日々、働いていく上で、最も大切なことってなんでしょうか?

売上を達成すること。すべき仕事を納期までに確実に終わらせること。職場での人間関係を円滑に進めること。

現代を生きるすべての働く人にとって、仕事に対する意義や価値観は様々です。

あなたは、毎日幸せに働けていますか?
ハッピーに働き続けるためには、どんなことを大切にしたらいいのでしょうか

「THE TEAM」発売を記念し、著者・麻野耕司さんをお迎えしてチームの法則について語ってもらう朝渋とのコラボイベントも、ついに最終日を迎えました。

5日目の今回はユニリーバ取締役・島田由香さんをゲストにお呼びし、「幸せに働くための目標設定の方法」をテーマに、A(Aim-目標設定-)の法則についてお話していただきます。

前回までのレポートはこちら!

『THE TEAM』どうすれば人を巻き込めるのか?〜Eの法則〜 箕輪厚介さん×麻野耕司さん
『THE TEAM』どうすれば良い決断ができるのか〜Dの法則〜 曽山哲人さん×麻野耕司さん『THE TEAM』どうすれば円滑なコミュニケーションができるのか?〜Cの法則〜北野唯我さん×麻野耕司さん
会社の枠を超えて最強のチームをつくれ!個の時代こそ、チームの力を重視せよーー桜木建二さん×麻野耕司さん

<文=北村有>

【麻野 耕司(あさの・こうじ)】リンクアンドモチベーション取締役・ヴォーカーズ取締役副社長。慶應義塾大学卒業後、リンクアンドモチベーションに入社。中小ベンチャー企業向け組織人事コンサルティング事業の執行役員に当時最年少で着任し、新規事業として国内初の組織開発クラウド「モチベーションクラウド」を立ち上げる。2018年10月にヴォーカーズ取締役副社長に就任。

【島田 由香(しまだ・ゆか)】
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社取締役・人事総務本部長。慶応義塾大学卒業後、株式会社パソナを経て、2002年米国ニューヨーク州コロンビア大学大学院卒業。組織心理学修士号取得。その後、日本GE(ゼネラル・エレクトリック)にて人事マネジャーを経験し、現職。主催する「TeamWAA!」プロジェクトで働き方改革に尽力。

目標を共有することが強いチームをつくる

麻野さん:今、個の時代であることは間違いないと思っています。ただ、人間はたった1人では大きなことは成し遂げられないというのも、また事実です。

このTEAMの法則は5つの項目から成り立っていて、毎日その法則を1つずつ紐解いてきました。最終日にあたる今回は、Aの法則=Aim(目標設定)。この目標設定は、とても大事な部分です。

共通の目的こそがチームをチームたらしめるんですよね。ただそこに人が集まっているだけでは、チームにはなりません。

①行動目標:アクションをわかりやすく伝える(例:事例やチャートを用いる)
②成果目標:最終的に手に入れたい結果・成果(例:10万部売る)
③意義目標:その先にある実現したいこと

この意義目標のみを設定するだけでは人間は動きにくいですが、きちんと設定し意識するだけでブレイクスルーが生まれます。持って生まれた創造性や自主性を引き出すことができるんです。

現代は、変化が激しい時代です。

これまでは明らかに見えていた勝ちパターンに沿って行動すればいい社会でしたが、これからはそうはいきません。今はどんどん変化する時代、ただ目標を立てても上手くいかない場合のほうが多い。状況に合わせて、その都度行動を選ぶ必要があるんですよ。

そうすることで、変化に耐えうるチームをつくることができます。

この意義目標から逆算し、自主的に動く人間がこれからのチームには求められます。言われたことを淡々とこなす人ももちろん必要なんですが、チームの1人1人が逆算して行動できなければいけません。

このAの法則について語るのに、これ以上ない適任な人物をお呼びしました。
ユニリーバ株式会社の取締役・人事担当の島田由香さんです。

目的・目標を共有することでチームは繋がる

島田さん:このAの法則、目標設定に関する回に選んでもらったのは、私としても非常に嬉しいことです。ありがとうございます。私自身、今でも悩みの多い部分なので。

麻野さん:島田さんといえば、人事責任者の界隈では誰もが知っている第一人者ですよね。

島田さん:ありがとうございます。
我々ユニリーバは、2016年から新しい人事制度を取り入れています。「WAA」(Work from Anywhere and Anytime)というもので、これは全社員がどこで働いてもいい、いつ働いてもいい、結果さえ出せば場所や時間はみんなに任せます、というものです。

この制度を取り入れたことによって、良いことがたくさんありました。この「WAA」のセッションに、麻野さんにも来ていただきましたね。

麻野さん:そもそも、僕たちが繋がったきっかけは漫画「キングダム」でしたよね。

島田さん自身、「キングダム」を去年初めて読んで、ものすごく感動されていて。読者と一緒に飲みながら語りたいという話になって、その会に僕もキングダム芸人の1人として招集された、という経緯があります。(笑)

お互いに熱く「キングダム」話をして、その流れから「WAA」でセッションしたいという話になったんですよね。

島田さん:みなさん、もちろん「キングダム」は読んでますよね?

リーダーシップの指南書として、これ以上ない名作ですよ。このままだと「キングダム」の話ばかりしてしまいそうなので、流れを戻しますね。(笑)

この「THE TEAM」はまさに、右脳と左脳の両方を同時に使って書かれたんだろうな、と思える内容でした。麻野さんの書かれる一字一句、場面のとり方ひとつに至っても、ずっと感動しきりで。

麻野さん:島田さん自身も、チームに対する熱い想いを強く持っている方なんですよ。目的・目標で繋がっていくことの素晴らしさを、存分に語ってもらうのがいいな、と思っています。

「グループ」と「チーム」の違いとは

麻野さん:早速ですが、島田さんにとってのチームの定義って、どんなものですか?

島田さん:前提として、「グループ」と「チーム」は絶対的に違うものです。自分が所属しているのは、はたして「グループ」なのか「チーム」なのか?

それを判断するためには、目的や目標をしっかり共有できているかという部分が、非常に大きい意味を持ってきます。また、自分のやっている仕事の意味や意義をしっかりと共有できているか?このレベル感が人によって違うと、途端に混乱が極まってしまうんです。

チームに属し、チームで動くからこそ大きな役割を実践できる。それと同時に、同じくらい大切なのが「信頼」です。本当に相手を信頼していますか? また、相手に信頼されているでしょうか?

このチーム、このメンバーだからこそモチベーションが上がるし、達成したい何かがあると思えるかどうか。そして、自分らしくありのままでいることを重視してください。

皆さん、1秒1秒自分の命とエネルギーを日々使っているのだから、消耗しながら生きるのはもったいないことです。

目の前の仕事と結果を繋げるストーリーテリング

麻野さん:イソップ物語の中に、「3人のレンガ職人」という話があって、よくモチベーションアップの例として引き合いに出されます。

レンガをせっせと積んで壁をつくっている職人が3人いて、1人ずつに「あなたは何をしているんですか?」と質問するんです。

1人めは、「見ての通りレンガを積んでいるだけだ」と答える。
2人めは、「レンガを積んで壁をつくっています」と答える。
そして3人めは、「皆が幸せに過ごすために、心の拠り所となるような教会をつくっています」と答える。

目標設定がそれぞれ違いますよね。この場合、最も良い仕事ができるのは3人めの職人です。こういった意義目標を持たないといけないわけです。

チームそのものに意義があるだけではなく、関わる1人1人が意義目標を持って仕事に臨まないと、良い結果は生まれません

島田さん:ストーリーテリング、ということですよね。

目の前の仕事と、それを成し遂げたことによって生まれる結果を繋げて考えられるか。とくにリーダーはそれができないといけません。

1人1人が、自分のやっている仕事を「自分ごと」にすることが大切です。「上司から言われたから仕方なくやっている」という人も、意外と多いんですよね。

1秒1秒の時間を大切に、自分のやっている仕事はこんなにすごいことに繋がっているんだということが実感できれば、エネルギーのわき方が変わってきます

目の前の仕事に、ストーリーを

麻野さん:仕事に対するモチベーションには、いろんな切り口があると思うんですよ。

皆が喜ぶような教会を作ることができたら自分の評判が高まるとか、アピールできる実績が増えるとか。はたまた、共に働く仲間が大好きで、良い仕事をすれば信頼してもらえる、認めてもらえるという意義目標をもつ人もいる。

島田さんどこにストーリーを感じるかは、その人次第ですよね。

「こうでなくてはいけない」という定義はない。ただ、その方向性に気づいていない人が多いという印象は持っています。

まずは1人1人をしっかりと見て、モチベーションの上がるホットボタンはどこなのか?
本人が気づいていないエネルギーのわき方が、必ずあるはずなんですよね。

「ジョブ・クラフティング」ーー自分の仕事は自分で作っていくことで、達成感と満足感が上がって確実にパフォーマンスが上がっていきます

今、どんな人と繋がって、どんな仕事をしているのか?

自分の仕事の意義や意味を、あらためて考えてみてほしいなと思います。

わからない・できないと正直に言ってもいい

島田さん:私、ぜひ皆さんに、今この瞬間からやめてほしいことが1つあるんです。

それは、分かっていないのに分かったと言うこと

恥ずかしいから、せっかく教えてくれたのに傷つけたくないからという理由で、分かっているフリをしないでほしい。そして、「できないと言ってはいけない」という思い込みも外してください。

はっきり口にしないと分からないことって、意外といっぱいあるんですよ。

こちらは良かれと思って心をこめて伝えているつもりでも、まったく伝わっていないことなんてザラにある。一切ピンときませんって言っちゃっていいんです。それで怒るのはそれまでの人なんですから。

麻野さん:僕たちはよく、弱音や本音を伝えた時に、「それは良いtrueだね」って言うんですよね。本当に心から自分が思っていることを周りに伝えるのは、本来は良いことでしかないから。

弱音や本音を伝えた上で、「じゃあどうしようか?」という解決に向かう流れになります。だからこそ、弱音も本音も全部true。

あとは、陰口を言わないこと、そして嘘をつかないこともすごく大切ですよね。

島田さん:とっても大事ですね!

陰口は言わない、嘘をつかない

麻野さん:相手に面と向かって言えないことは絶対に言わない、ということをチーム内では徹底しています。僕自身に不満がある場合でも言いたいことは言っていい。
ただ、直接言えないならどこでも言わないで、って。

それだけで、チーム全体の雰囲気が良くなって、全員ものすごくハッピーになれたんですよね。自分の知らないところで自分の悪いことを言う人がいないって、もうそれだけで幸せに繋がるんだってわかりました。

もう1つ大切なのは、嘘をつかないこと

弱音・陰口・嘘をつかない。これを徹底するだけで、お互いに良い関わり方ができるようになって、問題が認識できるようになっていく。

島田さん:もう、これ以上何も言えないくらい大切なことですよね。

完璧なんてこの世にはあり得ないわけだし、人間って、皆それぞれの解釈の世界で生きているわけじゃないですか。同じものを見て聞いていても、解釈は1人1人違う。そして、そのそれぞれが正しい。

自分と隣の人の解釈が違っていたとしても、闇雲に否定から入らずに、「あなたはそういう解釈をするんだね」という理解の仕方だけでいいんですよ。

私自身も、チームに対してはいつも「言いたいことがあったら言ってね」と伝えています。直接言ってもらわないと分からないという方針は、麻野さんと一緒ですね。

麻野さん:リスペクトを伴ったtrueがあると、さらにいいですよね。
あなたの存在そのものが大切なものであるという前提に立って、関わり合うのが大切だと思います。

よく皆に言ってるのは、ちゃんと想像しようねってことなんですよ。

どんなに仕事ができない新入社員であったとしても、彼・彼女が生まれた瞬間にはご両親が写真に撮って、人生の節目節目で大切にアルバムに収めてきた。

そんな大切な存在が、働く場所に選んでくれたのが僕たちの会社であり、僕たちの部署なんだと。そこに存在するだけでもリスペクトできるものなんだと心に刻むだけで、全然違うんですよね。

幸せに働き続けるために、できること

麻野さん:幸せにはたらくためにはどうすればいいか。宇宙くらい大きなテーマがありますけども。(笑)
島田さんにとって、幸せに働くために大切なことって何ですか?

島田さん基本的には、不幸せに働きたい・不幸になりたいと思っている人なんていないですよね。やっぱり皆、幸せでありたいし幸せでいたいと思っている。

「働く」ということ自体、幸せと結びつけてはいけないという価値観を持っている人もいますよね。仕事はつらく厳しく修羅場を伴うものであって、そこに幸せを求めてはいけない、と。もちろん、そういった価値観や意見もあっていいと思っています。

ただ、常にハッピーでいることは、パフォーマンスを最高まで上げる条件だということは、はっきり伝えておきます。

麻野さん:僕ね、今ものすごく幸せなんですよ。昔よりも楽しいんですよね、毎日が。
昔はまったく自分のことが分かっていなくて、周りからどう評価されているのか、そればかりをずっと気にしていたんです。

役員になり、社会をどう変えていくか、いつまでに売上をアップさせるかというTodoを考えるようになって、そこで初めてTobeに目がいったんですよね。僕は、どんなことを幸せに感じながら仕事をしてるんだろう? って。

やっぱり、「仲間」だったんですよね。

仲間と一緒に熱く濃い時間を過ごすこと、社会を変えることよりも仲間との時間のほうが、僕にとって最も大切なことだと気づいた。一緒に楽しく盛り上がるために共通の目標を立てるべきなんだ、って。

チームのパフォーマンスを高める「PEARM」の法則

島田さん:「ハッピー」は、今この瞬間のポジティブな感情のことで、中長期的な幸せ・心地良さは「ウェルビーイング(well‐being)」。このウェルビーイングを意識することで、収入もアップし長寿にもなるという研究結果も出ているんです。

ウェルビーイングの5つの要素は、それぞれの頭文字をとって「PERMA」と呼ばれます。

Positive(前向き)
Engagement(愛着)
③Relationship(関係性)
④Meaning(意味・趣旨)
⑤Accomplishment(達成・熟練)

メンバー全員の「PEARMA」の状態が、チームそのものに影響するんです。

1人1人が花を咲かせることができますし、もしも自分の花に気づいていない人がいるとしたら、絶対にあると言い続けたい。そして、その花を咲かせられるのは自分だけだということも

麻野さん:これまでチームのことをいろいろ考え続けてきましたが、この5日間に渡る対談がさらに僕にとっても学びとなりました。

意義目標をもち、そこに繋がるストーリーをもつこと

自分はこのチームの中で、どういう人間でいたいのか?
このチームの中でどんな存在でいられることが、自分にとっての幸せに繋がるのか?

それを考えてもらえたら嬉しいなと思います。

<文・北村有(@yuu_uu_)>

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