名刺交換した後の会話が不得手。飲み会や会社の集まりに参加するのが苦手。初めて会う人に話しかける時に緊張する…。

そんな内向的な気質の人にとって、社交性や付き合いが求められる社会で生きていくことは大変な時代でした。社会人になったからといって、周りに合わせて自分を無理に変えようとして、消耗してしまうことも…。

しかし、書籍『内向的な人のためのスタンフォード流ピンポイント人脈術』の著者であり、日本版ハフポスト編集長の竹下隆一郎さんは、内向的に考え、自分の好きを軸に、ある意味わがままに生きられる人こそが活躍できる時代だと言います。

「自分の内面とじっくり向き合い、好きな人とだけピンポイントでつながり、チームをつくれば、自分も組織も変えられる」

竹下さんの説く、自分の「わがまま」と向き合う生き方とは、どんなものなのでしょうか?

<文=北村 有>


【竹下隆一郎(たけした・りゅういちろう)】慶應義塾大学法学部政治学科卒、元・朝日新聞記者。現在はハフポスト日本版編集長として、「人が集まるメディアをつくる」をテーマに、記事以外のリアルイベントにも力を入れるなど、多様な発信活動を続けている。

内向的な人のためのピンポイント人脈術とは?

竹下さん
私自身も、元々内向的な性格です。職業柄たくさんの方にお会いしますし、編集長という仕事は、とにかく人と繋がることが求められます。

このままだと、無理やり外交的にならなければ、やっていけなくなってしまう。一度扉を閉じて、じっくり自分と向き合う時間を取り、人生にまつわる選択を「自覚的に」選ばないといけない。そう感じた結果行き着いたのが、ピンポイント人脈術です。

ピンポイント人脈術とは、「自分のわがままと向き合おう」「本当に好きな人とだけ繋がろう」という、私から皆さんへのメッセージでもあります。選択肢の多すぎるこの時代に、もう一度自分の内面に戻って、「自分の好きなものとはなんだろう?」と省みることが大切なんです。

竹下さん
仕事を通して繋がれる人脈って、どうしても自分と同じような職種の人が多くなりませんか?名刺交換などを繰り返して、共通の話題でどんどん知り合える。自分が元々いた地点から、世界が広がっていく感覚がしますよね。

でもそれって、たとえばコンパスで円を描いてみた時のように、ただ余力で広がっているだけかもしれないんですよ。

これまでの人脈が円だとしたら、ピンポイント人脈は「☆型」のチームを作るようなもの

自分の仕事ともまったく関係のない人とピンポイントで繋がっていく、そこにある基準は「好きだ」と「会いたい」だけです。

「ピンポイント」という言葉によって、どうしても排他的なイメージになってしまいますが、ピンポイント人脈=☆型を意識することで、他人と比べる必要のないオリジナルのチームを作ることができます

自分の「好き」を掘り出す作業

竹下さん
僕は、今の時代は「あえて自分の『好き』を表明しなくてはならない時代」だと思っています。そして、各々が自分にとっての正解をもっている時代だとも。

たとえば、「夜の飲み会は楽しい」も正解だし、「朝を大事にするために早く帰る」も正解なんです。飲み会に付き合わないで早く帰ることに対して、時には反発があるかもしれない。ただ、その反発が間違っているわけでもないんですよね。すべてのことには正解がある。

好きな人と繋がる、しっくりくる人と仕事をする、自分の感覚が正しい。

このように、自分の「好き」を掘り出して、まわりに表明すること。それは「わがまま」とも捉えられてしまうかもしれませんが、そこを乗り越えないと自分の信念に気づくこともできないまま終わってしまいます。

竹下さん
そうやって好きなものを掘り出し、わがままと付き合っていくことで、自分の人生を自覚的に生きることができるようになります。

自分の判断でひとつひとつの行動を変えていく、新しい発見を積み重ねていく。それが、人生を作るということです。自分で判断したことを積み重ねていく大切さは、先日書いたハフポストのこの記事にも反映されています。

記事リンク:飲み会の帰りはラーメン屋ではなく「書店」に立ち寄る

飲み会の〆はラーメン、札幌ではシメパフェという文化もあるようですが、僕は「書店」に立ち寄ることがあります。ラーメン屋やパフェを出してくれる喫茶店ではなく、書店に行くと決めて行動すること。この積み重ねが自分の人生を作っていくんです。

たとえば毎朝、会社へ出勤してしまったら最後、終業時間までベルトコンベアに乗せられたように「会社の中の時間」を過ごさないといけなくなってしまいますよね?

早起きして出社前の時間を有意義に過ごす、と決めて、積み重ねることができるか。

それが、自分の人生を自覚的に生きることに繋がっていくと思います。

7人の好きな人を決めよう

竹下さん
今回出版した「内向的な人のためのスタンフォード流ピンポイント人脈術」の中では、繋がりたい・付き合いを続けたいと思える「7人」を決めようというメソッドについても書いています。

1~2人だと身近な人や家族で終わってしまうところを、7人まで考えることでまさに☆型の人脈=チームを作ることができるんです。普段はまったく関係のない層にまで伝播していって、結果、仕事の幅も広がります。

それくらいに自分の「わがまま」と向き合い、大事にしようということなんです。

どうしても人に好かれようとして、わざと自分の考えを変えたりしがちじゃないですか?

人間関係を大切にしなければと思いすぎると、ずるずると自分の心に嘘をつくことになってしまいます。

自分の「わがまま」と向き合って、好きを掘り出し、それを軸に定めること

付き合う人は好きな人7人と決めることで、より自分の人生を主体的に生きることができるようになります。

竹下さん
とは言っても、いきなり「自分と向き合え」「好きという気持ちを大切にしろ」と言われても、じゃあ具体的にどうすれば? と思われるでしょう。

好きを掘り出し、自分の「わがまま」に向き合う。それは、1人で考える時間を意識的に持つことからスタートします

たとえば、何の準備もなく「二次会行こうよ!」と急に誘われたとき。「断ったら傷つくかな」と相手の感情を想像したり、これまでの付き合いに対する思い入れや情がふとわいてしまったりして、断りにくいですよね。

その前の段階で、「どれだけ自分1人の時間を過ごせているか?」が勝負。「1人の時間=内向時間」を確保するためには、今なら場所を意識するといいかもしれません。

現代はありとあらゆる方法で隙間時間が埋められる時代ですから、「強制的に1人にならざるを得ない場所」を作ることで、自然と時間も確保できるようになります。

最寄り駅よりも手前で降りて歩いてみるとか、お風呂やサウナにはスマホを持ち込まないと決めるとか。意識的に1人になれる場所を作る、ということですね。

最近、1万円を何に使いましたか?

竹下さん
繋がりたいと思える人をすばやく見極めるために、相手の人となりや人間性がわかる「キラークエスチョン」もいくつかストックしています。ちょっと変わった質問をしてみるだけで、人間性ってよくわかるものなんですよ。

そのうちのひとつが、「最近、1万円を何に使いましたか?」というもの。

パッとは答えられない質問なので、ちょっと考える時間ができますよね。ただ単に「出身地は?」「今の職業は?」と定型的な質問を繰り返すよりも、よほど相手のことを知ることができます

「AIに仕事をとられるとしたら、どうする?」という質問もおもしろいですよね。

余談ですが、先日子どもを受け持ってくれている担任の先生にこの質問をしてみたら、「人気がある先生のVR授業に生徒が集中する未来がくるかも」という話で盛り上がりました。本当にそんな時代がくるかもしれませんね。

竹下さん
内向型である自分さえも壊してしまうくらいの内向型、自分と向き合ってきた時間が長い人のほうが、おもしろい話が聞けますね。しっかり自分を深掘りしている人ほど、インタビューすると圧倒的におもしろくなります。何を聞いてもおもしろい話が返ってくる。

ただ、内向型の短所は内に籠もって、おもしろくなくなってくるんですよ。

だから、あえて「人脈爆発期」というのをつくって、あえて人と会いまくる期間を作ることも大切です。そこで発見したこと、学んだことをまた自分の心に持ち帰る。行ったり来たりを繰り返すイメージですね。

大切なのは、自分で生き方を選び取ること。

「わがまま」が足りない社会の中で、自分の「わがまま」と向き合う勇気をぜひ持ってください。

〈文=北村 有(@yuu_uu_) 写真=井手桂司(@kei4ide)〉

 

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