組織・コミュニティにおいてたびたび頭を悩ませるのが、良質な人間関係や円滑なコミュニケーションの問題。

人と人の問題だからこそ、理屈だけでは解決しない部分が多々あります。チームとして働くなかで、悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

5日間にわたって、書籍『THE TEAM 5つの法則』の著者である麻野耕司さんとのコラボイベントを開催。A・B・C・D・Eの法則に当てはまるゲストをそれぞれお招きして、チーム論について熱く語っていただきます。

3日めにあたる本日は、ワンキャリア最高戦略責任者であり、著書『転職の思考法』『天才を殺す凡人』を上梓している北野唯我さんをゲストにお招きし、コミュニケーションを円滑に進める方法をお聞きしました。

前回までのレポートはこちら!
『THE TEAM』どうすれば人を巻き込めるのか?〜Eの法則〜 箕輪厚介さん×麻野耕司さん
『THE TEAM』どうすれば良い決断ができるのか〜Dの法則〜 曽山哲人さん×麻野耕司さん

<文=北村有>

【麻野 耕司(あさの・こうじ)】リンクアンドモチベーション取締役・ヴォーカーズ取締役副社長。慶應義塾大学卒業後、リンクアンドモチベーションに入社。中小ベンチャー企業向け組織人事コンサルティング事業の執行役員に当時最年少で着任し、新規事業として国内初の組織開発クラウド「モチベーションクラウド」を立ち上げる。2018年10月にヴォーカーズ取締役副社長に就任。

【北野 唯我(きたの・ゆいが)】ワンキャリア最高戦略責任者、レントヘッド代表取締役など、ベンチャー企業の役員を兼任。2018年6月にデビュー作「転職の思考法」を発売、2ヶ月で10万部を超える大ヒットを記録。このたび発売した新刊「天才を殺す凡人」も発売13日で4万部に。書籍の執筆に加え、経産省や厚労省を巻き込み、これからの働き方や人事制度について提案をしている。

互いの得意・不得意が、チームのパワーに繋がる

麻野さん:チームは人間にとって非常に重要なもので、「世界はチームでできている」といっても過言ではありません。

5日間にわたって『THE TEAM』5つの法則についてお話しています。人類の歴史を紐解くと、チームをつくる支えになるような知が次々と生み出されていますが、それを誰しもが使えるようにまとめたのが、この5つの法則です。

今日はCの法則、Communication(コミュニケーション)・意思疎通について

人を幸福にするのもチームであれば、不幸にする可能性を持っているのもチーム。それなのに、学校でも会社でも、「どうやってチームをつくるのか?」は教えてもらえないんですよね。

ここで、皆さんにひとつ、考えてほしいことがあります。
1+1は、2にしかならないと思いますか?

たとえば、企画や運用が苦手な人が1人で仕事をしたとしても、せいぜい最大の成果は1にしかならない。そこで、企画・運用が得意な人間にタスクを任せて、自分はもっと得意な作業に注力する戦略に変えるんです。

お互いに自分の強みを活かして得意なことだけをするようにしたら、1+1は3や4以上にすることができる。それがチームの効能だと思っています。

お互いの得意・不得意や違いそのものが、チームのパワーに繋がっていくんです。

自分と他人は「違う」のが当たり前

麻野さん:一方で、その違いが人を苦しませることもあるんですよね。

「自分と他人は違うもの」という事実が苦しみを生んでいる。でも、ちょっと考えてみてください。自分と他人が違うって、当たり前のことじゃないですか?

自分と他人は同じだっていう錯覚をしているから苦しくなるんですよね。「どうしてこの人はわかってくれないんだだろう?」って思ってしまうんです。

でもね、それは当たり前のこと。自分と他人は、最初から違うものなんですよ。

自分と完全に気が合う人なんていない、そんな人は存在しません。長年寄り添った夫婦だって違う部分を持っているわけですから。

性格の合う人なんていないんだっていうところからスタートすればいい。それを踏まえたうえで、お互いのことを知る場をしっかりと設けることが大切です。

チームを通して得られたもの、繋がりを実感した原体験

北野さん:『THE TEAM』拝読しました。麻野さんのチーム愛が溢れていますよね。

この人って、心からチームが好きなんだな、ずっとチームについて考えてきたんだなって痛感できる内容でした。まさに、これまで蓄積してきた知識が凝縮された決定版。

どうして麻野さんは、こんなにチームを愛してるんですか?

麻野さん:僕ね、チームに関する幸せな思い出がいっぱいあるんですよ。一番大きいのは、高校の時に入っていたバレーボール部での経験。

僕が入っていたのは、当時とても弱小だった中高一貫のバレーボールチームだったんです。中学時代には一度も公式戦で勝てなかったんですよ、そんなことってあります?(笑)

そんなときに、良いコーチが指導してくれたおかげで、ものすごく強くなれたんです。

そのコーチがやってくれたのは「適材適所」を軸に、試合で勝てるような布陣や作戦づくりでした。それぞれの強みを活かして伸ばす練習方法を徹底させたんです。たとえば、背の高いメンバーにはひたすらブロックとクイックの練習だけをさせたり、他のメンバーにはレシーブ練習だけをさせたり、とかね。

その結果、背の高い2人がミスをしたとしても、後衛のメンバーがカバーして失点を減らす戦略がどんどん活きるようになった。

決勝戦は負けてしまいましたけど、悔しさではなく、幸福感と感動で泣いてましたね。かけがえのない時間を過ごすことができたこと、心からお互いを必要とし合っているこれ以上ない仲間に恵まれたこと、世界から必要とされているんだという感覚が溢れてきて。

僕がチームに対して抱いている愛情には、こういう原体験があります。

相手の強み・自分の提供できる価値について考える

麻野さん:もちろん、当時はレシーブ練習しかさせてもらえないことを不満に思ってましたよ。めちゃくちゃ怖い監督だったから。(笑)

それでも、途中から考えが変わったんです。「誰かの役に立つって、楽しいことだな」って。僕ね、チーム形成するときには、いつも考えることがあるんです。

・相手の強みは何か?
・自分が提供できる強みは何か?

たとえば、北野さんは戦略性が素晴らしい。その切れ味は相当なものだと思っていたので、代わりに「僕はどんな面で貢献できるのか?」と考えました。結果、資金と人材を用意する面においては秀でた部分があると考えて以来、それが自分の重要な役割だと思っています。

北野さん:私たちの会社では、弱みより強みを伸ばそうとよく言っています。ただ、強みを引っ張ってしまうような弱みは直したほうがいいと思っていて。

麻野さんは、弱みについてはどう捉えてますか?

麻野さん:弱みは、必ずしも無視すればいいというわけではなくて、とくにキャリアの序盤では克服することを考えるのも大切だと思っていますね。

たとえば、僕自身いざというときの傾聴力というか、人の話をきちんと聞けない人間だったんですよね。それでも、本当に大事なときは向かい合って話を聞いて、相手が大事にしているものを大事にするように努力しています。

組織やチームも時系列で学習し、成長していく

北野さん:『THE TEAM』を読んだときに、唯一思ったのが、この本は「組織は学習する」という「時系列」という概念が入っていたほうが、もっと深みが出るかもなぁと思ったんですよね。

組織やチームって、学習していくものじゃないですか。

たとえば僕自身、本を出版するのはNGだと会社から言われていたんです。それでも、いざ出してみたら明らかに会社に対しても大きなメリットをもたらした。

あるいは、昔は情報統制も相当厳しかったけれど、会社の情報は出せば出すほど良い人が集まってくるって、組織自体が学習しはじめているわけです。情報を世の中にオープンにするなんて、昭和の時代では絶対に考えられなかったことなのに、そこから一転、「透明化」がひとつのキーワードになっている現状がある。

情報を自らオープンにして、その上で選んでもらう方がお互いに幸せだし、効率的ですしね。何をどう隠そうとしたって、嘘はバレる時代ですから。

組織は時系列で成長していく。それは、チームも一緒だと思っています。

その点について、麻野さんはどう考えていますか?

麻野さん:チームが形成されてから発展していくまでの過程は、チームの中でも非常に重要なことですよね。ただ、企業の発展とチームの発展は、厳密には別モデルで考えたほうがいいかなと思っていて。

というのも、それぞれのフェーズで起こることは定義されているから。

チーム形成→衝突の過程が必ずあって、それを乗り越えてはじめて結びつきが強くなる。組織論・チーム論の中では必要なプロセスであり、重要な切り口だと思います。

拡大期には「曖昧力」・成熟期には「調整力」

北野さん:チーム形成をする上で気をつけるべきことはありますか?

麻野さん:拡大期においての組織で気をつけるべきことは、「曖昧力」ですね。
この曖昧力が高いと上手くいくことが多く、反対に低いと精神面に影響が出ることが多いのが拡大期なんです。

まだ様々なことが整っていない中で、仕組みやルールをつくっていかなければならない。

・「なんでこんなことも決まってないの?」
・「なんでそんなに考えがコロコロ変わるの?」

そんな不満も、曖昧力さえあれば飲み込めるわけですよ。現在と未来は違って当たり前なんだ、やり方は決まっていないんだと、鷹揚に受け止める力が「曖昧力」。拡大期の組織には必要ですね。

成熟期にいたって必要なのは、「調整力」です。
社長の言うことは、今日と明日でガラリと変わることがほとんど。とくに大企業に勤める方には「社内政治をやりきりましょう」と伝えたい。

その点について不満を持っているようでは、大企業で何かをやり遂げるのは絶対に無理ですから。

コミュニケーションの肝は、感情とその裏にあるスタンス

北野さん:コミュニケーションにおいて、感情(エモーショナル)が大切になる部分って多いじゃないですか。

 

『天才を殺す凡人』は人間力学の観点から、「どうやって組織や事業が進化していくのか?」を理屈と感情の観点から描いたものですが、見落としがちなのは「感情」の部分。

たとえば、僕が新卒のときに大事にしていたことは、「いつもありがとうございます」というちょっとした一言とともに、一粒のチョコレートを配って気持ちを行動にあらわすこと。

人間関係を円滑にするために、そういったエモーショナルな部分を気にしていたんですよね。

麻野さん:あえて隣に座るとか、何か物をわたすとか、ささやかなアクションも大切だけど、その裏側にあるスタンスが最も大切だと僕も思っています。

チームにおける活動って、感情に左右される面が非常に大きい。感情なんて合理的じゃないって思う人も多いでしょうが、そこに目を向けたほうが物事が効率的に進むことって多いんですよ。

たとえば、社長や会長といった人間は、会社と社員の未来を両方背負っているわけですよね。裁量権はすべて自分にあり、いわば最後の砦が自分1人しかいない状態。自分のチェックに不備があった時点で会社がダメになるっていう、超絶なプレッシャーの下に常にいるわけです。

だから、役職のついた人間というのは、ちょっとしたことでも怒りが爆発したりするんですよ。おまけに、他の社員は全員、そんな気持ちはわかってくれないと思い込んでいる。それに対する敬意や感謝がなければ、どれだけアクションを起こしても意味がないんです。

そういった孤独な気持ちとどこまでシンクロできるか、自分なりに会社経営に対してフィードバックしている姿勢をどれだけ示すことができるか。それが伝わることではじめて、「ああ、こいつは自分と一緒に最後の砦のつもりで働いてくれているな」とわかってもらえる。

隣に座ってもらうこと、チョコレートをもらうこと自体が嬉しいわけではなくて、「自分のことを見てくれている・わかってくれている」という実感で気持ちが満たされることで、初めて人は動く。それが大事なんですよ。

相手の感情はどこまでも大切にするべきです。気持ちをケアすることで、コミュニケーションは円滑に、効果的になっていくんですから。

リーダーだって、成長過程にいる不完全な存在

北野さん:一企業の社長であっても、成長過程にいるんだということを、メンバーが理解してあげることが大切だと思っています。

社長だって完璧じゃないじゃないですか。常に戦ってはいるけど、同時に成長過程でもあることを、メンバーや役員でさえも忘れてしまう。その事実が会社の成長を妨げているのではないかと。

麻野さん:上司や社長に完璧を求めてしまうというのは、あるかもしれないですよね。

世の中には、リーダー論が多すぎます。『THE TEAM』の中には、一言も「リーダー」という言葉は出てきませんよ。

リーダーに完璧を求めて、押し付けるのをやめたかったんですよね。よくイベントで「うちの上司がこうしてくれない」「上司が変わらないといけないと思う」という意見を聞きますが、上司はね、そのままでもいいんです。

上司が完璧だったら、面白くないですよ?

できないこと・弱い部分があるからこそ、あなたの出来ることが輝くんですから。

上司のできないことを指摘してあげつらったって誰も幸せにならない上に、あなた自身も幸せになりません。あなたのできないことだって、上司や他のメンバーが支えてくれるかもしれないわけですし。

そういう意味で言ったら、僕は孫悟空よりも、ONE PIECEがいいと思ってるんですよね。悟空は完璧すぎて、クリリンやヤムチャはチームの中でもどんどん存在感がなくなっているじゃないですか。

ルフィを見てくださいよ。腕がびよーんと伸びるだけですよ、彼は!(笑)

できないことがたくさんあるリーダーだからこそ、ウソップだって活きる場面がたくさんあるわけです。ああやって、お互いに強みを活かし合っていく、支え合っていく世界観のほうが、みんなハッピーになりますよね

どうすれば、上司の弱さを見せてもらえるのか?

麻野さん:「心理的安全」が得られる場を積極的につくっていくことですね。

何を言っても咎められない、弱音を言っても大丈夫だ思える場面をつくることが大事かなと思います。忙しい中でいちいちそれをやるのは難しいですが、月に1回・1時間だけでもいいから、そういう場を設けること。

部下から上司に対して、「あなたという存在そのものを大切に思っています」というメッセージを伝えられたら、上司も弱みを見せてくれるかもしれません。

上司として失望されないためには?

麻野さん:まず、他人の感情を思い通りにできると思うのをやめましょう。他人の感情は変えられません。だって、いきなり「俺のことを好きになれ!」と言われても、無理でしょ?

失望されたくない、と思うのをまずはやめましょう。

人って、自分に対して勝手に期待したり、勝手に失望したりします。変えられないものではなく、変えられるものにエネルギーを注ぐことが大切です。

自分の考えや行動に関しては自由自在にコントロールできますが、他人に対してはそれができませんよね。失望されるという状況そのものを、ありのままに受け止めてください。

変えられるのは自分であり、未来であり、行動のみです。

頼りないなって思われるかもしれないけど、できないものは仕方ないじゃないですか。失望されてしまうことに対して自分ができるのは、感謝と謝罪を精一杯相手に伝えることだけですよ。

北野さん:感謝と謝罪にフォーカスするのはとても合理的ですよね。

『THE TEAM』も『天才を殺す凡人』も、相反するもやもやとした現状や感情を理解するツールだと思っています。

最終的にできるのは、「優しい世界をつくっていくために、自分には何ができるのか?」を考えることだけです。

麻野さん:自分と他人は違う生き物、その事実を世界から突きつけられたときに、人は苦しむんですよね。

人と人との間、そこに生まれる違いにみんなが苦しんでいる。それでも、僕たちにとって可能性がある何かだって、人と人との間の違いに生まれ得るんです。苦しみと同時に可能性も開かれている。

ぜひこの2冊の本を身近な人にプレゼントしてもらって、より豊かな繋がりを生むきっかけにしてもらえたら嬉しいです。

<文=北村有(@yuu_uu_)>

 

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