昨年、33万部を超えるヒット本『1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』を出版し、過去には実業家・孫正義氏の後継者を育成する学校「ソフトバンクアカデミア」国内CEOコースで年間1位の成績を修めた伊藤羊一さん。
8月には「早くやらなきゃと思っても動けない…」「早く正しく動くための方法を知りたい…」と悩むビジネスパーソンに向けて、新たに『「わかってはいるけど動けない」人のための 0秒で動け』を出版されました。
そこで今回、「結局、すぐ動ける人と動けない人は『頭の使い方』が違う」と著書内で語る伊藤さんをゲストにお招きし、「高速で正しく動く方法」など、行動力をつける術についてお話しいただきました。
〈文=須崎 千春(@chih_suz)、写真=矢野拓実(@takumiYANO_)〉
【伊藤 羊一(いとう・よういち)】ヤフー株式会社 コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長。東京大学経済学部卒。グロービス・オリジナル・MBAプログラム(GDBA)修了。かつてソフトバンクアカデミア(孫正義氏の後継者を見出し、育てる学校)に所属。孫正義氏へプレゼンし続け、国内CEOコースで年間1位の成績を修めた経験を持つ。 グロービス経営大学院客員教授としてリーダーシップ科目の教壇に立つほか、多くの大手企業やスタートアップ育成プログラムでメンター、アドバイザーを務める。『1分で話せ』が33万部を突破!
まずは結論ありきでOK
伊藤さん:
僕は元々、「動けない人間」でした。本を出版したり、イベントで講演したりしているので「そんなの嘘だろ!」と思われるかもしれませんが、本来の僕は内向的な人間なんです。できれば人と話さないでいたいですし、話す機会と話さない機会があるとしたら、話さない機会を選ぶような人間です。
ただそれでも、サッと動いて、人と話して、失敗して、恥をかくことができるようになりました。
今日は、行動できるようになった理由を一からお話します。
伊藤さん:
まずは「ピラミッドストラクチャー」が、すばやく行動するための基本となります。ロジカルシンキングについて勉強した経験があれば分かる方も多いと思いますが、これは「結論と根拠のピラミッド」です。
0秒で動くには、このピラミッドをサッと作れるようになることが大前提です。『1分で話せ』でも詳しく説明していますが、結論と根拠のピラミッドを頭の中でサッと作れるようになると結論がパッと出てくる。そして、スッと動けるようになる。だからこそ、ピラミッドを頭の中でサッと作れることが大事なのです。例えば、いま自分は吉野家が食いたい。なぜならば……と、根拠をポンポンポンと言えるようになると、結論がすぐに出るので動きやすいですよね。
「0秒で動ける思考」の秘訣。それは、「◯◯をやりたい!」と、とりあえずの結論を頭の中で直感で出してしまうことです。そして「なぜやりたいのか?」という問いに対して、後から、「こうで、こうで、こうだから!」と、理論武装をする。そうすると自分の中でも納得するし、他人に対しても「これがやりたいんだよ!なぜかというと、こうでこうでこうだからさ!」と説明できるようになって、動きやすくなるんです。
なので、まずは最初に結論を出してしまいましょう。そこから根拠を並べてみたらいいんです。
僕は研修をする際に、この考え方で結論と根拠のピラミッドを作る練習をしてもらっています。そうすると、ほぼ全員のビジネスパーソンが、10分あればピラミッドが作れています。例えば、「あなたの欲しいものは何ですか?結論と根拠のピラミッドを作ってください」と言うと、10分もあれば大抵、作れています。
もう100回以上、ピラミッドをつくる練習をしてますが、最後まで「無理です」「作れません」となる人は一人もいないです。なので皆さんも、まず動くための準備として結論と根拠のピラミッドを「ささっと」作ることにチャレンジしてください。その訓練を繰り返していくんです。
プライドを捨てて、やれることを全部やる
伊藤さん:
次は、「踏み出すために必要なこと」をテーマに話します。これを短くまとめると「チンケなプライドは捨てて、やれることは全部やれ!」に尽きます。
まずは何か一つ、やることにコミットしてしまうといいでしょう。とりあえず「僕がやります!」と言ってしまうんです。不安な気持ちが残ってしまう場合は、期待値をコントロールするために「イマイチかもしれないですが頑張ります!」と伝えるといいと思います。
あとは、「自己暗示」も大切です。『0秒で動け』にも書きましたが、僕も自己暗示はリアルにやっていました。例えば、ソフトバンクアカデミアで孫正義さんにプレゼンする前、「俺はできる、俺はできる」と声に出していました。
他にも、とある賞の授賞式の前日に「どんな話をしよう」と緊張していたとき。夜に散歩に出かけてシャドウボクシングしながら、「俺はイケている、俺はやれる」と言いながら自分を奮い立たせて、どういう話をするかを考えていたんです。アホみたいですが、心に暗示をかけて準備をしていました。
また、僕は、好意的なフィードバックしか受けないことを徹底してます(笑)。褒められるのは良いですが、改善ポイントを厳しく言われると気持ちが萎えてしまうので。
グッと勇気を持って飛び出すために重要なのは、「やれることを全部やる」こと。そのためにくだらないプライドは捨てて、「なんと言われようがいいじゃないか」と思うこと。シャドウボクシングをやったり、自分を奮い立たせてみたり、「できまちぇーん」と言ってみたりしましょう。
「行動・振り返り・気付く」のサイクルで鍛える
伊藤さん:
そして、これまでの話をふまえた上で大事なことは、「サイクルで行動力を鍛えていく」ということです。スキルとマインドを鍛えて行動する。僕はこれを「氷山」と表現しています。
どういう意味かというと、まず水面が人から見える部分=行動です。この行動の下に、スキルとマインドがあります。なので、スキルとマインドを鍛えましょう。
ですが、鍛えたらすぐに行動できるかというとそうではない。鍛えた次は、思い立ったらすぐに行動することを意識的にやらないといけない。そして行動したら、振り返って気づきを得る。これを繰り返します。
行動した結果がどのようにスキルやマインドにインストールされるかというと、振り返って気づきを得ることに尽きます。振り返るというのは、メモしたことをSNSにアップすることだけではありません。それが、「自分にとってどういう意味があるか」考えることです。つまり、「So what」を考える。自分にとっての色んなファクトがあって、それが自分にとってどういう意味があるのかを考えて、「あー、そういうことか!(Aha!)」と気づく。
例えば「自分はこういう時は思い立ったら即行動できている」など、自分の行動を振り返って考えて「あぁ!なるほど!」と気付くことができたら、それが自分のスキルやマインドにインストールされます。これを愚直に繰り返すと、ぐぐぐっと成長していく。すぐ行動、振り返る、そして、気づく。これがとても大事になります。
自分の”軸”となる「過去・現在・未来」をしっかり繋げる
伊藤さん:
最後は、軸のお話です。結局、すぐに動けるようになるためには、すぐ判断できることが必要です。直感で判断していく。
でもきっとみなさんは「じゃあ直感ってなに?」と思いますよね。「直感で選んでいいから」と言われても、「直感で選ぶって、どうすればいいんだ」と思うわけです。でも、そこに自分の軸みたいなものがあると、その軸に当てはめることで直感で考えることができます。自分の中に「軸の箱」を用意して、そこに選択肢を入れるとあっという間に答えが出てくるみたいなイメージです。
「自分の軸を持て!」という話をよく聞きますが、軸とは、端的にいえば、「自分の過去・現在・未来をしっかり意識すること」です。どういうことかというと、我々はこの先の未来に向かっていくわけで、未来を考えることが大事になります。「〜したい!」という思いは、未来のことです。
「今、私が大事にしているのは、こういうこと。だから、未来をこういう風にしていきたいと思っている。」と、この思いが言えれば、すごく説得力が出てくるんです。だからこそ、未来を考えるうえでは、今大事にしているものを自分で認識することが重要になります。
じゃあ、皆さんが今大事にしていることとは何なのか。僕も日々悩みながら考えているのですが、「日々大事にしているのはこういうことだな。じゃあなんで大事に思っているんだろう?」とまた考えるわけです。
例えば僕は、今人前でいろんなメッセージを出すことが大事だと思っています。これはなぜかというと、過去の自分は引っ込み思案だったし、内向的で人と話せなかった。言いたいことはいっぱいあるのに、言えずに悶々としてた。言いたいことを言えるようになりたかったから、今の伊藤羊一になったんです。
このように、過去に遡ってみると、今大事にしていることのWhy、つまり「なぜ自分はこのような考えを持っているんだろうか」ということがわかります。
伊藤さん:
人も「俺は過去こういうことがあってさ……」と話すと、「だから今こういうメッセージを仰っているんですね」と納得してくれる。Whyを明確にするんです。なので、過去があるから現在があって、現在があるから未来があって……と、自分の中の過去・現在・未来をしっかり繋げると、それが全ての事象の判断基準になります。それが軸なのです。
例えば、「この仕事やってくれない?」と言われたとき、意見を求められたときなど、全部の選択肢を自分の軸の箱に放り込んで、結果を出しています。
ちなみに僕は、自分の過去・現在・未来について毎日のように考えています。
「あれ?今これにワクワクしたけど、何でだろう?」
「あ、過去こういうことがあったから今こんなこと考えてるんだ。」
「じゃあ未来にこういうことをしたいのか。」
と、四六時中考えています。四六時中考えてしっかり意識していると、考え方が強くなっていきます。過去は現在に、現在は未来に繋がっているからです。そうやって考えると、基本的に、未来は現在の延長線上にあるわけです。
でも突然、「すごいことをやりたい!」と話し始める方もいらっしゃいます。それを実現できるかできないかでいうと、やはりそのままではできません。なぜなら、現在の積み重ねが未来を作っているから。皆さんの今は、過去の皆さんの積み重ねで生まれています。
未来を変えるためには、今日から習慣を変えること。未来を変えるためには、経験を変えること。
言い換えれば、皆さんは今日の行動を積み重ねることによって、「自由に自分の未来を作れる」ということになります。こうやって、まず自分自身をリードするんです。そうすると、人々をリードすることができるようになる。それが結果的に、社会をリードしていくことに繋がるはずです。
〈文=須崎 千春(@chih_suz)、写真=矢野拓実(@takumiYANO_)〉
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