「それって君が欲しいだけじゃないの?もっと客観的に見て、顧客が望んでるものを考えないと…」。ビジネス現場で、こんなやりとりを目にしませんか? でも、果たしてそうでしょうか。時には客観より主観が大事な場合もありそうです。

Soup Stock Tokyo、文喫、ジラフ、100本のスプーン…など様々な分野で人気のブランドを手がけるスマイルズのクリエイティブディレクター・野崎 亙さんは、「市場調査・差別化・ポジショニングなど、マーケティングの教科書に書いてあることからはじめずに、自分の直感を大切にすべき」と言います。

その真意とは何なのでしょうか? 朝渋では、数々のユニークな企画を世に送り出してきたスマイルズ流のアイデアの生み出し方を語っていただきました。

<書き手=井手桂司、写真=狐塚 勇介>

 


【野崎亙(のざき・わたる)】株式会社スマイルズ 取締役 兼 クリエイティブ本部本部長 兼 PASS THE BATON事業部事業部長。2011年、スマイルズ入社。全ての事業のブランディングやクリエイティブの統括に加え、入場料のある本屋「文喫」など外部案件のコンサルティング、プロデュースを手掛ける。

 

「新規事業を考えろ!」からは何も生まれない!?

野崎さん:
いきなりですけど、まずワークをやってみましょう!

今から1分以内に、新規事業のアイデアを考えて、思いついた内容をメモしてください。

次に、1分以内に、自分が「なんで、こうなっちゃうの?」と、日々の生活で不便や不満を感じることをメモしてみましょう。

どちらの方が、多くメモれましたか…?

野崎さん:
僕は、色んな場所で、このワークをやるんですが、後者の方が圧倒的に多くのアイデアが生まれるんですよ。

いきなり新規事業のアイデアを考えるのって、難しいですよね。なんだか漠然としているし。でも、「もっと、こうなったらなぁ…」と思うことは、結構出てきます。

これ、会社でも似たようなケースが多いんですよ!

いきなり上司から、「AIを使って、ウチも新規事業を立ち上げよう」とか、「流行りの◯◯マーケティングを、ウチもはじめよう」とか言われた経験って、ありませんか? でも、こういう問いからは、いいアイデアはなかなか生まれません。

それよりも、「自分が何が欲しいのか」「何に困っているのか」を徹底的に考えるほうが、アイデアが生まれやすいし、切実な想いのこもった熱量のあるアイデアになりやすい。

だから、スマイルズでは、自分の「好き」や「思いつき」を分解することを大切にしています。顧客志向ならぬ、自分思考です(笑)。

 

思いつきの裏には必ず必然性がある!

野崎さん:
でも、自分の好きなものに対して「なぜ好きなのか?」をしっかりと説明するのは、意外と難しくないですか?

ただ、「これがいいな」という感覚の裏には、ちゃんとワケがあるんです。 

野崎さん:
眠る時に見る夢と一緒です。夢って過去の自分の経験、情報の集積からしか出てこないもので、「何か」がない限りイメージは創出されません。

それと同じで、自分の直感は、さっき見た何かの反映かもしれないし、すごく昔の原体験から生じたものかもしれない。そうした何かしらの必然性があるんです。その根っこの部分をとことん掘り下げて、その必然性をひも解いて説明することで、新しいアイデアや事業のフレームワークが立ち上がってきます。

以前、アップルのCDOとして有名なジョナサン・アイブが、あるインタビューでこう答えていました。

「デザイナーの仕事は、自分のアウトプットがなぜこれなのかを徹底的に考えること」

全くその通りだと共感しました!もっとも、これはデザイナーだけのものではありません。マーケターだろうが、営業だろうが、この視点を持つことは重要です。

 

選択の理由を振り返る習慣を持とう!

野崎さん:
もちろん、企画を届けたい相手が、自分とは違う性別だったり、年代だったりするでしょう。

それでも、自分を知ることができなくて、他人を知ることができるかというと、なかなか難しいと思います。「自分を知らずして、他人を知ることは叶わず」ということです。

野崎さん:
お客さんの心の揺れ動きを捉えるために、何よりもまず自分の心を理解し、行動を変容するためのトリガーを作ってみる。そんな試行錯誤を重ねることで、他人の心理や行動にどう働きかければいいかのコツみたいなものがつかめてきます。

まずは、小さなことでもいいので、なぜ自分がそれを選択したのかを考えてみてください!

「今日のランチは、あの店のカレーを食べたけど、なんで俺はあの店のカレーを選択したんだろう?」。そんなことで結構です。選ぶのは直感で決めてOKです。でも、その後に振り返りをしてみましょう。

自分の「思いつき」や「好き」を徹底的に要素分解してみてください。そこから世の中を変えるユニークなアイデアが生まれていくはずです!

 

スマイルズ流をもっと学びたい人へ

スマイルズで実践しているアイデアの出し方や、お客さんとの関係の築き方について、野崎さんが書かれた本が『自分が欲しいものだけ創る!』です。

なぜ、スマイルズは従来のマーケティングではなく、自分たちの直感からはじめることを大切にしているのかが、時代背景などを含めて詳しく書かれています。

また、Soup Stock Tokyoや文喫など、スマイルズが手がけてきたブランドが、どのような「思いつき」から始まり、どのように今の姿に体現されていったのかの事例も多く掲載されています。

企画力をあげたい!お客様から愛されるブランドをつくりたい!そんな想いを持っている人には、是非読んでもらいたい一冊です!

<書き手=井手桂司、写真=狐塚 勇介>

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