「ハラスメント」

皆さんは、この言葉にどのようなイメージを持っていますか?

そもそもハラスメントとは何なのか?なぜハラスメントが起きるのか?自分には何ができるのか?

今回は『さよなら!ハラスメント』の著者である小島慶子さんをお招きし、ハラスメントと社会について考えるためのヒントをお話しいただきました。

ハラスメント問題に関心がある方、日本の実情について知りたい方、ハラスメント問題にモヤモヤを抱えている方、ぜひご覧ください。

ゲスト紹介

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小島慶子さん(@account_kkojima

1972年オーストラリア生まれ。エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員。著書に『さよなら!ハラスメント』など。

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浜田敬子,朝渋,ビジネスインサイダー

浜田敬子さん(@hamakoto

Business Insider Japan 編集長。元アエラ編集長。著書に『働く女子と罪悪感』がある。『さよなら!ハラスメント』にも対談者として登場している。

ハラスメントを取り巻く時代の変遷

小島さん:ハラスメントに対して時代の流れを変えたのが、一昨年にアメリカのハリウッドで起こったMetoo運動という運動です。この運動は、性暴力被害にあった女性が声をあげたのが始まりでした。日本でも、はあちゅうさんなどが声を上げていらっしゃっいました。ただ、Metoo運動では、声を上げた女性たちが「男嫌いの女」として見られることもあったんです。たしかに、この運動で声を上げ始めたのは女性でした。でも、理不尽な働き方や飲み会の強要など、男性が男性優位の社会の中でハラスメントだと感じていることもありますよね。

この男性の例からもわかるように、「ハラスメント」とひとくくりに言っても、セクハラだけじゃなくて、パワハラやいじめなども身近な問題です。

例えば、テレビ番組での「いじり」は、洗練されたエンターテインメントとして見られます。でも、それを真似して、学校や職場で他の人に対して同じ「いじり」をすると、その行為はいじめやハラスメントにもなり得るんです。こういった「いじり」のように、コンテンツがどう消費されて再生産されているのか、本の中で武田砂鉄さんがうまく紹介してくれています。

浜田さん:Metoo運動や、ハラスメントに対して声を上げる人たちを見る中で、自分もこれまで嫌な思いを封印していたんだなぁということに気づかされました。ハラスメントって、実はずーっとあったことなんだけれども、その行為に対してNoって言っていいということや、それが当たり前だと思われてきたものもありますよね。

小島さん:そうなんですよ。時代の流れとして、一昨年はMetoo運動を少し遠巻きにみている雰囲気でした。昨年2018年は、財務事務次官によるセクハラ問題をきっかけにハラスメントに対して、ちゃんと声をあげようという流れに変わっていきました。そして今年は、そうやって声を上げるだけでなく対話につなげ、周囲もそれを応援しようという意識が高まってきましたね。

必要なのは、ハラスメントだと知ることと相手をリスペクトすること。

小島さん:ハラスメントって、無知や習慣や学習によって、誰でも、被害者だけでなく加害者にも傍観者になり得るんですよね。ハラスメントについて知ったとき、「あぁ、あれはハラスメントだったのかも」と過去の自分の言動に後ろめたさを覚えながらも、黙るんじゃなくて声を上げることが大切です。

これまで、ハラスメントとされる言動が職場の潤滑油になっていたこともありますよね。被害を訴える人がいても、客観的に見てハラスメントなのかどうか、判断がつきにくいところもあるかと思います。

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ハラスメントを考えるにあたっては、2つのポイントがあります。1つ目は、被害を訴えた人の主観です。ハラスメントとは、力の差があるところで、力のある人が力のない人を身体的にまたは精神的に傷つけることです。意図していなくとも、やられた方が、「嫌だ」「自分の尊厳が傷つけられた」と感じたのであれば、その気持ちは傾聴されるべきです。2つ目は、法律などに照らして、ハラスメントとして認定されるかどうか。たとえ客観的に見てハラスメントであったと認定されなくても、不快に感じたり脅威を感じた人の気持ちを「そう感じるな」と否定することはできません。声をあげた人に対して「考えすぎ」「被害妄想」などと非難せず、なぜその人はそう感じたのかを考えることが大切です。

一番よくないのは、嫌がっている人を見たり、自分が被害を受けた時に「これがハラスメントかどうか厳密にはわからない」という理由で、黙ってしまうことですね。「嫌がっている人がいる」「私は辛い」と声を上げることや認識することが重要です。それがハラスメントとして認定されるかどうかわからないから「冤罪」を生んでしまうのではないかと考えすぎて黙ってしまうと、辛い思いをしている人を放置することになります。、まずは「辛い、嫌だ、やめてほしい」と思っている人がいたらそれはハラスメントかもしれないと認識することがスタートなんです。

アナウンサー時代、私の同期は合計3人で、みんな仲の良い関係でした。私は当時、おっとりした性格の地方出身の同期の子に「◯◯出身だからおっとりしているよねぇ」と「いじって」いました。当時、私は「いじり」はおいしいもの、「いじられる=愛されている」って思っていたけれど、本人が「そう言われるのはすごく嫌だ」と打ち明けてくれたんです。あのとき、彼女が私の「いじり」に対して、直接嫌だと言ってくれたことにとても感謝しています。そのことによって、私は自分の「いじり」が嫌がらせやいじめ、今でいうハラスメントになっていたんだと知りました。

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小島さん:『さよなら!ハラスメント』の対談でも、ジャーナリストの中野円佳さんが職場での「いじり」が深刻な加害行為になりかねないことを指摘しています。容姿の揶揄や性的なからかいなど、職場では伝統的な通過儀礼でも、場合によっては自殺を考えるほどに追い詰められる人もいます。それは我慢するべきことではなくて、ハラスメントなのだと認識することが大切なのだと。それを読んで初めて、「あぁ、いじりはハラスメントだと言っていいんだ」とわかる読者もきっといると思います。何がハラスメントなのかを知ること、家庭や職場や学校で「こういうものだ」と身につけてしまった振る舞いに自覚的になること、ハラスメントが習慣化している環境に身を置いたときに周囲に流されないようにすることが重要になってきます。

ハラスメントをしないためにはどうすればいいかというと、シンプルに言うと相手をリスペクトすることですね。そして、もしも相手が嫌がっていることがわかったら、「ごめんなさい」って素直に謝ることです。自分の発言や行動がどういう文脈で、どう相手を傷付けたのかを理解すること、それを理解して次はこうしようと言動を改めることが大切です。そんなつもりがなくても、傷つけてしまったなら、まずは相手の気持ちを傾聴することなんですよね。

男尊女卑依存症の私たち

小島さん:ハラスメントでは男性が加害者になることが多いですが、伊藤公雄さんには、男性学について伺いました。イタリアにおけるマッチョな男性を良しとする価値観とファシズムとの関係を研究の出発点として、30年以上にわたってご研究をされてきた立場から、男性にかかった「男らしさの呪い」や、女性に対する認知の歪みがどのようにして生まれたのかなどをわかりやすく解説してくださっています。

「男性学」というワードを最近よく聞くようになりましたが、そもそもは女性学というものが誕生したから男性学が生まれたのだそうです。それまでは、人といえば男性のことで、女性は社会の正規メンバーとしてカウントされず、周縁部に追いやられていました。それを学問する女性学なるものが誕生したことを受けて、ようやく男性側も「え?男性イコール人間ってわけじゃないのね?じゃあ、俺たちも男性とは何か、って考える必要があるのかな?」と気がついたというのです。男性にもジェンダーの呪いがあるよねと気づくことで、男尊女卑や暴力に対して客観的に考える視点を持てたということでしょうか。でも今も変わらず、ジェンダーに無自覚に生きている男性も多いのではないのでしょうか。その結果、女性に対する想像力や配慮を欠いているのかもしれません。

加害者臨床を専門としている社会福祉士・精神保健福祉士の斉藤章佳さんにも、お話を伺いました。斉藤さんは『男が痴漢になる理由』という本も執筆されており、「普通の人」がなぜ加害者になるのかを実際に加害者と接するなかで考察していらっしゃいます。今回の対談では斉藤さんによって男尊女卑依存症」という言葉が生まれました。私たちは、「男尊女卑」を辞めたくてやめたくて仕方がないけれど、やめられないんですよね。やればやるほど、そこに適応していってしまう依存症です。私たちは男らしさ、女らしさの押し付けによる生きづらさ、言い換えれば経済成長を前提とした競争社会の生きづらさを男尊女卑に染まることでやり過ごそうとして、男尊女卑依存症になっているのではないか、という指摘です。

男らしさ、女らしさを男尊女卑の型にはめて、男は無自覚な強者、女はそれに媚びる弱者という構造を疑うことなく生きているけれど、ほんとは男も女も苦しいからやめたくて仕方がない。でも、やめようとすると周囲とすごい摩擦が起きるので、その苦しさから逃れるためにまた男尊女卑的な価値観で自分を納得させようとする・・・という悪循環です。

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例えば、セクハラなんてうまくいなすのが賢い女という考え方がそうですね。私自身も、男性に媚びるような役割を進んで演じたり、女性が圧倒的に少数の環境で男性のルールに従いながら働いて、「女性で得した」「女っておいしい」と考えていた時期がありました。テレビ画面の中で”女子アナ”という俗称で呼ばれるような扱い、つまり女性には男性に従属的なポジションを与え、実力よりも容姿や性的な魅力で評価するような扱いは、男性が多数の職場であればテレビ局でなくてもどこにでもあることでしょう。先日、ある女性研究者も「私もアカデミアという男性優位の社会で、自分は女で得をしたと思ってしまったことがある。本当は、こんなに女性が少ないことに対して声を上げなければならないのに」とおっしゃっていました。そういう後ろめたさや哀しさこそが、男尊女子依存症の症状です。

男性が職場のパワハラを美化したり、童貞いじりを笑い事にしたりするのも同じですね。嫌だけど適応しないと生き残れないから、その価値観を肯定する態度をとるという哀しさ。けれど、それで追い詰められる人が必ずいるんです。声を上げられなくて苦しむ人が。それは一部の人じゃなくて、もうこの社会の大半なんじゃないか、というのが斉藤さんの指摘です。みんな疲れて、男尊女卑に依存するのはもう辞めようって声を上げ始めたんですね。どう考えても健全じゃないですから。

私の隣で就活してた男子には「一生働く」という一本の道しかなかった。こんなのおかしいって男性も声を上げていい。

小島さん:女性が少数派であることは男性中心の社会から女性が排除されてきた証なんですが、少数派ゆえの特権も手にすることがあるので、その構造に気づけないことが少なくないんです。「女で得をしてきたのに偉そうなことは言えない」と女性が萎縮したり、「女で得したくせに」と男性が女性を責めることは、この大きな構造の不公正に対する視点が欠けています。「女で得」という言葉を使いそうになったら、「自分も男尊女卑に無批判になっていたな」と自覚することが必要ですよね。男VS女で考えるのではなく、ジェンダーの押し付けでしんどい思いをしている人と、その押し付けを前提にして成り立っている社会とのギャップとして捉える視点が必要だと思います。

浜田さん:私は新聞社に新卒で入社して、80名ほどの同期がいました。その中で女性社員は10名ほどだったので、ちやほやされました。そもそもの人数が少ないので、女性の新入社員が来ることで先方が喜んでくれたり、名前をよく覚えてくれたりもしました。その一方、男性の新入社員はよく働くように言われて、「家は借りなくていいから、会社の宿直室に泊まれ」って言われていたんですよね。それが慣習化していたけれども、今考えたらそれはハラスメントだったなと思います。男性に対するハラスメントって、「当たり前」という色が強いですよね。

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小島さん:そうですね。私は1972年生まれなんですが、父親が働いて、母親が専業主婦で、子ども2人が親よりいい学校に行く、という典型的なニューファミリーでした。だから、父親がよく働くことは当たり前だと思っていました。父親が「飛行機が揺れて大変だったよ」と出張から帰ってきても話を聞かずに「お土産は?」と言ったり、父が毎朝怖い顔をして気合いを入れて顔を洗って会社に行くのを冷ややかに見ていたんですよね。

でも、6年前に私の夫が仕事を辞めたので、今は私が大黒柱なんです。自分がそうなってみて初めて、「一人で家計を支えるってすごくしんどいな。これを当たり前のこととして期待されてきた男性は大変だったろうな」と気づきました。家族はオーストラリアで私は1年の半分以上を日本で出稼ぎしているのですが、ひとりぼっちの出稼ぎ部屋で三角座りするくらい、家族を支えるってものすごいプレッシャーです。

私は「男は稼ぎが良くなくちゃ価値がない」「男性は働いて家族を養うのが当たり前」だと当然のように思っていたんですけど、それってずいぶんな押し付けだよなと気がつきました。私はロスジェネ世代の一番上で、「あなたは働いても働かなくても、結婚しても結婚しなくても、子どもを産んで産まなくても、産んだあと仕事に戻っても戻らなくてもいい、今までで一番自由な女の子なのだ」というメッセージをいろんなところから受け取って育ちました。まだ専業主婦が王道という時代でしたが、自分はあえてキャリアウーマンという道を選んで、仕事も子供も手に入れるという選択をしました。

女性のしんどさは、自分と違う道を選んだ人と比較して「私は果たして正解を選んだのか」と悩むことだと思うのですが、同じときに男性はどう生きていたんだろうって考えることはなかったですね。

ここにいる男性の中に「お前、学校出たら働いてもいいよ」って親に言われたことがある人はいますか?いないですよね。学校を出たら働く、一生働くという道しか男性にはありませんよね。選択に悩む私の隣で就活していた男子には、初めから一本の道しかなかったんだなぁって、この歳になって気づいたんです。

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そりゃあ、男性誌に『仕事と俺』とか『働く男性』って特集がないわけだ、と納得しました。もうとっくに共働きがデフォルトになっているのに、まだ制度や価値観に「男が働いて、女が支える」が根強く残っている日本の社会で男性も女性も疲弊しきっています。古い価値観を変えるためには、この価値観ではやっていけないとはっきりさせることが大事です。だから、男性にも「あなたのしんどさは何?」って聞くことが大切になってきます。これまで、男性が声を上げるチャンスはなかったんです。そんなの男らしくない、って叩かれますから。

浜田さん:AERA時代にも、『働く女性』に関する特集や企画は、女性社員からたくさん出てきました。でも、男性社員から出てくるのは「日本は」「会社は」っていうものばかりで「僕はしんどい」って話は出てきませんでした。

小島さん:「一人称で文句を言う奴は弱い」「会社の一つの駒として働く」って見られているからですかね。男性から、「男って無意識下にこ!?」「こんな無理ゲーなくねえか?」っていう声が挙ってきてもいいはずんです。一人称で「もう変えよう」「僕はしんどい」って声を上げる男性が、今はわずかですけど、これからたくさん出てくるのではないかなと思っています。

男性たちが男らしさの呪いにかかって黙って耐えている一方で、女性たちがハラスメントに対して声を上げているのを見て、反感を覚える男性もいるのだと思います

浜田さん:エコノミストの永濱利廣さんは、「男性不況」という考え方も提示しています。第1次産業よりも第3次産業で働く人が多くなると、肉体労働に強い男性よりも女性たちが活躍するようになります。さらに、時代の変化に伴ってこれまで良しとされてきた「男らしい働き方」が通用しなくなってきていているんですよね。つまり、男らしさを信仰してきた男性たちのポジションが危うくなってくるんです。永濱さんは、『男性不況――「男の職場崩壊」が日本を変える』という本も書かれています。気になる方はぜひ読んでみてください。

自分を「赦す」こと

小島さん:ハラスメントとさよならするために、キーワードとなってくるのが「赦す」ということです。今の日本に足りないのは、「赦し」じゃないかと思います。「自分で自分を赦すこと」がハラスメントを解決する第一歩になるんじゃないかと。

過酷な働き方やジェンダーの押し付けに苦しみ傷ついている自分を赦していないから、声をあげた他人をバッシングするんじゃないでしょうか。苦しむ自分を赦し、仲間に打ち明けてみたら、同じように傷ついたり不安がっている人の話を聞く気になれるかもしれません。自分はハラスメントを受けてきたのではないか、それに苦しんできたのではないか、苦しんでいることを認めたくなくて、むしろハラスメントを正当化する側に回っていたのではないか・・・被害者でもあり加害者でもある自分を発見すると、一層苦しくなると思います。でもそこからお互いに「もうこういうのしんどいから、やめよう」と言い合えるのだと思うのです。「ゆるす」って、ハラスメントを「許す」ということではなく、この日本社会で生きていくことが苦しいと弱音を吐く自分の声に耳を傾けて「赦す」ことです。

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浜田さん:そうですね。「弱い自分を赦す」ということと同時に、「少数派に耳を傾ける」ことも大切ですよね。自分がマジョリティーにいると、少数派の声を忘れてしまいがちです。

AERA時代は、女性社員の方が多かったんですね。ある日、朝早く出社していた男性社員と話していると、彼は素敵な企画を持っていたんです。私は「何でそれをこないだの会議で話さなかったの?」と尋ねたら、「こんなの、女性たちの前で言える訳ないじゃないですか!」と言われてしまいました。疎外感を与えていたなぁと反省しました。「多数」っていうのは、いつでも無自覚にハラスメントできてしまうんですよね。

小島さん:今回の本で『怒るのは悪いことか?』というテーマでお話をくださった桐野夏生さんは、小説家として世に出た頃に苛烈な性差別を受けたそうです。強い立場の男性から「それは私怨だから黙っていなさい」と言われたこともあるそうですが、桐野さんはそれにめげず、怒りを表明されました。個人が感じた怒りは、社会への怒りと通底していると桐野さんはおっしゃっています。そんなのは個人的な恨みだから黙っておけ、というのは弱者の口をふさぐ行為に他なりません。辛くても一人で抱えて込んでしまう人を増やしてしまうことにもなるんです。

浜田さん:「怒り」という話でいうと、ここ最近は若い男性が怒りや違和感を口にするようになりましたよね。Business Insider Japanで、新卒3ヶ月で商社を辞めた男性にインタビューをしたことがあります。彼は海外で暮らしていた経験があって、飲み会で強要されたことをきっかけに退社したんです。この記事を出すとき、社内の意見は2つに割れました。「たった一人の経験だけど声を出していこう」っていう意見と、「こんな経験を記事にする価値があるの?当たり前じゃない?」っていう意見です。

小島さん:最初に声を上げることって重要なんですよね。他の人は、「自分には言えないことをよく言ってくれた」と思いますから。自分が声を上げることが難しくても声を上げた人を応援するとか、肯定的に評価することで、世の中の空気が変わるんです。一昨年からの動きを見ても、この短い間に声をあげる人に対するメディアの報じ方や世論も変わってきています。セクハラでもパワハラでも性差別でもジェンダーの押しつけでも、これまでの「当たり前」に対する自分の違和感や怒りを、半径2mの周りの人にシェアして、もうやめようって話す。そんなことでもいいと思います。

この本のなかで、弁護士の伊藤和子さんは「法律を知っておくことも、ハラスメントをなくすことに役立つ」とおっしゃっていました。ハラスメントに関する法律はまだ足りないところもあるけれど、今ある法律に照らして、その言動が許されるものかどうかを確かめることで、モヤモヤした思いを言語化する助けになるというのです。

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小島さん:評論家の荻上チキさんは、どのような環境でいじめ(ハラスメント)が起こるのかを解説して下さいました。例えば、学校のイジメでは、高圧的な教師の受け持つクラスでは子どもたちの抑圧の高まりによって、いじめが起きやすくなると言います。いじめやハラスメントが起きる環境を理解して、具体的な対策を講じることが大切だというのです。「思いやりを持とう」といくら言っても変わらないですからですね。

浜田さん:そうですね。そうすると、雰囲気の悪い職場では、先生に代わる高圧的な上司や先輩がいるから、ハラスメントが起きるのではないか?と考えられますよね。そうやって構造を理解すると、まずは高圧的になっている上司の原因を見てみる、ということもできます。心がけと共感と具体的な施策が出てくるんですね。

就活ハラスメントも、立場の差を利用したハラスメント。

浜田さん:以前Business Insider Japanで、就活ハラスメントについて扱ったことがあるんです。就活ハラスメントを受けた人を募ったところ、500人以上集まりました。

就活生って、圧倒的に立場が弱いんです。学生だから、Noの言い方がわからないこともあります。相談に乗ると言われて、わいせつな行為をされることなどがあるそうです。OB訪問のマッチングサイトを悪用して、出会い系のように使っている人もいます。働く前から、「働くってこんな嫌なことなんだ」と学生たちに思われたら残念ですよね。

小島さん:そうですね。よく考えたら「あなたはNoと言っていいんだよ」という教育は受けてきていないんですよね。最近も教師の性暴力を女子児童が告発しましたが、立場の差を利用した『就活ハラスメント』と同じことが学校現場でも起こっています。『スクールセクハラ』という言葉が浸透して、「性虐待」とはっきり言うべきだという声まで上がるようになりました。これまで、「先生には逆らってはいけない、自分が悪かったんだ」と思って子どもも親も言えなかったことが、表に出るようになってきています。相手が先生でも、身内でも、普段は親切な人でも、たとえ誰であっても、嫌なことをされたら、あなたはNoって言っていい、と繰り返し伝えないといけないですね。

それと大事なのは、NOと言った人を責めずに、話を聞くことですね。一人にしてはいけないです。

今日から私たちに何ができるのか?

浜田さん:最後に一言お願いします。

小島さん:「当たり前だ」「仕方がない」と思っていたことはハラスメントかもしれないと考えてみる習慣をつけることと、そういうものに傷ついてきたしんどい自分・弱い自分を「赦す」ということですね。それから声を上げた人に耳を傾け、応援すること。そして最後に、身近な人との間で「もうやめよう」を合言葉にすることですね。

半径2mから世界は変えられます。今日自分が得たことを、周りの人とシェアして下さったら嬉しいです。

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小島さん、浜田さん、貴重なお話をありがとうございました!

Text by 鳥井美沙(@tony1021_

Photo by りえこ(@rie_cco_desu

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