり返し伝えてもいいんですよ。
「カラオケで自分取材をする」竹村流noteの書き方
ーー竹村さんご自身のnoteも話題になっていますが、どのように書かれているのでしょうか。
竹村さん:
僕は、スマホやPCを持ってカラオケルームにこもります。やっぱり歌いたくなっちゃうので2、3曲歌います(笑)。
そのあと、支離滅裂でいいから自分が考えていることを喋り、めちゃくちゃでいいから文章にします。その文字の塊を持ってカフェに入り、原稿に編集していくんです。
すぐ原稿にするのが得意な人と違い、僕は素材があった方が書きやすいタイプ。だから、カラオケにこもって「自分取材」をして、自分で文字起こしをつくります。
思っていることをどんどん書いくタイプの人もいるので、自分に合ったやり方で書いてみるのがオススメです。
Twitterはテストマーケティングツール!SNS時代のライティングの要所
ーーこれまでライティングのTipsを伺ってきましたが、竹村さんが文章力を向上させるために習慣にしていることはありますか?
竹村さん:
アイディアを思いつたら、すぐメモを取ることですかね。そのアイディアがすぐツイートできそうだったらツイートし、寝かせる必要があったら寝かせておきます。ツイートは、毎日100いいねがつくように訓練しています。
140字のツイートでも、書籍の文章と同じように最初の10字にそのツイートの結論とベネフィットを入れています。例えば、成功する人の法則だったら「成功する人は〜」と書きます。「〜が成功の秘訣です」という書き方だと、読者が最後まで読まないんです。
書店にも2,3日に1回くらいは、世の中の動向をチェックに足を運びますが、Twitterが一番世間が求めていることがわかります。何がウケて何がウケないのかが、すぐわかりますから。Twitterほどわかりやすいマーケティングツールはありません。
これからは、コンテンツ力を磨くことはもちろん、マーケットを読む力も必要とされてきています。
『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』で書かれているのですが、編集とは「誰にも書けないことを誰でもわかるように書く」ことです。つまり、「面白いことをわかりやすく書く」こと。
現在のSNS時代、物を書く力や個人の発信力は平等になってきています。
もしインターネットが水道管だとしたら、これまではいち早く水を流し始めた人が売れています。でも、これからは水道水は全員が当たり前のように飲める時代になっていきます。
そこでは「南アルプスの天然水」など、ブランド化されたものが好まれる時代になっていくのではないでしょうか。コンテンツはさらに重視され、魂が入ったものが売れていくと思います。
今は多動の時代ですが、ここから力をつけていけばいいコンテンツが伸びる時代がやってきます。
ぜひ、皆さんも今日のTipsを役立てていい文章を書いていってください。
〈文=とにー(@tony1021_)写真=井手桂司(@kei4ide)〉
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