目標を持ったほうが良いのは、なんとなく分かる。けれど、これが正解だと確信できる目標を見つけることは難しいですよね。

それに対して、「まずは目の前にいる人を喜ばせることに専念するのが大切だ」と、元プロサッカー選手で、現在AuB株式会社 代表取締役の鈴木 啓太さんは言います。

今回、鈴木さんに、自分のミッションを見つけるための思考法について、伝授していただきました。

〈文=村上 未萌〉

【鈴木啓太(すずき・けいた)】元プロサッカー選手。2000年から2015年まで、Jリーグ浦和レッズで16年間活躍。2006年に日本代表に初選出。引退直前、自身の経験から腸内細菌の可能性に着目し、AuB株式会社を設立。現在は、腸にフォーカスをしたアスリートの良好なコンディションの維持、パフォーマンスの向上を目標に、日々研究を行い、その知見やアイディアを事業化。スポーツ、ヘルスケアビジネスの分野でも幅広く活動。

 

自分の夢のために頑張って、周囲を喜ばせるのが使命

プロサッカー選手と呼ばれている人たちは、サッカーのことを24時間365日考えています。試合本番に向けて必死で励んでも、不幸なことに、ふとした瞬間からコンディションを合わせられなくなります。

そうなって初めて、「このまま自分はチームに残れるだろうか」「そろそろ引退して、次の仕事をしなきゃいけないかな」とネクストキャリアに思いを馳せるんです。

基本的にアスリートって、己の夢のために頑張ってるんですよね競技力を上げたい、世界一になりたい。昔の僕だったら、ポルシェに乗ってモテたいとか(笑)。

それだけじゃなくて、サポーターがスタジアムの試合に駆けつけて、一緒に楽しんだり悔しがったり、熱のこもった応援をしてくれるおかげで、選手はパフォーマンスを出せるんです。実際、無観客試合をした際には、自分でも驚くくらい低調になりましたもん。

サポーターだけでなく、家族、友達、誰でもいいから、相手を喜ばせようと考えれば、物事続けられますよね。目の前にいる人を喜ばせることができたら、自分の喜びにもなりますから。

僕は働いてお金を得ることは、単純に言い換えれば、人に喜んでもらうことだと思っています。だって使命感を持ってひとりで世界を構築しても、周りに誰もいなかったら意味ないじゃないですか。自分のに従って物事をこなしていくうちに、後からミッションがついてきますよね。

 

僕の将来像のイメージは、ウンチから始まった

 自分自身の歩んできたキャリアを思い返しても、自分の心に従って動いていったら、後からミッションがついてきたように感じています。

突然ですが、僕は、子供の頃から自分のウンチをよく見ていたんですね。母親に「人間は腸が一番大事よ」と言われて育ち、サッカーの現役時代も、腸で体調を整えていました。

選手を引退後、「腸内環境をコンディショニングすると、不思議と調子が良くなる」という気づきを広めたいと考えつきました。

起業当初は、アスリートの検体を集めることを第一に動いていました。社会課題を解決するには、まずアスリートのデータを集めて研究することが優先だと。

その様子を見た色んな人に「まず売れるプロダクトを作らないと、事業が始まらない。研究をしなくても、こういう物質同士を組み合わせたら、サプリメントは作れる」となだめられました。

しかし僕は「サプリメントを売りたいわけじゃなくて、アスリートの課題を解決する目的で、事業をやろうとしている。だから、研究結果に基づかない製品開発は絶対にやらない」という信念を貫きました。

そうと決まれば、アスリートの便をもらおうとするんですが、まあ簡単じゃない(笑)。「何に使うの?」「あなたの便を眺めるんです」と説明するところから始まりました。

自分の思いと異なる見方をされ、断られて落ち込む時もありました。泥臭く仕組みを整える時期を経て、今ではアスリートのほうから「便を見てくれないか」と声をかけてくれるようになりました。

仲間のアスリートの腸内環境データが、試合を観に来てくれるサポーターたちの健康に活きるなら、最高ですよね。その時初めて、僕の使命は、アスリートの腸内環境を研究し、それを一般の方々の健康に役立て、社会へ貢献することだというイメージが湧いたんです。

 

「ウンチで世界の健康を 変えていきたいんだ」と言い続ける

夢を見つけたいと思ったら、将来なりたい姿を具体的にイメージして、どんどん変えていく選択をするべきです。

だってイメージしていないことは、絶対にできないじゃないですか。人生正解の方程式なんて、誰も持ってないですからね。方程式は各人が作るものです。

現実を見ると、僕も周りと比べちゃうんです。そういう時は「自分もいつか死ぬように、こいつもいつか死ぬ。ライバルは必要だけど、人と比べることに自分の時間を使うのはもったいない」と言い聞かせています。人生あっという間に終わっちゃうから、好きなことをしたいし、余計なことはやりたくない。

僕はずっと「ウンチで世界の健康を 変えていきたいんだ」と言い続けているんです。それで面白いなと思ってくれる人もいますし、何言ってんだこいつと笑う人もいますし。

自分の中で人生のロードマップを作ったら、ただ内心で思っているだけにしないことです。「自分はこんな世界を作りたいから、面白いと思った人全員集合!」と呼びかけるみたいな。僕の夢の実現方法は、未来を言葉で作っていくスタイルなんです。

 

腸内細菌はたまごっちみたいに、人間と共生している

良いパフォーマンスが発揮できるように、日々コンディショニングに気を遣っているのがアスリートです。そこで、4年間かけて、27競技・500人・1000検体以上のアスリートからサンプルを得て、腸内環境の研究を重ねてきました。その結果、「アスリート菌ミックス」という細菌素材を発見しました。

人間の身体の中には100兆個、重さにして1.5kgの腸内細菌がいます。途方もない個数ですが、この腸内細菌がきちんと働いてくれることによって、自分も元気になるというのは、なんとなく想像がつくと思います。

フードテックに進出して、みんなが健康に効果的な腸内細菌を摂取できるような世界にしたい。そんな思いから、2019年10月 にAuB BASE」というサプリメントを発表しました。クラウドファンディングサービス「Makuake」で先行販売を実施し、1000人以上の支援者が集まりました。現在はECサイトでも販売をしています。

腸内環境については、まだ研究が進み切っているとは言えません。当社の強みは、アスリートの検体による研究を社会課題の解決へ生かしていること。今後も、限界を超えてきた元アスリートの視点から、一般の方々の常識を変えていきたいと考えています。

〈文=村上 未萌〉

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